猫背はなんで起こるの?

トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第6回は猫背が起こるメカニズムと、筋肉の「硬化・弱化」について。

取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/<a href="/tags/kunihide_saito/">齊藤邦秀</a>(ウェルネススポーツ代表)

初出『Tarzan』No.813・2021年6月24日発売

猫背の理由

猫背が起こるメカニズムを知る。

現代人の約8割を占めるといわれている猫背姿勢。アライメントで示すと、頭部が正常よりも前方に移動した「頭部前方方位」と、胸椎が極端に曲がった「胸椎後弯」が組み合わさった状態をいう。

この猫背状態を放置すると、嚙み合わせパターンの変化による顎関節症、頭痛、肩こり・腰痛といった痛みをはじめ、イライラや不安、めまいといった不定愁訴の原因にもなる。

そこで今回は、猫背のメカニズムを解明し、根本から整える方法について考えていこう。

猫背の別名は「上位交差症候群」。緊張で縮まった筋肉(硬化)と、反対に伸び切った筋肉(弱化)が下のイラストのように交差して現れていることからこう呼ばれている。

上位交差症候群の筋バランス
上位交差症候群の筋バランス。大胸筋・小胸筋、僧帽筋上部が硬化(収縮)し、僧帽筋中部・下部、菱形筋、頸部屈筋群が弱化(伸長)している。

本来筋肉は適度に緊張することで関節を安定させたり、収縮する力を調整してカラダをスムーズに動かせたりするが、生活習慣や日常動作のクセ、あるいは加齢や怪我などによってどこか一部に異常が生じると、筋肉の機能不全が起こる。この“猫背”も筋機能不全の一つだ。

筋肉は、何らかの理由で主動筋(その動きのメインになる筋肉)が収縮し続けると、逆の動きをする拮抗筋は伸び切ったままになる。たとえば、肩が丸まり前屈みの状態でパソコン作業を長時間続けると、胸の筋肉が硬化(緊張)し、その拮抗筋にあたる背中の筋肉が弱化(弛緩)するといった具合だ。

このように、硬化と弱化のアンバランスが長時間になればなるほど、姿勢の悪さは加速していく。

上位交差症候群はまさに上のイラストの通り、大胸筋・小胸筋、僧帽筋上部が硬化(緊張)し、僧帽筋中部・下部、菱形筋、頸部屈筋群が弱化(弛緩)した状態。これを改善するには、硬化した筋の柔軟性を回復することが重要となる。

猫背改善のためのアプローチは?

柔軟性の向上には、温熱療法、マッサージ、ストレッチなどが有効である。ただし、ストレッチで胸の柔軟性が回復したとしても、スマートフォンやパソコンを長時間見る生活習慣が続く限りは、ストレッチの効果を持続させることは難しい。

そこで、硬化した筋肉を緩めるとともに、弱化した筋肉をエクササイズで強化していくことも不可欠となる。以上のことから、上位交差症候群で硬化した筋肉へのアプローチとして有効な手段は、

  • 胸部のストレッチ
  • 鎖骨周辺のマッサージ
  • 僧帽筋上部、首周辺のストレッチ

同時に、弱化した筋肉へのアプローチとして、

  • 広背筋の強化
  • 僧帽筋下部の強化
  • 肩甲骨周辺のストレッチ
  • 顎を首元に引き寄せる動きの強化

などを取り入れるとよい。

エクササイズ例

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エクササイズ例

床にうつ伏せになり、両腕がWになるよう肘を曲げる。背中の筋肉を使って上半身を持ち上げ、同時に肩甲骨を寄せる。10回×3セット。

エクササイズ例

膝を立てて仰向け。タオルを丸めて肩甲骨の下に置き、両手をバンザイして胸をストレッチ。顎を喉に引きつけながら、腕の重みに任せて30〜60秒キープ。腰が床から浮かないよう、お腹に力を入れておくこと。これを3セット。

また、デスクワークが続く場合は定期的な姿勢リセットも大切。骨盤をニュートラルな状態にして座り直し、その上に背骨が乗るイメージで姿勢を正そう。


復習クイズ

猫背の理由

答え:「胸を鍛える」がNG。