おやつは我慢しなくていい|血糖値コントロールの8ルール ⑦
さまざま病気のリスクとなる「食後高血糖」を回避するために、血糖値コントロールの基本的なルールを会得しよう。キーワードは北里研究所病院の山田悟先生が提唱する「ロカボ®」。緩やかな糖質制限で健康的に続けられる食事法だ。今回は8つのルールのうちの⑦、「間食・スイーツ」について。
取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 スタイリング・栄養監修/田村つぼみ 取材協力/山田悟(北里大学北里研究所病院糖尿病センター長)
初出『Tarzan』No.822・2021年11月11日発売
糖質10g分のおやつはロカボ食
食事は1食につき糖質40gで1日の糖質摂取量は120g。これに間食の10gをプラスしてトータル130gというのがロカボ食の基本。間食とはつまり「おやつ」のこと。「おやつ=悪」という固定観念に囚われているうちは、ロカボ食の利点を十分に生かしきれない。
普段の食生活では節制し、1〜2週間に一度、好きなものを好きなだけ食べるチートデイを設定しているトレーニーもいるが、ロカボ食ではこれ言語道断。いくら頻度が少なくても、チートデイでおやつを爆食してしまった途端、血糖値の急上昇は免れないからだ。
血糖値スパイクがカラダにどんな不具合をもたらすかは、こちらの記事(なぜ「食後高血糖」が怖いのか。血糖値を整える6つのメリット)で解説している。ならば毎日10gのおやつを食べる方が俄然、安心。
糖質10g以内ならスイーツだってOK
では間食するならどんなものを口にすべきか?
これまでの常識でいうと、吸収の速い単純糖質の砂糖を含んだスイーツは血糖値の急上昇を招くのでNGとされてきた。確かにたとえ少量でも単純糖質を口にすれば血糖値は上がる。ただし、10gならば1型糖尿病の人でもインスリン注射に頼る必要のない健康に害のない量。
健康な人なら正常な食後血糖値の範囲内に収まるので問題はまったくなし。もちろん、人工甘味料を使用した低糖質スイーツなら、1人前のポーションを平らげてもOKだ。
糖質制限の強い味方、ナッツや大豆もおすすめ。ただし、大豆以外のひよこ豆やレンズ豆、小豆など糖質が多く含まれる豆は主食のグループ。主食としてカウントしないと糖質量が上乗せされてしまうので要注意。
パッケージの糖質量をチェックのうえ、毎日のおやつを楽しむべし。
一見ヘルシーな果物、食べすぎは危険
間食として口にするならヘルシーなフルーツ。フルーツはビタミン豊富だし、インスリン分泌を促すことなくカラダに吸収されるし。でも残念ながら、これは大いなる誤解。
血糖値の上昇率を表すGI値でいうとブドウ糖100に対して果物に含まれる果糖は20。よってインスリンの助けを借りずに代謝される。一見、血糖値コントロールにうってつけとも思えるが、さにあらず。
まず第一に、果糖は肝臓に直行して脂肪合成を促すため脂肪肝を引き起こしやすい。さらに、果糖はブドウ糖よりインスリン抵抗性を上げるという実験報告もある。小腸で果糖を取り込む輸送体が増えると栄養素の吸収効率が上がり、太りやすくなるという動物実験も。
口にするなら糖質10g以内の範囲で。
毎日の間食で心の油断を防ぐ
いただきものの高級スイーツを目の前にして心によぎるのは、「いつも我慢しているから、今日くらいはいいよね♡」というエクスキューズ。この「たまにはいいか」という心の油断が曲者。
1人前のポーションを軽く超えて堪能してしまった挙げ句、ロカボ食全体が大崩れ。血糖値爆上げの可能性大だからだ。
こうならないためにも、1日10gの範囲で間食を楽しむ習慣をつけておく。すると、超高級ないただきもののスイーツを前にしても、「わざわざこんなもので血糖値を上げたくない」という考え方にシフトしていくはずだ。
普段から楽しむ術を知っているからこそ、「たまには」という油断が入り込むスキがなくなる。がまん無用の毎日がこうした心の鍛錬に繫がるのだ。
分食の主食はさらに少量に
夕食がどうしても遅い時間になってしまうというとき、有効なのが間食ならぬ分食。寝る前の血糖値をムダに上げないため、本来、夕食で食べる分の主食だけを夕方に食べ、夕食ではおかずだけを食べるという食事法だ。
ただし、おにぎり1個を丸々食べてしまうと糖質量は約40g。しかも、カーボ単品なので血糖値は跳ね上がる。よって、分食するなら1食の糖質量を20gにする。これなら1日6食食べてもOKだ。
ただし、食事と分食の間隔は最低でも3時間は空けたい。となると、タイムスケジュールがせわしなくなることは否めない。分食は必要に応じて計画的に取り入れるべし。