疲労への応急処置「パワーナップ」を効果的に行う5つのポイント
最低でも7時間の睡眠を確保できていない人は睡眠負債を抱えている人、平たく言えば寝不足状態である可能性が高い。そんなとき応急処置的に取り入れたいのがパワーナップ、短い仮眠だ。ただ昼寝をすればいい、というわけではない。効果的にパワーナップを取り入れるための5つのポイントを紹介する。
取材・文/石飛カノ 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/村田真弓 取材協力/前野博之(栄養睡眠カウンセラー協会代表)
初出『Tarzan』No.797・2020年10月8日発売
日本人は世界一寝不足に苦しんでいる?
日本人は世界一眠らない国民。OECD(経済協力開発機構)の調査でそれがバッチリ確定してしまった。最近まで韓国と抜きつ抜かれつだったが、2020年は1日の平均睡眠時間が442分、7時間22分でワーストワン。
勤勉なお国柄だから、と言い訳している場合ではない。疲労回復という意味ではこれはマズい、非常にマズい。疲労を取り去る最良の方法はなんといっても睡眠だからだ。
「平均」ということは、これより少ない睡眠時間の人々が多くいるということ。最低でも7時間の睡眠を確保できていない人は睡眠負債を抱えている人、平たく言えば寝不足状態ということだ。
取り入れたい「パワーナップ」。
とはいえ、ただちにライフスタイルをシフトチェンジできない場合もあるだろう。そんなとき応急処置的に取り入れたいのがパワーナップ、短い仮眠だ。つまりは昼寝? いや自分には全然必要ありません、という人。ちょっと振り返ってみてほしい。
ランチの後、午後の早い時間にまったりとした気分になった覚えがあるだろう。まあ、でもこのレベルであれば万人共通の現象。もともと人の覚醒レベルは朝起きてから昼にかけて徐々に上がっていき、午後2時くらいでいったん低下する。で、再び夕方から夜にかけて覚醒レベルが上がっていくという二相性であることが分かっている。
この法則に従っているだけなら、まったりした気分になる程度。でも、オフィスのデスクについたまま、あるいは電車のシートに座っているときガクンと首が落ちて派手に舟を漕いだら要注意。こちらはまさに睡眠負債を抱えているという兆候。思い当たるフシがあるならネックピローなどを常備して仕事中でも昼寝をとるべし。さもなければ疲労は溜まる一方だ。
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パワーナップはランチ後がおすすめ。
さて、パワーナップを有効化するにはちょっとしたルールがある。まずは、必ず午後2時までに覚醒すること。それ以降の時間に眠ってしまうと、夜の睡眠に影響してしまう。
眠りを直接促す睡眠物質と呼ばれるものに、アデノシンという物質がある。これはすべての細胞のエネルギー源であるATPの分解物。起きて活動を始めると同時にアデノシンは溜まっていき、とくにATPを大量に消費する脳には溜まり放題。これが「睡眠圧」となり、「圧」を逃がすために人は眠りにつく。
午後2時以降の眠りはせっかく溜まったアデノシンの「圧」をリリースしてしまう。よって、夜眠りにくくなる可能性が高まるのだ。ランチ後、すぐオフィスに戻ってデスクで仮眠をとる。これが最もおすすめ。
またパワーナップは継続時間も重要で、最大でも20分までというのがルール。それ以上眠ってしまうと深い睡眠に突入してしまい、覚醒しても脳が目覚めずパフォーマンスがかえって落ちる。それではパワーナップの意味なしだ。
午後の眠気は、ランチにも影響を受ける。
一方、毎日7時間以上寝ているのに午後イチで舟を漕いでしまうという人。ランチで糖質を摂り過ぎてその反動で低血糖状態に陥り、脳の機能が低下している可能性がある。丼やカレー、チャーハンやラーメンなどの一皿ものではなく、タンパク質のおかずメインで主食は少なめを心がけてみてほしい。
以上のルールをわきまえたうえで、在宅勤務なら横になってパワーナップをとってもOK。むしろその方が覚醒後の爽快感は増すかもしれない。
最後にパワーナップの裏技を伝授しておこう。寝る前にコーヒーを飲んでおくと、寝ている間にカフェインが吸収され、ちょうど覚醒のタイミングで作用してパフォーマンスがアップする。午後早い時間に大事なプレゼンや会議があるというときは、試してみる手もありだ。
ただし、カフェインは脳に負担をかけるというリスクもあるので常用は避けた方がいい。あくまでここぞというときの切り札に。また、カフェインは体内でその量が半分になるまでに7時間前後かかる。パワーナップ同様、午後2時頃までに飲み終えないと、夜の睡眠を妨げることになるのでご注意を。
適切な「パワーナップ」5つのポイント
① 午後2時までにパワーナップ
夜の睡眠に影響を及ぼさないために、パワーナップは午後2時までに終える。おすすめはランチ後のタイミング。
② パワーナップは最大20分まで
20分程度の眠りなら深い睡眠に陥らないので、シャキッと目覚めることができる。スマホのタイマーなどで起きる時間の設定を。
③ ランチはタンパク質中心にする
血糖値の乱高下による暴力的な眠気を防ぐために、ランチは糖質控えめに。肉、魚、大豆、野菜を中心にして主食少なめを心がける。
④ 在宅勤務なら楽な姿勢で横になる
オフィスでのパワーナップは自分のデスクで。リモートワークの日はソファに横になるなど、楽な姿勢でパワーナップ。
⑤ パワーナップ前のコーヒーは切り札
眠る前にコーヒーを飲んでおくと眠っている間に吸収され、覚醒のタイミングでカフェインが作用する。気合を入れたいときの切り札。