What’s ラジオ体操
ラジオ体操は、1928年にかんぽ生命の前身である逓信省簡易保険局が「国民保健体操」として制定したのが始まり。現在のラジオ体操第一は51年、第二は52年に制定。第一も第二も13種類の運動からなり、3分ほどで終わる。
目次
その90年の歴史が証拠です。ラジオ体操こそが、カラダ作りの基本でした
西川貴教さん
歌手・俳優
にしかわ・たかのり/1970年、滋賀県出身。96年ソロプロジェクト〈T.M.Revolution〉としてデビュー。2018年からは西川貴教名義で音楽活動を開始。トレーニーとしても昨年は『ベストボディ・ジャパン』で優勝するなど活躍。
多胡 肇さん
NPO法人 全国ラジオ体操連盟理事長
たご・はじめ/1989年、日本体育大学体育学部卒業。西武ライオンズトレーニングコーチなどを経て、98年から現職。指導者として全国を巡回。日本工業大学非常勤講師、埼玉西武ライオンズレディーストレーニングコーチ。
大須賀洋祐さん
東京都健康長寿医療センター研究所 研究員
おおすか・ようすけ/2009年、筑波大学体育専門学群卒業。日本学術振興会特別研究員などを経て、16年より現職。所属は自立促進と精神保健研究チームであり、介護予防と健康作りを専門としている。博士(スポーツ医学)。
多胡肇 ラジオ体操は、1928年に始まり、90年を超える歴史があります。
西川 生まれたときからあったから、いつ始まったかなんて考えたことがなかった。長く愛されてきたんですね。
多胡 身近すぎて見逃しがちですが、ラジオ体操は奥が深い。踵を引き上げるカーフレイズの動きは、1928年から入っています。
大須賀 カーフレイズは高齢者の転倒予防に有効なので、高齢化社会の今改めて注目されています。
西川 踵を上げた後、ストンと落とすと骨に刺激が入り、骨粗鬆症の予防にもなりますね。
多胡 おっしゃる通りです。
西川 祖母は今年97歳。3世代住宅で一人暮らしをしていて、階段の上り下りを毎日していたから、90代前半まで足腰はしっかりしていました。
大須賀 体操をやっている高齢者とやっていない高齢者を4年間追跡調査したところ、体操をやっている人は、バスなどでの移動や買い物などのIADL(手段的日常生活動作)の低下を防ぐので、体操の習慣化は介護予防につながります。
西川 その体操は、ラジオ体操?
大須賀 時間や頻度を聞くと、1回10分以内で毎日やるという回答が多かったので、おそらくほとんどはラジオ体操でしょう。
西川 それは間違いない!
体操が生活動作の維持に役立つ
コロナ禍で見直されて、隠れラジオ体操ファンも増えた
多胡 ラジオ体操は第一も第二も13種類の運動があり、ともに3分で終わります。でも、きちんとやると、全身の650前後の筋肉のうち、400ほどが刺激できるといわれています。
西川 まさに全身運動と言えますね。真面目にやると汗をかきますから。改めて考えると、究極の自体重トレーニングかもしれません。あとピアノ伴奏に合わせてやるのもいい。第一の「腕を回す運動」なんて、あの独特のメロディの運びは、小さい頃からカラダにしみついています。
多胡 強く曲げる動きは鍵盤を強く弾き、伸ばす動きは優しく伸ばすように弾くので、言葉と号令では伝わりにくい部分を、音楽が助けてくれる。ラジオ体操ならば適切な強度で体操できます。
大須賀 前述の研究でも、音楽が絡むダンスの習慣がある人は、IADLよりさらに基本的な移動、食事といったBADL(基本的日常生活動作)が衰えにくいとわかっています。
多胡 西川さんは現在、ラジオ体操をやる機会はありますか?
西川 ラジオに合わせてやることはありませんが、舞台の前のストレッチなどには、「あ、これはラジオ体操の動きだ」というものもある。子ども時代のラジオ体操を、カラダが無意識に覚えているんですね。
多胡 コロナ禍で大人にもラジオ体操が見直されている。隠れラジオ体操ファンが増えて、そうした方々から「久しぶりにやっています!」という声が多く届いています。
大須賀 コロナ禍で外出機会が減り、運動不足が心配されます。その点、ラジオ体操は、いろいろな栄養素が入った総合栄養補助食品のようなもの。たった3分の運動で“全入り”なので、運動不足の解消に適しています。
西川 僕は20年以上トレーニングしていますが、いまだに「何のために鍛えるんですか?」と聞かれる。僕みたいにコンテストに出なくても、運動は本来全員に必要。ただ、いきなりハードな運動はムリだから、ハードルは低いほどいい。子どもから高齢者までできるラジオ体操は、運動の入り口としては最適です。コロナ禍以降、在宅勤務が増えると通勤時間を運動に回せる。コロナというピンチをチャンスに変えてほしい。
多胡 3分で終わるのだから、ラジオ体操の時間がないとは言わせません(笑)。
ラジオ体操の小さな成功体験を本格的な運動につなげていく
大須賀 研究の世界では、座り続けてカラダを動かさない「セデンタリー・ライフスタイル」による健康リスクが懸念されています。
多胡 座りすぎは、喫煙と同じくらいカラダに悪いといいますよね。
大須賀 座ってばかりいる人に運動を薦めても、実行してもらえない。アメリカスポーツ医学会でも、以前は「1回30分のウォーキングを週5回やりましょう」などと提案していたのに、最近は「セデンタリーを減らそう」というメッセージが追加されました。
多胡 座るより立つ。立ったらラジオ体操!
大須賀 そうやって小さな成功体験を重ねると、本格的な運動への意欲も高まります。
西川 みんなで一緒にできるのもいい。「トレーニングがよく続きますね」と感心されますが、一人で孤独に鍛えていたら挫折したかもしれない。パーソナルトレーナーと一緒にやるので、サボれない。
大須賀 周囲の社会的支援が、運動の継続には有効。身近で、自らの行動に影響を与える人とやると、運動は続けやすい。私たちの研究でも、夫婦で始めた人は運動を挫折する率が低いという結果が出ています。
夫婦だと運動は継続しやすい
西川 子どもの頃、出席カードにスタンプを押してほしくて通いました。あのカードも、運動を続けたくなるいい仕掛けですね。小学校高学年になると、夏休み中、会場に大きなラジオを持っていく係に任命されたので、責任感が生じてさらにサボれなくなった。
多胡 ラジオ体操出席カードは、1952年から70年近い歴史があります。
西川 DXでアプリ化したり、ゲーム性を高めたりできたらもっといいですね。
多胡 みんなで一緒にやると、心の健康作りにも役立ちます。体操で心地よい汗をかき、爽快感と達成感を共有できたら、「今日も頑張ろうね」といった会話が自然に生まれる。こうした前向きな交流が、心の健康度をアップさせるのです。
大須賀 会話が減り、孤独が深まると、認知症リスクが高まるという報告もあります。
西川 毎朝みんなでやっていれば、「あのおじいちゃん、今日は来ないけど、何かあった?」と高齢者の安否確認にもなる。コミュニティの絆を高める効果も期待できそうです。今回ラジオ体操のスゴさを再認識させられました。お二人、ありがとうございました!
西川貴教が体験! ラジオ体操は、ポイントを守れば、ここまで効く!
ラジオ体操第一(2)|腕を振って脚を曲げ伸ばす運動
ラジオ体操の神髄を、多胡さんの指導で西川さんが体験。まずは「腕を振って脚を曲げ伸ばす運動」から。
- ① 踵を引き上げ、腕を交差する。
- ②③ 腕を横に振り、脚を曲げ伸ばす。
- ④ 腕を振り戻して交差しながら、踵を下ろして再び上げる。
「膝の屈伸と腕振りに注意が向きますが、その間、踵はずっと上がって付けたまま。お尻の大臀筋と太腿内側の内転筋群が鍛えられます」(多胡さん)
「あ、本当ですね。これが話に出たカーフレイズの動きですね。最後に、ドスンと音を立てて踵を落とすと、骨にも刺激が入ります」(西川さん)
腕の振り方にも、知られざるポイントがある。
「手のひらを下に向け、肘が重なるくらい腕を交差させると胸の大胸筋が縮んで肩甲骨が広がり、横に振ると大胸筋が伸びて肩甲骨が寄ります」(多胡さん)
「肩甲骨の内外転で僧帽筋がほぐれるから、在宅勤務の肩こりの軽減にもつながりそうです」(西川さん)
ラジオ体操第二(10)|体を倒す運動
続いて「体を倒す運動」。これは実は、自体重では鍛えにくい、背中をはじめとする背面の体操である。
「上体を深く倒すほど、背中の脊柱起立筋と太腿後ろ側のハムストリングスに効く。主働筋は脊柱起立筋。腕を上げるときにより刺激されます」(多胡さん)
- ①② 上体を前傾し、腕を後ろから前に大きく振る。
- ③ 腕を前後に軽く振り、腕を前に振ると同時に上体を起こし、腕の振りに合わせて上体を前傾させる。
何度か試すうち、西川さんも効果を体感してくる。
「汗が軽く出る頃には背中にじわじわ来ますね。広背筋を狙ったケーブルプルダウン的な効き目も期待できそう。背面はマインド・マッスル・コネクション(筋肉に意識を向けること)が難しいのですが、膝を伸ばして腕を振ると背面にちゃんと効く」(西川さん)
胸を張り、背筋を緊張させ、背中を丸めずにやろう。
ラジオ体操は、サステナブルなんです
ラジオ体操が誕生した昭和初期は、日本全体が貧しく、健康&栄養状態が悪かった時代。当初はそうした状況の改善を目指してラジオ体操が生まれましたが、ラジオ体操の生みの親であるかんぽ生命は今、人生100年時代に相応しいラジオ体操のあり方を追求しています。
その一つが、社会の持続可能性に配慮したサステナビリティ経営としての位置付けです。保険会社が、契約者に保険金をお支払いするのは当たり前。「誰でも」「すぐに」「一緒にできる」というラジオ体操の強みを活かし、全国の皆さまの心身の健康に関わる悩みや困りごとに寄り添い、質の高い暮らしと健康な社会づくりに貢献したいと思っています。
ラジオ体操の認知度は97%を超えますが、定期的に実施する人を増やすことが今の課題です。 子ども向けには、出席カードに加えて、ウェブサイトと連動したポイント制などのゲーミフィケーション(ゲーム化)も考えています。
大人向けには、企業の健康経営や従業員の健康増進に役立ててもらうため、かんぽ生命のラジオ体操指導員の派遣や、オンラインレッスンの実施を提案しています。自治体を介したラジオ体操イベントによる啓発活動も続けます。
また、より自信を持って薦められるように、ラジオ体操の健康効果の立証に向けた共同研究がこの10月からスタートしました。 今後もラジオ体操にご期待ください。
動画「サクッと! ラジオ体操」が役立つ!
ラジオ体操の動作を分解して、短い動画でサクッと! わかりやすく解説してくれる「サクッと!ラジオ体操」はコチラから。ポイントを意識して、より健康効果を!