骨盤はカラダの中心で上半身と下半身をつないでいる。だからこそ、ちょっとした位置や傾きのズレが全身に悪影響を及ぼしてしまうのだ。
全3回の記事で、①前傾・後傾、②回旋、③左右の傾きという3つの視点から骨盤のコンディションを確かめ、改善するためのチェック&エクササイズ。第2回のこの記事では、「回旋動作」にフォーカスしてみよう。
三枝剛さん
教えてくれた人
さえぐさ・たかし/都立大Physio リハビリ・コンディショニングセンター代表、理学療法士、米国公認アスレティックトレーナー。プロアスリートから一般の方を対象に、痛みの改善、ケガからの早期の復帰からパフォーマンス向上まで、さまざまな要望に応えている。
目次
骨盤の「回旋」チェック
こんな自覚はキケン
- 靴の踵のすり減り方が左右非対称だ
- ショルダーバッグがいつも同じ肩からずり落ちる
- デスクワーク中、気づくと片側に姿勢が偏っている
- 長い距離を走ると、同じ側の膝が痛くなる
今回確かめたいのは、ハーフスクワットでしゃがんだ際の骨盤のポジション。左右どちらかの膝が前に出すぎる場合、背骨を軸に骨盤が前方へ回旋している。すると同じ側の足に体重が乗りやすくなり、逆側の足に荷重するのが苦手に。
荷重しやすい側の負担が増えるため、靴の踵が減りやすいし、長距離を走るとストレスが集中して膝などを痛めやすい。骨盤が引けている方は筋力低下を招く。
ハーフスクワットでチェック
評価方法
- 右膝が前に出る人は→右前方回旋メニュー15回+左前方回旋メニュー10回
- 左膝が前に出る人は→左前方回旋メニュー15回+右前方回旋メニュー10回
- 左右差がない人は→全メニューを各10回
バランス良く回旋するための修正種目は6種類。骨盤が出ているなら、そこを引っ込めるエクササイズを行う。同時に、逆側も回数を減らしてエクササイズを実施。
左右差がなかった人も、念のために左右同じ回数をやろう。すると骨盤を思い通りに回旋できて、早く整いやすい。
骨盤修正エクササイズのやり方
修正エクササイズは全種目を毎日行うのが基本。時間がないときは、左右差の大きいものを中心に実施。
エクササイズを2週間行ったら、再度チェックして左右差が縮小していることを確認。縮まっていれば、そのまま継続しよう。変化が乏しければ、回数を増やして正しいフォームで続けて再チャレンジする。
左右差が完全消滅しなくても心配無用。多少縮小するだけでも全身の動きが良くなり、日常生活が快適に送れる。
① 回旋に関わる筋肉を整える
- 右膝が前に出る人→左側上で蹴る15回+右側上で蹴る10回
- 左膝が前に出る人→右側上で蹴る15回+左側上で蹴る10回
- 左右差がない人→左右各10回
- 床で横向きに寝て、下の腕を曲げて上腕に頭を乗せ、上の手を胸の前について上半身を安定。
- 下の脚をまっすぐ伸ばし、上の脚の股関節と膝を90度曲げ、太腿を床と平行に保つ。
- 真上から見たときに、頭、体幹、骨盤、股関節、(下の脚の)膝と足首を一直線にする。
- 上の膝で壁を押すように、骨盤を前へ押し出して膝蹴りをし、元に戻る。膝と太腿は床と平行に動かす。
- 左右を変えて同様に行う。
② 回旋の動きを引き出す
- 右膝が前に出る人→右側に寝返る15回+左側に寝返る10回
- 左膝が前に出る人→左側に寝返る15回+右側に寝返る10回
- 左右差がない人→左右各10回
- 床で仰向けになり、両脚を腰幅で伸ばす。
- 両腕は体側で伸ばし、手のひらを床に向ける。全身を脱力。
- 両腕を床で頭上に伸ばしながら、首、胸(胸郭)と上から体幹を真横に捻る。
- さらに捻ってカラダが横になると、力を使わなくても、反射的に腰(骨盤)と脚が同じ方向に捻られて寝返りが打てる。
- 左右を変えて同様に行う。
③ 回旋の動きを引き出す
- 全員共通→前方へ20歩+後方へ20歩
- 痛くないようにヨガマットや厚手のバスタオルを床に敷く。
- その端で膝立ちになり、爪先を伸ばし、両手を腰に当てる。
- 真横から見て、膝、太腿、股関節、体幹、頭を床と垂直に保つ。
- 骨盤から上を固定して、膝立ちのまま前へ歩く。
- 同じように後ろにも歩く。
④ 左右の足に均等に荷重する
- 右膝が前に出る人→左足前で立つ15回+右足前で立つ10回
- 左膝が前に出る人→右足前で立つ15回+左足前で立つ10回
- 左右差がない人→左右各10回
- 痛くないようにヨガマットや厚手のバスタオルを床に敷く。
- 片膝をついてしゃがみ、反対の足を前に出し、前後の膝を90度曲げる。
- 骨盤を立てて背すじを伸ばし、両手を腰(骨盤)に添える。
- 前足の踵に荷重しながら、背中を丸めずにまっすぐ立ち上がる。
- 前脚を完全に伸ばし、後ろ脚は爪先立ちになる。
- 元に戻る。
- 左右を変えて同様に行う。
⑤ 回旋の動きを引き出す
- 右膝が前に出る人→左脚前で15往復+右脚前で10往復
- 左膝が前に出る人→右脚前で15往復+左脚前で10往復
- 左右差がない人→左右各10往復
- 坐ったときに膝より股関節が高くなるように、椅子の座面に厚手のクッション(または重ねたバスタオル)を敷き、浅く坐る。
- 片足を引いて床から浮かせ、前脚の膝を90度曲げる。
- 脇を閉じ、走るときのように両腕を構える。
- 前足に荷重し、腕を振りながら上体を左右に大きく捻る(捻る側の肘を後ろに引く)。
- 左右を変えて同様に行う。
⑥ 肩甲骨と連動して骨盤を動かす
- 右膝が前に出る人→左腕を前に伸ばす15回+右腕を前に伸ばす10回
- 左膝が前に出る人→右腕を前に伸ばす15回+左腕を前に伸ばす10回
- 左右差がない人→左右各10回
- 椅子に浅く坐り、骨盤を立てて背すじを伸ばす。
- 両腕をまっすぐ天井に伸ばす。
- アーチェリーの弓を引くように、片肘を床と平行にできるだけ後ろに引く。
- 肩を前に出して上体も前傾しながら、反対の腕を床と平行に思い切り前方へ伸ばし、元に戻る。
- 肩甲骨の動きで骨盤の回旋が自然に引き出される。
- 左右を変えて同様に行う。