• 実録!『ターザン』編集部員の緊急事態宣言下のトレーニング
TRAINING
2020.07.17

実録!『ターザン』編集部員の緊急事態宣言下のトレーニング

実録!『ターザン』編集部員の緊急事態宣言下のトレーニング

ジムトレーニング歴30年を超える剛腕ライター、ケンジ。新型コロナウイルスでジムが休業のため、自宅にベンチがやってきた!

4月7日(火) |ロックアウト前、名残のジムトレ。

7都府県で緊急事態宣言が発出される公算が高まる。不要不急の外出自粛が求められているし、三密のジムはクローズしそう。

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週末を迎えても街の人出はまばら。感染予防に一人ひとりが努めている証拠。

最後かもと思いつつ、午前中ジムへ。筋トレ40分、ラン60分のルーティンを普段通りにこなす。

夜、安倍首相が緊急事態宣言を発出。期間はゴールデンウィーク明けの5月6日まで。そしてジムトレ歴32年目にして最大の危機。地下鉄サリン事件でも、アメリカ同時多発テロでも、東日本大震災でも、決して起こらなかったことが起こりそう。

4月9日(木)| ほぼ日本中のジムがクローズ。やけ酒。

覚悟していたが、通っている自宅近くのジムもこの日から閉鎖。その夜一人自宅でやけ酒。酔った勢いでどこか開いているジムはないか検索してみる。

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緊急事態宣言により、感染拡大防止のために多くのジムが当面の休館に追い込まれた。

ジムトレのために都道府県を跨いで移動するなんて罪だが、念のために相互利用制度で使えそうな関東近郊の店舗を探す。しかし、緊急事態宣言を受け、相互利用サービスそのものが休止だ。次にホテルのジムなら使えるかもしれないと検索してみるけど、それもやはりクローズ。

往生際が悪く、7都府県以外のホテルのジムなら平気かもと検索範囲を広げても、結果は同じこと。エッセンシャルワーカーが必死に頑張っているのに、自分は一体何をしているのか。我に返って落ち込む。

4月10日(金) |Amazonでフラットベンチ購入。

ジムが閉まっている間、筋肉や心肺機能が落ちないようにするには、家トレするほかない。トレッドミルでのランは、外ランに切り替えればOK。

問題は筋トレだ。そこでクローゼットの奥から取り出したのは、秘蔵のダンベルセット。買って25年以上だが、ほとんど未使用。あまりに汚いのでゴシゴシ洗う。Amazonで探し、5,580円で格安フラットベンチも買う。

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注文翌日に到着したベンチ。下に転がっているのが、秘蔵のIVANKO製のダンベルだ。

4月11日(土)|ラン初日。足の爪下で軽く出血する。

週2回のジムは平日1回+週末1回。平日分はすでに終えたから、緊急事態宣言後初の土曜、午前中ランへ。ホームコースは芝公園。芝公園、増上寺、プリンスホテルの敷地の外周を回ると、約2km。信号が少なく、適度な起伏もあり、ランには最適だ。6年前、初フルマラソンに出る前に練習して以来、久しぶりに走る。驚いたのはランナーの多さ。以前の3倍はいる。運動不足を解消したい気持ちはみんな同じなんだな。

芝公園4周+行き帰りで計9.4km。《Apple Watch》によると、平均心拍数毎分156拍、平均ペースは1km5分41秒。トレッドミルでは時速11km(1km5分27秒)以上でラクに走れるのに、外だとこのありさま。これが実力なのだろう。

ジム用の薄底シューズを外履き用に下ろして走ったら、右足の人差し指がシューズに当たり、爪の下で出血(爪下出血)が起こる。次からは少し厚底のシューズで走ろうかな。

ジムではラン⇒筋トレと一挙に片付けるが、慣れない外ランで疲れすぎて筋トレは翌日曜に持ち越す。

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ややこしいのだが、芝公園には港区立と都立がある。この芝生の多目的広場は港区立側。
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走りやすいのでランナーが急増。初めはマスク姿で走る人はほぼいなかった。

4月12日(日)|初めての自宅筋トレ。勝手が違いすぎた。

ベンチも無事届き、記念すべき自宅筋トレ初日。メニューを考えた。

ジムでは、チェストプレス、レッグプレス、ラットプルダウン、ロウイング、アブドミナルの5種目を行う。このうち背中のラットプルとロウイングは自宅では再現が難しい。他はチェストプレス⇒ダンベルプレス&プッシュアップ、レッグプレス⇒ダンベルスクワット、アブドミナル⇒Vシットという家トレに転換。

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まずはダンベルプレス。ジムでのチェストプレスは75kg×10回×3セットで組んでいる。ダンベルだとその70%ほどの重さが妥当だから、75×0.7=52.5kg、片手なら25kg強だ。ダンベルにプレートをフルで付けると20kg。「軽すぎるな」と思いつつ持った瞬間、「ダメだ!」とわかる。重すぎるのだ。謙虚に減らして片手15kgからスタート。

ダンベルプレスを15回×5セット終えたら、名付けてSAP(サップ)へ。これはスクワット、アブドミナル、プッシュアップの頭文字を取ったものだ。スクワットはダンベル1個を縦に持って15回、Vシットは30回、プッシュアップは20回。これを5セット行うのに30分以上かかる。終わった頃にはヘロヘロ。家トレも手強い。

4月25日(土)|公園の遊具が閉鎖。懸垂ができなくなる。

家トレで困るのは、背中が鍛えにくいこと。背中は力持ちだから、20kg程度のダンベルでは物足りない。

芝公園には、懸垂ができる鉄棒がある。「イザとなったら、あそこで懸垂しよう」と目を付けていたのだが、躊躇するうち、東京都がこの日からステイホーム週間を宣言。鉄棒を含む公園の遊具までロックアウトされて、やりたくても懸垂できなくなる。

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これで懸垂して背中を鍛えようと秘かに目論んでいた鉄棒も、使えなくなってしまう。
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鉄棒などを備えた都立芝公園の体力測定健康歩道全体がロックアウトされた。
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黄色いテープが貼られているだけだが、みんな真面目だから素直に閉鎖に従う。

4月29日(木)|初めてマスク着用でラン。辛すぎる。

シリアスランナーとして知られる京大の山中伸弥教授が、飛沫感染予防の観点から、ラン中もマスク着用を呼びかける。すれ違う際、嫌そうに背中を向ける歩行者も増えたから、遅まきながらマスクランを実践。

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専門家はマスクをしても息苦しくないペースで走るべきだと言うが、後半汗をかくとマスクが濡れて通気性ゼロに近くなり、息ができない。平均ペースは1km6分まで低下。

ゴールデンウィークが始まり、芝公園の芝生の広場には多くの家族連れが集まっていた。

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ステイホーム中の芝生広場は家族連れなどが集い、かなり密な空間に。行政も注意喚起。

4月30日(金)|ダンベルで片手20kg持てるようになる。

6回目にしてこの日初めてプレートをフル装備。片手20kgでダンベルプレスが15回×5セットこなせる。

計算してみた。チェストプレスの75kg×10回×3セットでは、総挙上重量は2250kg。一方、ダンベル両手計40kg×15回×5セットだと3000kg。仕事量的には家トレがジムトレを上回ると知り、満悦。

5月4日(月)|緊急事態宣言が延長。筋肉の衰えを自覚。

悪いニュース。感染終息が見えないため、特定警戒都道府県の緊急事態宣言延長が決まる。やれやれ。

入浴前に裸になると、胸板が12%くらい薄くなったと気づく。脱いで誰かに褒めてほしくて鍛えているわけじゃない。自己管理の一環でトレーニングしているつもりだが、それでもやはり悲しくなる。心理学によれば、人は何かを新たに得る喜びより、得ている何かを失う悲しみを過大評価するらしい。

この日、アメリカではゴールドジムが経営破綻。日本のゴールドに影響はないようだが、これ以上コロナが広がると潰れるジムが出てきてもおかしくない。大胸筋の心配をしている場合ではない。

5月12日(火)|綱の手引き坂を歩かずに走り切る。

芝公園を4周して余力があったので、帰りに綱の手引き坂を上る。全長300mほどの緩やかなスロープだが、チャレンジ3回目で初めて歩かず上り切れて自信になる。ちなみに、この坂は下りでは日向坂と名前を変える。読みは「ひなたざか」ではなく「ひゅうがざか」だよん。

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午後、密を避けて編集者と自宅近くの公園でこのページの打ち合わせ。青空打ち合わせはライター人生初。

5月14日(木)|ダンベルを落とし、気を引き締める。

ダンベルプレス⇒SAPが日常化して油断したのか、ダンベルプレスの4セット目途中で左手のダンベルがコントロール不能になり、床に落とすという痛恨のミスを犯す。気を抜いてはいけないと猛省する。

この日ネットで、アメリカ・フロリダ州でジム再開を求める人びとが、裁判所前でプッシュアップをしながら「筋トレをさせろ、さもなければ殺せ(Give me gains or give me death)」と訴えたという記事を読む。ジムで働く人の雇用確保も求めた抗議だ。それに英国の新聞は「路上でプッシュアップできるなら、ジムは再開しなくて済むのでは?」と皮肉っぽくコメント。わかってないなぁ。

5月20日(水)|体重計に乗る。意外にも痩せていた!

帽子を被らず、日焼け止めも塗らずに外ランを続けていたせいか、日焼けして顔が引き締まって見える。もしかして痩せた? 試しに半年ぶりで体重計に乗ると63kg。以前より約2kg痩せた。喜ぶべきなのか。

ジムでは筋トレ+ラン×週2回だったが、家トレではラン2回+筋トレ2回と週4回に分割した。そもそも筋トレはカラダの合成(同化)を促し、ランは分解(異化)を促す。別々に行ったことで両者の効果が最大化し、体重減少に結びついたのか。それとも単に筋肉が削れただけ?

5月27日(水)|2か月ぶりにジム再開。オープンと同時に行く。

新規感染者が減り、5月25日に政府は緊急事態宣言の解除を決める。東京都は6月1日からジムの休業要請を解く方針だったが、通っているジムはなぜか27日に一足先に開く。

待ちに待ったその日。開店と同時に勇んでジムへ。筋力が落ちたはずなので、以前より重さ控えめでスタート。最終的にはレッグプレスとラットプルダウン以外は、以前とほぼ同じ内容でこなせた。家トレである程度筋肉は維持できていたらしい。筋トレ後、トレッドミルへ。パーティションで1台ずつ仕切られて、感染症対策が施されている。まるで〈一蘭〉でラーメンを食べる気分。

6月3日(水)|ダンベルプレスとランは継続。今後は二刀流。

マスクが市中に溢れ、テイクアウトも定着。ジムライフも戻りつつあるが、ダンベルプレスと外ランは続ける。再度のジム閉鎖に備え、ダンベルトレのスキルと外ランの習慣をキープするためだ。

今日でジムは今年30回目。昨年の同じ時期は42回目だったから、12回分ロストした。でも、その分だけ貴重な学びもあった。ジムトレ+家トレの二刀流でしばらく頑張ろう。

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神隠しのように姿を消したマスクが、4月末以降は近所でも買えるようになってきた。
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食事をテイクアウトで済ませるのも、新しい生活様式としてすっかり定着。

PROFILE
ケンジ
ケンジ/1963年生まれ。平成元年にジムトレを始めて以来、休まず30年以上続ける。ヘルニアでも通い続けたジムライフがコロナで中断。ルーティン崩壊危機を迎えて酒量が増える。

取材・文/Mr.TRAINING(井上健二) イラストレーション/more rock art all

(初出『Tarzan』No.791・2020年7月9日発売)

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