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こんなパンを待っていた! 豆でつくられたグルテンフリーの《ZENB ブレッド》
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コロナ禍をきっかけにランニングシーンが大きく変わりつつあるのをご存じか。リモート続きだからと走り始める人は急増中だが、それだけじゃない。相次ぐ中止でガチレースがオンライン化やミニイベント化、だから楽しく走れればOKの楽RUNが主流に。厚底シューズだって後押ししてくれる。そんな変化を聞けばますます走りたくなる! 10のトピックスを紹介。
目次
昨年来在宅時間が増え、「この機会に走ってみるか」とランニングを始めた人が急増中との噂。確かに都心、郊外問わずランナーを見かける機会は増えている気がする。
数多くのランニングアイテムを揃える〈スーパースポーツゼビオ東京御茶ノ水本店〉の田中葵さん、実際のところはどうですか?
「“初心者ですけどどんなシューズを選べばいいですか?”と来店されるお客様は間違いなく増えています。今までは大会に出て完走したいという方が多かったのですが、コロナ禍を機に走り始めた方は、ガチなスポーツウェアより、お洒落な北欧製メーカーのウェアを選ぶなど、純粋に走ることを楽しみたい、生活を充実させたい傾向が強いように感じます」
ランニング専門誌『ランナーズ』の黒崎悠編集長が続ける。
「コロナをきっかけにカラダのことを気にしたり、在宅ワークになったことで運動不足になった人がランニングを始めている傾向が見られます」
ランニングコーチでテレビのマラソン解説でもおなじみの金哲彦さんも「ランニングシーンは大きく変わりつつあります」と話す。
「大勢と接触せず、一人でも自由に楽しめるスポーツであること。コロナ禍においてランニングが人気を集めているのはそのあたりが大きいと思います。通勤時間が減った分の運動不足が解消できますし、代謝が高まり、体力も自信も徐々についてくる。コツコツ続けることで、徐々にその効果を感じる方も増えているのではないでしょうか」
ジムのランニングマシンで走るのも運動にはなるが、実際の道を走ることはそれ以上にカラダにいい。
「マシンは床のローラーが勝手に脚を動かしてくれますが、道を走るときは体重を自力で前に運ばないと前に進めない。在宅で弱りがちな股関節まわりが鍛えられますし、着地時に必ず片脚で体重を支えることは全身の筋肉強化に繫がる。1日5~10分でいいのでゆっくり外を走ってみてください。間違いなくカラダが変わります」(金さん)
感染リスクが少なく、一人マイペースで続けられるランニング。なんか面倒だし、と今まで食わず嫌いだったあなたも全然大丈夫。始めるタイミングは今、まさにこの瞬間だ。
コロナ禍で今までのような大きなマラソン大会はなくても、ランナーは新たな楽しみを見つけている。
「スポーツイベントの募集と申し込みが手軽にできる〈イー・モシコム〉を見ると、数人~数十人単位のミニイベントが盛況です。なかにはパン屋さんや観光地巡りといった、地域再発見とランが合体した初心者が参加しやすいものも。記録向上とは異なる価値感の“とにかく楽しむ”ランニングに目を向けている人も増えていると感じています」(黒崎編集長)
『ジョイラン北陸』もその一例。
「金沢の和菓子店を巡ったり、夜景を楽しむナイトランなど“ランで旅する”をコンセプトに各種イベントを開催中です」(代表・森川和重さん)
また、ネット地図とGPSを活用して作品を作り、ネットに上げるというお絵描きランも盛り上がっている。
4年ほど前から世界のマラソン界を席巻している「厚底シューズ」。約1400足が並ぶ〈スーパースポーツゼビオ東京御茶ノ水本店〉の棚を見ると、ブームの発端であるナイキのみならず、各メーカーの厚底が多数ラインナップ。
「初心者にとってはそのクッション性が長時間走る手助けになりますし、中級以上のランナーにとっては進化した高反発素材が加わることで推進力もプラスされる。さらに軽量化も進んでおり、片足200~250gのモデルも多い。もはや厚底シューズはスタンダードになりましたね」(田中さん)
元箱根駅伝ランナーのライター・酒井政人さんもこう話す。
「多くのトップランナーは前足着地で走っていますが、本来初心者には難しい走法。でも最近の厚底シューズは自然と前足部で着地できる形状のソールになっていて、より楽に速く走れるんです。今はシューズが記録達成をアシストし、市民ランナーの上達を早めモチベーションを高める時代なのです」
在宅ワークで椅子に座ってばかり。すっかり腰痛持ちになった人にもランニングは有効。オーストラリアのある研究所が数年前にそう報告している。
曰く、ランナーの腰痛の有症率と発症率は、一般人や他のスポーツ実践者と比較すると概して低いことが判明したというもの。腰痛とランの関係、金哲彦さんはどう思いますか?
「良くない姿勢で椅子に座りっぱなしだと背中側に延びる脊柱起立筋が機能せず硬くなる一方。それが腰痛の一因となるのですが、ランニングで楽に走ろうとすると、自然と背すじを伸ばしたフォームになる。
このとき脊柱起立筋がしっかり使われ、硬直を防ぎます。走ることが腰痛を防いだり、軽減につながるのは間違いないでしょう」
コロナ禍以降、ショップでリカバリーシューズが売れているという。
「本来マラソン大会など長距離を走った後に疲れた足を解放し、疲労回復を早めるべく履かれるものですが、コロナ禍で在宅時間が増えたことで、リラックスシューズとしてサンダル代わりやスーパーの買い物用に履く方が増えているんです。サンダルタイプからスリッポン式まで種類も豊富で、問い合わせも多いです」(田中さん)
もうひとつがすっかりランナーにも定着したマスクである。
「さすがにランニング中の不織布マスクは辛いので、通気性の高いスポーツマスクに加え、人が周りにいないエリアでは下ろして首にかけておけるストラップタイプのマスクが人気です」
「ここ十数年大規模マラソン大会が増え続けていましたが、2020年来大半が中止。代わりに台頭したのがオンラインマラソンです。これは1週間や2週間など、一定期間内にフルやハーフの距離を走り切るという形が多く、ビギナーの方が参加しやすいことが特徴です。
“ひとりで走っていても同じオンラインレースを走っている仲間とつながっている気がする”という声も多く聞かれました」(黒崎編集長)
リアルのレースとオンラインを同時開催する大会も多く、今年のロンドンマラソンはともに5万人を募集した。
「オンラインだと自宅発着だったり近所を走るケースが多く、お子さんにゴールテープを広げてもらうなど、家族全員で楽しむ様子も見られました」
前出の〈イー・モシコム〉を見ると、大規模マラソンが中止になった人向けの救済的ミニレースが開催されるなど、ニッチ化傾向も。逆に“今だけ”のラン状況を楽しむのが正解といえそうだ。
従来、飲み物を確保しにくい山中を走るトレイルランナーが持参するドリンクボトルを、街を走るランナーがこぞって購入しているという。why?
「以前は公園の水飲み場で喉を潤していたランナーが、コロナによる水飲み場の閉鎖を機にボトルを持参するようになったのが大きいと思います。また、2022年2月の湘南マラソンのようにマイボトル持参を義務付けた大会が増える見込みです。ボトル持参は今後のスタンダードかもしれません」(田中さん)
また、ランニングステーションや銭湯など、街中を走る際に荷物置き場として重宝していた場所が閉鎖または営業時間を短縮したことで、トレラン向けのバッグを買い求めるシティランナーも増えているのだそう。
昨年、国立障害者リハビリテーションセンター研究所と東京大学などの共同研究グループは、ランニングによる衝撃が脳機能の維持と調節に関係していると報告。また別のオーストラリアの研究では、週1回または週に50分程度走ったランナーの死亡リスクは、全く走らない人と比べて20~30%程度低下することが判明したという。
「ランニングも含めたジャンプ運動は脳に刺激を与え、セロトニンという脳内物質が分泌されてメンタルを安定させ、自律神経を整える効果がある。
座りっぱなしの生活を続けると死亡率が高くなるとの報告がありますし、カラダを動かさないことでストレスが溜まると、がんのリスクも高まるといわれます。走って脳とカラダに適度な刺激を与えることは誰でも続けられます。やらない手はありません」(金さん)
1日に10分の縄跳びは無理でも、10分走るなら「やれるかも」と思える。ランニングのハードルは実は低いのだ。
東京五輪の男子マラソンを制した世界記録保持者のE・キプチョゲ、6位入賞でラストランを終えた大迫傑、そして今年2時間4分56秒を達成し、非アフリカ勢で初めて2時間5分の壁を破った鈴木健吾。
3人に共通するのはトラック競技出身であること。
「トラック競技特有の馬力がある走りが勝負どころで強みを発揮します。キプチョゲは36歳ですが、マラソンに転向して9年。まだ伸びしろはあると思います。公認記録は2時間1分39秒。2時間切りも夢物語ではありません。
鈴木選手は163cmと小柄ながらストライドが広く、上下動の少ない安定感のある走りが魅力。1万mなどで記録を伸ばし、マラソンにも生かしてほしいですね」(金さん)
「最近はシューズにセンサーが内蔵され、計測、解析されたフォームに関するデータをスマホに表示するアプリが各メーカーから登場しています。以前は専用機器がないと調べられませんでしたが、ある程度ランナー自身で把握できるようになりました」(酒井さん)
そのひとつがアシックス×ORPHE《EVORIDE ORPHE》。着地パターンや着地時の踵の傾き、歩幅の広さなどを計測。走りながら一人一人の特徴に合わせたアドバイスを音声で知らせる機能も活用したい。
取材・文/黒田創 撮影/山本嵩 写真協力/AFLO、Shutterstock、Kyodo News/Getty Images、『ジョイラン北陸』事務局 イラストレーション/内山弘隆 取材協力/田中葵(スーパースポーツゼビオ東京御茶ノ水本店)、金哲彦(ランニングコーチ、ニッポンランナーズ代表)、黒崎悠(『ランナーズ』編集長)、酒井政人(スポーツライター)
初出『Tarzan』No.820・2021年10月7日発売