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タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
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実は、腰痛のほとんどは原因不明という厄介なもの。けれど日々のまめなケアで、凝りや痛みは驚くほど軽減するのだ。簡単に行える3ステップの対処法を今すぐに!
腰痛の85%は、原因がサッパリわからない「非特異的腰痛」。働き盛り世代が悩んでいる慢性的な腰痛は、この非特異的腰痛だと思ってほぼ間違いない。
今回は非特異的腰痛を3つのタイプに分けて対策を考えてみよう。
1つ目は「リモート腰痛」。在宅勤務で腰痛を訴える人は増えたようだが、それはたぶんリモートワークでじっと坐っている時間が長くなったから。もともと日本人は世界でも、坐っている時間がいちばん長い。それが一層長くなると、骨盤が後傾して腰が丸まりやすく、腰の負担が増えて痛みが出やすい。
腰が痛むメカニズムを踏まえて、股関節に問題があるタイプと、骨盤に問題があるタイプに分けて考えることも大事。まずは股関節タイプ。立って行う運動の大半は股関節の動きを伴っている。坐ってばかりで股関節がサビつくと、腰のストレスが増えて腰痛になりやすい。
次は骨盤タイプ。腰の腰椎と骨盤は、ユニット化している。体重のかけ方や姿勢の乱れなどにより、骨盤のポジションがズレてしまうと、腰椎の自然なカーブが崩れて腰トラブルに直結するのだ。
各タイプとも、リリース、ストレッチ、トリガーポイントの合わせ技で攻略する。
筋肉などを包む筋膜には、腰を支える役割もある。筋膜が萎縮・癒着を起こしたのが、トリガーポイント。全身を走る筋膜のライン上にあり、そこを見つけてほぐすと、腰痛は軽くなりやすい。
胸郭と骨盤の間のコア部分は、背骨以外の骨格がない空白地帯であるため、腹筋群などの筋肉と筋膜で姿勢を保っている。筋膜のなかでも腰痛とことに深く関わっているのが、胸腰筋膜。
胸腰筋膜は、腰部に菱形状に広がり、背中の脊柱起立筋を包む。背中の広背筋、お尻の大臀筋、お腹の腹横筋は、胸腰筋膜を介して骨や靱帯に付く。とくに腹横筋は胸腰筋膜と連続し、コアをコルセットのように取り巻く。腹横筋と胸腰筋膜のコンビがコルセットを締めるように腹圧を高め、腰椎のカーブをキープするのだ。また感覚神経と交感神経は、胸腰筋膜を貫いて腰背部に広がる。
胸腰筋膜が硬くなってトリガーポイントが生じると、関連する筋肉の動きが悪くなり、腹圧が落ち、神経も刺激されて腰痛に陥りやすい。慢性的な腰痛がある人を超音波で調べた研究でも、胸腰筋膜が厚く硬くなっていることがわかっている。胸腰筋膜をはじめとする筋膜のリリースは、腰痛対策の柱の一つなのだ。
腰痛について語るには、腰の作りと動きの仕組みを知っておく必要がある。目を向けたいのは、腰椎、骨盤、股関節だ。腰椎は、背骨の根元にあたる5つの骨の連なり。
真横から見ると、前方にカーブする前彎をしている。腰椎に続く仙骨と尾骨が、左右一対の寛骨と合体したのが、骨盤。骨盤は下半身の土台であり、その両脇にある凹みに、太腿の骨(大腿骨)の丸みを帯びた先端がハマったものが股関節。脚の付け根である。
このように腰椎、骨盤、股関節は一体化しているため、どこかに異常があると、他の部分に悪影響が及ぶ。たとえば、骨盤が前傾しすぎると、腰椎のカーブがきつくなる反り腰となり、反対に後傾しすぎると腰椎のカーブがフラットに近づき、いずれも腰へのダメージとなる。
運動不足などで股関節の可動域が狭くなるのも、腰痛の一因。腰椎、骨盤、股関節には、「腰椎骨盤リズム」という運動パターンがある。これにより、前屈時には、腰椎⇒骨盤⇒股関節の順に曲がり、姿勢を戻すときには、股関節⇒骨盤⇒腰椎の順に伸びる。股関節の動きが悪いと、その分だけ骨盤や腰椎の仕事量が増えるため、疲労から腰痛を招きやすいのだ。
取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/大谷亮治 監修/澤木一貴(SAWAKI GYM)
初出『Tarzan』No.803・2021年1月28日発売