日差しは「365日防ぐ」べき! 日焼け対策の正解を専門医に聞く
季節が春めくとともに増える外出の機会。日差しがあたたかくなって、太陽の光を思う存分浴びたい…と思っても要注意! 「日光は適度に浴びるべき」という定説がいま、覆っているのです。皮膚専門医に「日焼けの新常識」を聞きました。
取材・文/廣松正浩 取材協力/小林智子(皮膚科専門医)
小林智子さん
教えてくれた人
こばやし・ともこ/皮膚科医。医学博士。都内クリニックなどで皮膚科の臨床に従事する傍らYouTubeやTwitter、Instagramでも美容・健康など皮膚科学に基づく美容・健康情報を発信中。近著に『すっぴん肌が好きになる 肌トラブル大全』(WAVE出版)
がらりと変わってきた「日光」への認識
春も本番を迎え、日に日に日差しは明るく、強くなっていく。
スキンケアに意識の高い人は紫外線対策として日傘や帽子を上手に使いこなし、化粧品やサプリメントなどでもしっかり守りを固めているのだろうが、日ごろ屋外で思い切りカラダを動かすのが好きな人たちはどうか?
日焼け止めをきちんと塗っても、ランニングやサイクリングなど持久系の運動では時間が経つうちに汗に流され、はがれて素肌はむき出し。毎度のこととあきらめて、何の対策もしないとどうなる? 皮膚科学だけでなくアンチエイジングや栄養理論なども熟知している皮膚科専門医、小林智子先生にうかがった。
「かつては適度であれば免疫機能の調整に役立ち、骨や歯の健康維持に欠かせないビタミンDを皮膚で合成できるので、日光を浴びるのも悪くないという主張が多かったのですが、これがいまではがらりと変わっています。年間を通して男女とも全員に、きちんとした紫外線対策が推奨されています」
実は、ビタミンDは食事で足りている?
人が日常に浴びる紫外線は波長の長さの違いでA波、B波がある。
「日焼けを起こすのは主にエネルギーの強いB波ですが、波長の長いA波は表面の表皮にとどまらず、その奥の真皮にまで到達して、コラーゲンを破壊してしまいます。表皮と違い、真皮には再生能力がありませんから、コラーゲンの破壊で生じたシワやたるみは時間が経ってもなくなってくれません」
日光の直射を受け続けると、皮膚の老化(「光老化」という)が止まらなくなる。やはり日焼け止めをせっせと塗り続けるしかなさそうだ。
また、日本人の食事摂取基準(2020年版)によればビタミンDの摂取目安量は成人なら男女ともに8.5マイクログラム、耐用上限量が100マイクログラムと実はそれほど多くない。たとえば10マイクログラムを日光浴で合成するには、7月の正午の炎天下の下、札幌なら約8分間、つくばでは6分間、那覇ではたったの5分間、両手の甲と顔を日光にさらすだけで足りてしまう。
「キノコやサーモンなどの魚にも豊富ですから、中緯度の日本に住み、平均的な食生活を送っていれば、不足するとは考えにくいのがビタミンDです」
日焼け止めは“塗り方”もポイント
あとは少しでも長時間、日焼け止めにもってもらいたいところだが、店頭に並ぶ商品の種類が多く、どれを選んだらいいものやら…。
「日焼け止めには2種類あって、まず紫外線を熱エネルギーなどに変換する紫外線吸収剤があります。これは吸収剤の成分自体が壊れることによって肌を守るので、時間がたてば効力が下がります。これに対し、紫外線を反射してカットする紫外線散乱剤は時間的な影響を受けにくいので、長時間屋外で過ごす人にお勧めです。さらに、ウォータープルーフの表記があるものを選べば汗をかいても落ちにくいでしょう」
それ以外にも容器にはいろんなことが書いてあるが…。
「『SPF』は日焼けの主役であるB波の、『PA』はA波の防御効果を表します。平均的な生活を送る人であれば、SPFは〈30〉ぐらい、PAは〈+++〉以上を目安に選びましょう。けれど、製品の性能よりも大切なのが、実は塗り方です。
両手と顔に塗るなら少なくとも500円硬貨ぐらいの広さを手のひらにとって、擦り合わせてから塗りましょう。分量はもっと多めでも構いません。また、日焼け止めの前に、皮膚の酸化を防ぐ観点からビタミンCを配合した美容液を塗っておくのもお勧めです。
抗酸化物質は食事から摂るだけでなく、効かせたい場所に塗っても働いてくれます」
なお、塗っただけで安心せず、汗をかきやすい時期である程度の時間日光を浴びそうなら、2~3時間おきに塗り直そう。これはそのまま重ね塗りで大丈夫。
また、A波の強さには季節変動が少ないから、日焼け止めは年間を通じて小まめに使うことだ。ちなみに、外光の入る屋内にも実は紫外線はいっぱいだ。相変わらずの巣ごもり生活だから安心、というわけではなさそうだ。