枕の寿命は? 室温・湿度は? 心地よい眠りの「最適値」
寝苦しい。気候もあるけど、そもそも寝具や寝室がよくないのでは? しかし不眠を引き起こす要因をひとつずつひもといていくのは容易ではない。だから、まずは簡単なことから始めよう。ズバリ、眠るための環境作りだ。
取材・文/鈴木一朗 イラストレーション/オガワ(ogwillust)取材協力/西川株式会社日本睡眠科学研究所
初出『Tarzan』No.815・2021年7月21日発売
目次
睡眠のリズムの参考値。
眠りのサイクルは約90分で、その倍数分で目覚めればすっきり起きられるといわれる。4サイクル分なら6時間だ。もちろん個人差はあるが、多くの人は80~100分の中には収まるようだ。もし90分で寝起きが悪かったら、80~100分の間で時間を変えて試す。爽やかに目覚めたら、それがアナタのリズムだ。
良い眠りを誘う音の大きさ。
40dBは図書館でページを繰る音がパラリと聞こえるほどの静けさ。これが、理想の音量。それ以上だと眠りを妨げるし、無音も緊張してしまう要因となることもある。川のせせらぎなどの、自然界のゆらぎが含まれたヒーリング音楽をかけるのもよい。ただし、かけっぱなしはNGで、タイマーで止まるようにしたい。
マットレスを上下裏表とローテーションさせる期間。
仰向けに寝たとき、カラダ全体の荷重のうち、約44%が腰部分にかかる。つまり、マットレスのその部分は圧に晒されヘタりやすい。結果、沈み込むようになると、腰痛を引き起こす原因に。だから、上下裏表とマットレスの向きを変え、ローテーションして使いたい。体重の重い人なら3か月、軽い人なら6か月が目安だ。
室内環境で必要な室温と湿度。
寝具にかかわらず、10度以下の室温では質の高い眠りは望めない。頭部の温度が下がり、呼吸によりカラダも冷える。また、28度以上だと寝苦しいし、熱中症の危険も。これからの季節、夏ならば26度程度の設定でエアコンのかけっぱなしがいい。そうすれば夜間の熱中症を防ぎ、寝苦しさの軽減にもつながる。
寝入りや昼寝の時に意識したい状態の角度。
真横の状態から上体を30度起こす。すると横隔膜が下がって呼吸がしやすくなり、楽に眠ることができる。夜寝るときには、タオルなどで角度をつけ、寝入る直前に外せばよい。昼寝にも有効。短い時間で深い眠りに就ける。ただし昼寝は30分以内に。それ以上だと夜に眠れなくなり、睡眠のリズムが乱れる。
寝入りの時に上げておく脚の高さ。
日中に活動しているとき、体内の水分は脚に溜まる。そして眠りに就くと上半身へと移動し、首まわりに溜まっていびきの原因になる。これを避けるには、寝る前に20度ほどの高さに脚を上げておく時間を作ること。水分がカラダのほうに下がってきて、これで余分な水分を排泄できる。寝る際は足を下ろそう。
枕の後頭部の高さ&頸椎に当たる高さ。
枕は頭を乗せるだけではなく、首も支えるもの。そのために重要なのが、頭が沈み込んだときの高さだ。低すぎると首は後方に屈曲するし、高すぎると頭が前方に出て気道が狭くなる。後頭部は2~6cm、頸椎は5~9cmの高さが快適に眠れる目安。立位での首と頭の関係を、横になったときにも保てるのが理想。
枕の寿命。
枕を清潔に保つには、カバーを掛けてこまめに洗う。ときどき干して湿気を取り除く。洗える素材で洗濯する場合はネットに入れて弱流水で洗い、中心部までしっかり乾かす。こんなことに気をつければ良好な状態を保てる。とはいえ寿命はある。2~3年経つとクッション性も劣ってくるので、買い替えを。
眠りに干渉しない暗さ。
室内に置いてあるモノの影がぼんやり見えるぐらいの暗さが0.3ルクス。これぐらいの照度が睡眠には適する。常夜灯をつけて寝る人もいるが、直接光源が見える場合は、まぶたを閉じても光の刺激を受けるので、質のよい睡眠は得にくい。もし、真っ暗だと眠れないのであれば、フロアランプのような間接照明にしたい。