プロテインも悪影響!? 増えている「大人ニキビ」の大きなカン違い
ニキビはれっきとした皮膚疾患。市販薬や我流の対処では悲惨な状態を招きます。大人になったはずなのに、なぜニキビは「戻ってくる」のか? 皮膚科専門医、小林智子先生に事情をうかがいました。
取材・文/廣松正浩 取材協力/小林智子(皮膚科専門医)
小林智子さん
教えてくれた人
こばやし・ともこ/皮膚科医。医学博士。都内クリニックなどで皮膚科の臨床に従事する傍らYouTubeやTwitter、Instagramでも美容・健康など皮膚科学に基づく美容・健康情報を発信中。近著に『すっぴん肌が好きになる 肌トラブル大全』(WAVE出版)
そもそもニキビって、なぜできる?
ある朝、鏡をのぞいてびっくり。これは遠い昔にお別れしたはずのニキビ? そう、とっくの昔に成人したのに、ふらりと戻ってくる大人ニキビがいま、増えているという。
なぜニキビは「戻ってくる」のか? スキンケアに悩む若い男女を多数救ってきた皮膚科専門医、小林智子先生に事情をうかがった。
「思春期のニキビは第二次性徴に伴う性ホルモン、アンドロゲンの増加が皮脂の分泌を亢進させることで始まります」
皮脂を分泌する皮脂腺は毛穴の中に隠れているから、急に皮脂が増えると排出が追いつかなくなり、毛穴が詰まり気味になる。ここに皮膚の常在菌の一つ、アクネ菌が潜り込んで皮脂をエサに活動を始めると、毛穴の炎症を招くような物質を作りだす。
やがて白っぽかったニキビは、毛穴周囲まで炎症を広げて赤みを帯びて隆起し、さらに悪化すると毛穴は壊れ、瘢痕(傷痕)を生じる。凸凹も痛々しい、おなじみニキビ顔のできあがりだ。
ニキビを治療できるのは処方箋のいる薬だけ
「こうした生理的な原因以外に、大人ニキビにはさまざまな因子が関与していると考えられています。たとえば睡眠不足だったり、偏食だったり、ストレスだったり。肌の新陳代謝(ターンオーバー)が乱れれば、いつ大人ニキビに見舞われても不思議ではありません」
ニキビができると、女性の多くはいままで使ってきた化粧品を見直すだろう。あるいは、女性ならずともドラッグストアで殺菌成分や抗炎症成分の入ったクリームや軟膏につい手を伸ばすかもしれない。だが、市販薬は思いのほか“マイルド”で、薬としての切れ味がいまひとつなことが多い。
「勘違いをしている人が多いようですが、医師が書く処方箋なしに購入できる市販薬は基本的に予防のためのもの。ニキビの出発点にあたる皮脂による毛穴詰まりを改善できるのは医療機関が取り扱っている薬だけです」
そもそもニキビの正式名称は「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」で、これは炎症性皮膚疾患。本来、皮膚科に通院して治療を受けるべきれっきとした病気なのだ。
ちなみに、皮膚科医が治療方針の決定にあたり準拠する『尋常性痤瘡治療ガイドライン』(日本皮膚科学会)に記載のある薬は保険適用となるから、多くの場合、市販薬よりも安い。
薬は医師の指示通りに使い続けよう
ニキビを若さのシンボルだと勘違いし、我流の対処に陥ると症状が進行し、悪循環から逃れにくくなる。こじらせて壊れたニキビ痕に進んでしまうと、保険適用の治療だけでは対処しきれなくなることがある。ニキビだとわかった時点で皮膚科に急行するのが一番だ。
「処方される薬によっては効果が出るまでに少し時間のかかるものもあるため、途中で通院をやめてしまう患者さんもいます。薬の効果を最大限に引き出すためにも、担当医が指示した期間、分量を守って、薬は根気よく使い続けてください」
大人ニキビは思春期と違い、生活習慣病に似た側面もあるから、すべて医師任せ、薬任せにせず、自助努力も並行して行うと治療効果が増すだろう。
食生活の見直しは薬の効果を後押しする
「ニキビと関係があるのではないかといわれているのが乳製品全般で、どうしても皮脂の分泌が増えがちになり、ニキビの悪化を招く可能性があります。
また、昨今の筋トレブームでホエイプロテインを愛用する人が増えていますが、ホエイも悪化の一因になりうるといわれています。こうした人はとりあえず治療が済むまで、大豆素材のソイプロテインに替えてみてはいかがでしょうか?」
タンパク質源の見直し以外にも、血糖値の急上昇を招くような食事を避けるのはよい工夫だという。
「血糖値が急上昇すると、膵臓から分泌されるインスリンが血糖値を下げてくれますが、インスリンは皮膚の一番外側の表皮を角化させることが知られています。角化した表皮は分厚くなるので皮脂を排出しにくくなって、毛穴詰まりを悪化させる可能性があります。
また、インスリンは皮脂腺を刺激して皮脂の分泌を促しますから、毛穴詰まりの原因物質も増やしてしまいます」
血糖値を急上昇させないような、カラダにやさしい食事はスキンケアにもつながるのだ。