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「いびき」は多様な疾患を招き寄せる。原因を知り、舌トレ&治療法を学ぶ

楽な寝姿勢のはずが、仰向きに寝ると音色のよくない管楽器と化す。太っていてもいなくても、仰向き寝はハイリスクと知るべし。

いびきをかく人は就寝中、軟口蓋や舌根が喉の奥に沈下し、気道が狭くなっている。当然カラダは酸素が不足。これでは安眠にはほど遠い。「慣れてるからヘーキ」という油断は禁物、いびきがさまざまな疾患につながることもある。効果的な3分でできる舌トレーニングと、治療法について理解を深めておこう。

最悪の場合、命を落とすことも…。

エアコンばっちり、快適な部屋で十分眠れたはずなのに、なぜか熟眠感が乏しく、疲れも完全には取れていないような、そこのあなた。もしや就寝中、いびきをかいていませんか? 身に覚えがあるなら早めに呼吸器科の受診をお勧めする。

「いびきをかく人の7~8割は睡眠時無呼吸症候群に陥っています」と指摘するのは睡眠専門医、白濱龍太郎医師(RESM新横浜院長)だ。

いびき対策
健康な人の軟口蓋、舌根はあるべき位置にいてくれるので、寝ついた後も気道はちゃんと確保されている。

人はいろんな理由でいびきをかく。下のチェック項目は一つ一つがその一因。そして、いびきをかく人は就寝中、軟口蓋舌根が喉の奥に沈下し、気道が狭くなるため低呼吸(呼吸効率の低下)や無呼吸を繰り返す。当然カラダは酸素が不足し、危機を察知した自律神経は、強烈な交感神経優位に陥る。

すると、血圧は上がり、インスリン抵抗性が高まったりで、不健康なことこの上ない。最悪の場合、眠ったまま脳梗塞心筋梗塞などで命を落とすことさえあるという。これでは安眠、快眠にはほど遠い。

いびき対策
いびきをかく人が仰向きで眠ると、軟口蓋と舌根が重力に引かれ、沈下して気道を塞ぐ。おかげで気流は盛大に妨げられ、夜通しいびきはかくわ、呼吸は不規則になったり、止まったり。

さらに睡眠時無呼吸症候群による低酸素は視神経にダメージを及ぼし、緑内障の一因になるらしいことを石田晋教授(北海道大学)らの研究グループが突き止めた。緑内障は40歳以上の日本人の5%が罹患し、日本人の失明の原因第1位の眼疾患だ。

「驚くほど多様な疾患を招き寄せるので、いびきの放置は禁物です」

まずはセルフチェック。

生活習慣は、このポイントを注視しよう。

  • 夜中に突然、目が覚めることがある。
  • 朝起きたときにすっきりしない日がある。
  • 日中に眠気が強い日がある。
  • 肥満傾向にある。
  • 喉まわりに脂肪が多い。
  • 飲酒の量、頻度が多い。
  • 年齢が高い。
  • 運動習慣が確立できていない。
  • 両親が二人ともいびきをかく。
  • 高血圧の家系だ。
  • 二重顎か、下顎が人より小さい。

1つでも当てはまれば予備軍、2つ以上なら要注意だ。呼吸が止まっている間の血中酸素濃度は、8000m級の高山を登るときに匹敵。これが毎晩ではへとへとです。

顎、口の形からも傾向がわかる。

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いびきをかかない健常者は、大きく口を開ければ気道も口蓋垂もちゃんと見えるはず。気道の入り口が見通せて“風通し”のいい眺め。

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いびきをかく人は舌が肥大し、扁桃腺も腫れ気味で、気道も口蓋垂(のどちんこ)も見えない。脂肪が多く、奥まで狭くなっている可能性が。舌と扁桃が肥大し気道が見通せないいかにも窮屈な口。

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顎のチェックで気道の余裕が推測できる。喉仏と下顎の先端に定規を当てたときに、指1本分の空間があればOK。物をよく嚙まないなどの生活習慣から顎の発達が悪く、顎が小さかったり、二重顎で隙間がないと、気道も狭くなりがち。

いびき対策・3分間トレーニング。

パソコン、スマホに向かってのリモートでは表情が乏しくなりがち。口角泡を飛ばしての議論など遠い昔のエピソードになり、言葉少なく、声は小さく、舌も怠け気味になっている人は多いだろう。

舌は筋肉の塊だ。使わなければ弛緩しやすくなり、睡眠中に気道に落ち込みがちとなる。これを防ぐには就寝前に3分間、本気の筋トレを舌にさせるべし! 動かすことを習慣化すれば、適度な緊張感から、睡眠中も舌には自然な張力が働き、軟口蓋(上顎の軟らかい部分)ともども落ち込みを緩和できるだろう。

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いびき対策トレーニング

できるだけ前に突き出し5秒静止。戻す際は舌先が上の前歯裏に触れたら、軟口蓋まで滑らせる。3セット。

いびき対策トレーニング

口を開き、舌を口蓋全体に押しつけて10秒静止したら下げていき、口腔底に押し当て10秒静止。3セット。

いびき対策トレーニング

口は閉じて頰をできるだけ大きく膨らませて5秒静止したら、すぼめて5秒静止。頰が力むと舌もつられて、力が入る。3セット。

いびき対策トレーニング

口を開き「あーいーうーえーおー」と発声しながら口も表情も大きく動かす。3回。

いびき対策トレーニング

口は閉じたまま、舌で口の中を大きくぐるりと舐め回す。3回。

3分間トレーニングにプラスして…。

① 抱き枕を抱えると安定する横向き寝で舌根沈下を緩和する。

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手足に抱き枕やクッションを挟み、下側の脚は伸ばすと横向き寝が安定する。リュックを背負うのもありだ。過体重・肥満の自覚のある人は左側を下にして眠ろう。

② 快眠へと導いてくれる水先案内人、有酸素運動のススメ。

無呼吸は眠りの浅いレム睡眠時に出やすいので、深睡眠を増やす工夫も改善の一助となる。それには体脂肪燃焼を促す有酸素運動がお勧めだ。これで肥満を解消し、喉まわりの肉が減れば閉塞の度合いも軽くなるはず。昼間の運動で心地よい疲労があれば寝つきやすくなるしね。

治療法としてはこんなものも。

① 下顎を軽く前に突き出してくれるマウスピースで緩和も。

下顎を軽く前に突き出すマウスピースでイビキ緩和も

マウスピースは中程度までの症状に。睡眠時無呼吸症候群と診断されれば一体成型のモノブロック(上)は保険が適用され、1万円程度で注文可能。上下が独立して動く快適なソムノデントは保険適用外で15万円ほど。

② 現時点での最終兵器、CPAPは重症患者にも効果的。

現時点でのいびき対策最終兵器、CPAPは重症患者にも効果。

鼻から空気を送り込むCPAPは、重症の睡眠時無呼吸症候群にも効果の期待できる医療機器。診断のもと保険適用でレンタル利用でき、使用料は月額5000円程度。ただし、定期通院が必要だ。最近では機種がだいぶ増えている。

③ 処方箋なしでもネットで買えるアイテムはたくさん!

処方箋なしでもネットで買えるいびき対策アイテムはたくさん!

一定の効果を期待できそうなお助けグッズはネットで人気だ。鼻腔から気道に垂らすステントや、バッテリー搭載で鼻の穴にセットすると空気を送り込む小型ファンなどもある。“いびき”をキーワードに検索してみよう。出張先などで重宝しそうだ。

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/八重樫王明 取材協力/白濱龍太郎(RESM新横浜院長)、有田博一(有田歯科医院院長)

初出『Tarzan』No.794・2020年8月27日発売

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