お肌は内臓を映す鏡。皮膚の健康のために、いまできること
皮膚の健康を保つには一にも二にも保湿をすることが重要だ。化粧水やワセリンをなどでの保湿ケア以外にも、肌を洗い過ぎない、ビタミンB2・B6を摂るなど、普段の生活でできることがいくつかある。その基本をしっかりと学んでおこう。
取材・文/黒田 創 イラストレーション/しりあがり寿、岡田 丈(visiontrack) 取材協力/菊池 新(菊池皮膚科医院院長)
(初出『Tarzan』No.766・2019年6月13日発売)
1. 皮膚のトラブルはなぜ起こる?
健康な皮膚を保つには、まずは保湿。
「私たちの皮膚は大きく分けて5つの役割を担っています」と言うのは、菊池皮膚科医院の菊池新院長。
「1つ目は表面を覆って物理的に外部環境との境目を作り、体内の水分が漏れないようカラダを守る物理的バリア。2つ目は外部の刺激を防壁として受け止め、有害無害に分けて害のあるものを攻撃する免疫的バリア。3つ目は痛みや触感などを感知して脳に伝える感覚器。4つ目は汗と皮脂、塩分や老廃物を排出し、体温調節も行う分泌作用。5つ目は日光を浴びてビタミンDを合成する機能です」
なかでも物理的バリアの水分保持機能は、言い換えると保湿のこと。保湿は主に角質層で行われるが、何らかの原因で角質層の水分が失われて乾燥すると、ヒビが入ってめくれたり剝がれてしまう。すると皮膚は外からの刺激を受けやすくなり、トラブルを引き起こす。
他にも皮膚トラブルの要因はあるが、健康な皮膚を作るのは、まずは保湿あってこそ。肝に銘じておこう。
2. 皮膚の健康は腸と同じく「菌」も大事。
カラダを洗いすぎると、皮膚の保湿に関わる3つの要素が削られる。
最近の研究で、皮膚には常在菌の叢(フローラ)が存在することが判明している。この常在菌には善玉菌や悪玉菌、日和見菌があって、皮膚の健康保持に重要な役割を果たしているという。つまり腸と同じである。
皮膚の常在菌は皮膚の最外層の皮脂膜にいて、善玉菌の表皮ブドウ球菌や、悪玉菌の黄色ブドウ球菌がある。これらのバランスをとり、病原菌の繁殖を抑える弱酸性の状態を保つには、肌を洗いすぎないことだ。
石鹼やボディソープには界面活性剤が含まれており、これが皮脂の油分を皮膚表面から引き剝がす役目を担っている。しかしあまりカラダを洗いすぎると、今度は皮膚の皮脂膜まで奪ってしまう。さらにはその下にある細胞間脂質のセラミドも剝き出しになり、溶け出してしまうのだ。
皮脂膜が奪われるということは、その常在菌も洗い流されるということ。皮脂膜とセラミドと常在菌。洗いすぎは皮膚の保湿に関わる3つの要素を削るということをお忘れなく。
3. B2とB6、2つのビタミンが肌を救う。
不足すると、大人ニキビを引き起こすこともある。
「皮膚の保湿力を高めるためにもうひとつ大事なのが、ビタミンB2とB6を摂ることです。この2つのビタミンは皮脂腺から出る皮脂をサラサラにしたり、良質なアミノ酸を作る重要な役割を担っています」
「ビタミンが不足すると皮脂がネバネバして毛穴にも詰まってしまいますが、サラサラになれば皮膚の表面に出てきやすくなり、皮脂膜が作られた健康的かつツヤのある肌になるというわけです」
ビタミンB2は牛乳や卵、納豆やモロヘイヤなどに、B6はカツオやバナナ、鶏のささみなどに多く含まれる。
またサツマイモや牛、豚、鶏のレバーなどは両方を豊富に含んでいるので覚えておこう。他にもこれらのビタミンを含む食材はたくさんある。
ビタミンB2とビタミンB6が不足すると、大人ニキビを引き起こすことがある。この場合も2つのビタミンを長期的に服用するのが効果的な治療法となる。ビタミン摂取で皮脂の分泌が正常に戻るのだから、ビタミンを決して侮るなかれ。
4. 皮膚は内臓を映す鏡。両者の強い関係とは?
腸内環境の改善には食物繊維や発酵食品。
脳と腸が深く関係しているのはこちらの記事の通り。
だが、もうひとつ言えるのが「皮膚は内臓を映す鏡」ということ。確かに思い当たることも多い。最後にそのへんを掘り下げてみよう。
体調が悪くて吹き出物ができたり肌が荒れたりするときは、同じタイミングで便秘気味だったり、便秘で腸内が発酵しておならが臭くなったりするもの。これは腸内環境が悪化して悪玉菌の働きが活発になっている証拠。つまり腸の状態は肌の健康に直結している可能性が高い。
言うまでもなく、腸内環境は生活習慣や食生活に大きく左右される。炭水化物や脂質が多い食事や睡眠不足、疲労の蓄積といったことが腸内の善玉菌を減らして悪玉菌を増やしてしまうのだ。
腸内環境の改善には生活習慣の改善や、食物繊維や発酵食品を意識的に摂るのが効果的。急がば回れ。そのことが結果的にピカピカの肌を生み出してくれるのだ。