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汗っかきはトマトを食べましょう。不調を健やかに整える“食べる”漢方

その不調はカラダからのメッセージ。毎日の食事で、トラブルは回避できます! 不調の理由と体質改善を促す食材を、国際中医専門員の櫻井大典さんに教わりました。

CONTENTS
  1. 日課のランニング、どうも最近疲れが取れにくいんですけど。
  2. 花粉症を楽にする食べ物ってあるの?
  3. 最近、寝ているときも起きているときも足がつってしまう。
  4. なーんか会社に行きたくないときには。
  5. 周りは平気みたいだけど、 自分だけいつも大汗をかいてしまう。
  6. パソコン仕事が続くと、 どうも目がシバシバする。
  7. 口臭、 体臭が気になる。
  8. ふと気づくと、あらら! 髪が薄くなってきたー。
  9. 張り切ってトレーニングしたら、 筋肉痛がひどい。
  10. お恥ずかしい話、 最近、尿のキレが悪いんです。
  11. 明日はマラソンのレース! なんか緊張して眠れない。
  12. 仕事でも家庭でもすぐイライラしてしまう。

1. 日課のランニング、どうも最近疲れが取れにくいんですけど。

毎日の運動、もちろんカラダにいいことも多いですが、やりすぎると日々、気を消耗してしまいます。

そしてその消耗に補給が追いついていかないのか、そもそも補給量が足りないのか。いずれにしても、疲労が蓄積してしまうことになります。

山芋

おすすめする食材は山芋。気を補ってくれる補気の代表的食材です。お米、サツマイモなども補気の食材ですが、山芋はより滋養効果が高い。

滋養というのは、五臓六腑でいう腎の働きを高めるものです。といっても臓器の腎臓そのものというわけではありません。東洋医学でいう腎とは、エネルギーを蓄える場所であると同時に、成長と発育と生殖を司るすべての機能そのものでもあります。そして、カラダを温める、潤す、排出する。そういった機能を持つ腎を高める働きが滋養なのです。

山芋は山薬とも言われ、漢方でも多数使われる生薬ですが、食べる時の注意点がひとつ。生で食べないこと。ドロドロねばねばした食材は胃腸負担になりやすい。なので、山芋もソテーしたり、すりおろして味噌汁に入れるなどして食べてください。加熱することが大切です

2. 花粉症を楽にする食べ物ってあるの?

漢方では、衛気(えいき)という、カラダを守るエネルギーがウェットスーツのように人体の表面を覆って守ってくれていると考えます。花粉やウイルスはもちろん、気温差や気圧差、大きな音などもこの衛気が侵入を防ぎ、衝撃を緩和してくれ、中身である人体を守ってくれるわけです。

だから、花粉に過剰に反応してしまう人はこの衛気が薄い、もしくは隙間ができているのかもしれない。

衛気を養ってくれるのはもち米です。手っ取り早く食べるにはお餅がいいですね。ただし、食べるタイミングは冬。本来食養生は次の季節のために行うもので、春に発症する花粉症の予防は冬の養生が肝心です。

もち

また、一方でもち米は炎症を悪化させる作用もあります。花粉症で目が充血、鼻水ドロドロなんてときにお餅を食べても症状がひどくなるだけなので、あくまでも冬のうちに食べておきましょう。

冬にあまりお餅を食べてなかった!という人は、衛気を作り出す胃腸のケアをおすすめします。花粉症の期間中はとくに、脂っこいもの、味の濃いもの、甘いもの、冷たいものはできる限り減らすこと。これだけでも楽に過ごせるようになります。

3. 最近、寝ているときも起きているときも足がつってしまう。

人間のカラダは気・血・水という3つの要素から成り立っています。気は生命を維持して活動させるエネルギーの源で、カラダを温めたり、血液や体液を巡らせて五臓六腑の正常な活動を促します。血は血液のことで、各組織を活性化させます。そして水は、血液以外の体液を指し、体内を循環し潤す働きを持ちます。

足がつる、というのは、この気血水のうち、血が不足している状態と考えます。血が不足すると、筋肉や組織に必要な栄養が届かず、さまざまな不調が表れるのです。

こういう場合は豚肉を食べましょう。豚肉には、血を増やす補血の力があり、カラダを潤す働きもあります。野菜と一緒に炒めたり、豚汁にしたりと調理もしやすく、どこにでも売っているという意味でもとても優秀な食材です。

豚肉

さらに、湿気や寒さの影響で気血の循環が悪化して足がつる場合もあります。冷えを撃退する生姜を使って、豚肉の生姜焼きにするとより効果的かもしれません。

そして、物理的に足を冷やすことも避けたいですね。体力に自信があっても、冬場、春先の短パン素足は避けるようにしてください。

4. なーんか会社に行きたくないときには。

会社に行きたくない理由はなんでしょう? ひょっとして疲れが溜まっていてカラダが悲鳴を上げているようなら、血を補う必要があります。はい、3で推奨した豚肉もいいし、赤身のカツオなども効果的。

一方、ストレスフルな毎日が原因なら、肝にダメージを受けている可能性があります。肝は気の流れを整え、自律神経系を調節する働きがあるので、損なわれると情緒不安定、動悸、高血圧、と心身ともに不安定な症状を引き起こします。

その肝の働きを助けてくれるのが、今が盛りの柑橘類。これら香りのいいものは気を巡らせ、その流れを整えてくれます。シンプルに、柑橘類を食べるだけでいいですが、大切なのは、しっかり香りを感じること。柑橘だからと缶詰を食べるのでは効果はあまり期待できません。

ミカンとカツオ

ストレスがあるとき人はその対象に意識をフォーカスしてしまいます。でもたとえば、仕事帰りにふと通りがかったパン屋さんの店先で焼きたてのいい香りに惹かれることがあったとします。その瞬間、意識はそちらに逸れます。

「気を巡らせる」というのはそういうこと。いい香りは気分を柔らかくほぐしてくれるのです。

5. 周りは平気みたいだけど、 自分だけいつも大汗をかいてしまう。

これも、汗が出る理由によって、摂るべき食材が違います。

発汗は体質によるところも大きいですが、カラダに熱がこもっているから発散させようとしてかく汗の場合、まず余分な熱を発生させる食材を摂らないことです。つまり、お酒は飲まない、辛いものは控えるなどの努力が必要です。

そのうえで摂りたいのはトマトキュウリなど余分な熱を冷ましてくれる食材です。こういった清熱の作用を持つ食材の旬は真夏。季節の食養生は旬の素材を摂ることから始まりますが、まさにそれが実感できる組み合わせです。

トマトと赤飯

疲労感が強くて汗がだらだら出る場合は、2でお話しした衛気が関係してきます。衛気は毛穴を開けたり閉じたりする力があり、発汗の場合、閉じる力が弱ければ毛穴が開きっぱなしで汗も流れ出てしまう。カラダが熱っぽくもなく、むしろ冷え性なのに汗がだらだら出てしまう人は衛気を養うために、もち米を食べてください。

コンビニエンスストアで売っている赤飯おにぎりも優秀です。小豆には利水の働きがあり、体内の水捌けをよくし、カラダに悪さする余分なものを排出してくれます。

6. パソコン仕事が続くと、 どうも目がシバシバする。

一日中パソコンに向かっていたり、スマホを見てばかりという人が増え、現代人の目の疲れは深刻です。目の周囲の筋肉も疲労して、血行不良を起こし、栄養や潤いが行き渡らなくなっている状態の人も多いようです。

そんなときは、クコの実一択。漢方薬に「飲む目薬」と言われる処方がありますが、その主成分となる生薬がクコの実。目を元気にする、目の働きを養う食材なんですね。

クコの実

目を使いすぎることは、人体を構成する気血水のうち、血を損なうことに繫がります。血は肝に蓄えられますが、不足すると、肝は栄養不足に陥ってしまう。クコの実は、効果的に肝と腎の力を養い、目の疲労を回復してくれます。

1日にひとつかみほど、少なくとも5グラムくらいを食べると効果的です。じんわりと甘いドライフルーツですので、千切りしたニンジンに軽く塩をして水気を切ってから、オリーブオイルといっしょに和えるとおいしいサラダになります。

7. 口臭、 体臭が気になる。

肥甘厚味」と言いますが、脂っこくて、甘い、味の濃いものを摂りすぎると体内に不要なものが蓄積されます。それらが熱を帯び、湿気を呼び込んで、体重増加や口臭を引き起こします。

漢方では、カラダから出るにおいや分泌物は熱が原因だと考えます。熱はカラダを温めもしますが、興奮させる作用もあるので、イライラしたりのぼせたり、食欲が異常に高まったりすることもある。

よくあるパターンが、40〜50代の男性で、肉食って酒飲んでガンガン仕事してというバイタリティ溢れるタイプ。これは熱がこもった状態で、高血圧、脂質異常症、高コレステロールでどろどろしたものが体内に溜まっていたりすることも多いのですが、すべてこれ、食生活の結果です。

こんにゃく

まずこれまでの食事の内容を見直し、さらに、溜まってしまった湿気と熱をどう取っていくか。

体内の不要物を排出すると同時にクールダウンしてくれる食材としては、セロリ緑豆もやしなど。あと、こんにゃくは強力な解毒作用があり、胃にこもった熱を出してくれます。おでんを食べるなら、ウィンナーよりこんにゃく。ひとつずつ食養生を積み重ねていきましょう。

8. ふと気づくと、あらら! 髪が薄くなってきたー。

古来、髪は「血余」と言って、血が十分でないと髪の毛になりません。ですので、薄毛の初期段階としては、まず血を補うことが大切です。

推奨したいのは、黒い食材。黒ゴマ黒豆黒キクラゲ。あとは赤いもの、レバーやニンジン、イチゴなどもいいです。黒いものと赤いものは、血虚(けっきょ)といって血が足りない状態のときに力を発揮してくれますから。

黒ゴマ

とくに黒ゴマは何にかけても味があまり変わらないので、小瓶に移し替えて持ち歩く「マイ黒ゴマ」もおすすめです。

また、「髪は腎の華」とも言われます。生命のタンク、成長や生殖を司る腎が元気なら、また髪の毛も健康であるということ。

腎をいたわることは、老化現象のひとつである薄毛解消に繫がる道なのです。そういった意味でも、黒ゴマは血を補うと同時に、腎機能を強化する補腎作用もあるので、ダブルの効果で髪の悩みに応えてくれる強い味方となりうるのです。

9. 張り切ってトレーニングしたら、 筋肉痛がひどい。

漢方では、血が足りないと痛みが起きやすいと捉えます。つまり筋肉痛は血が不足している状態といえます。血は、細胞の元でもあるし、その栄養にもなる。ゆえに、細胞や筋肉の回復を促すためにも血をしっかり補いましょう。

筋肉を作るタンパク質で優秀な補血食材に、マグロがあります。生食はカラダを冷やしてしまうので、マグロステーキはいかがでしょうか? ゴマ油で焼いて、塩胡椒だけでもおいしいし、ニンニクや醬油で風味付けするとさらに食欲をそそります。魚を焼くのが面倒ならばいっそツナ缶でも問題ありません

マグロ

さて、お気づきの方もいるかと思いますが、3のトラブル「足がつりやすい」と筋肉痛の食べる処方はどちらも補血の働きを持つ食材です。つまり3と9の食材は交換可能です。また、カツオなども血を補う食材ですから、筋肉痛のときにはこれらのタンパク質をメインの一皿にするといいと思います。

10. お恥ずかしい話、 最近、尿のキレが悪いんです。

これもやはり、若さの源である腎の弱りに原因があります。腎は単純に膀胱系と繫がりがあり、排尿のコントロールもその働きのひとつ。加齢によって腎が弱り、その働きが失われてきたのかもしれません。

さらに、もうひとつの要因は括約筋にあります。括約筋は肛門や尿道の周囲にある環状の筋肉で、その弛緩と収縮で排泄をコントロールします。この筋肉が弱ると、気持ちのいいキレは彼方へ、ちょろちょろと勢いのない排尿となってしまいます。

きのこ

また、筋肉は消化器系の機能を司る脾(胃腸、脾臓)によって養われる関係でもあるので、食養生ができていない可能性も。肥甘厚味を好む人もこのトラブルを抱えている人が多いかもしれません。つまり、加齢か胃腸機能の低下が尿のキレに関係しているのです。

この場合は、腎を養う補腎の食材で、さらに利尿作用を持ったきのこ類をおすすめします。体内の余分なものを強力に排出してくれ、補気の働きもあるので、元気も与えてくれます。量はちょっと多めに食べることを意識しましょう。おやつなら手軽な甘栗を。実はほとんどの木の実に補腎の力があります。

11. 明日はマラソンのレース! なんか緊張して眠れない。

マラソンのレース前日、仕事でのプレゼンの前夜。準備万端、しっかり備えていてもどうにも頭が冴えて眠れない。羊を数千匹数えても効果がないときにはどうするか?

まずは、昂って興奮状態にある神経を静かに落ち着かせ、安定させる必要があります。

おすすめの食材は、煎り銀杏百合根。どちらにも安神効果といって、精神を安定させ、落ち着かせる働きがあります。

銀杏

ただ、銀杏はパワーが強いので食べすぎないこと。一回に3つ4つが限度だと心得てください。自分で料理したことがない人も多いかもしれませんが、百合根はフォイル焼きにすればすぐに食べることができます。ほっくりとして甘さが増しますし、ひとつ丸ごと食べても問題ありません。

ストレスなど、精神疲労から来る不眠や、気分の落ち込みも解消してくれる優秀な食材なので、スーパーで見かけたら試してみてください。

12. 仕事でも家庭でもすぐイライラしてしまう。

漫画で、頭から湯気を盛大に出している人を見たら、ああ、この人はイライラ、カッカしているのだとわかります。怒りは肝から発し、瞬間的に沸騰し、熱が火となって燃え上がります。漢方ではその原因を気の不足や滞りにあると考えます。

気の巡りは肝によって調節されますが、肝はストレスのクッションのような働きもするため、ダメージが重なるとその働きも弱っていきます。

ハーブティー

そんなとき、肝の働きをサポートしてくれるのは香りのいいものです。食材でいえば、柑橘類もいいですし、家で落ち着いた時間が過ごせるようでしたら、ミントなどのハーブティーがおすすめです。

ハーブをポットに入れてお湯を注ぐだけ(ちなみにミントはスーパーの野菜売り場で売っています)。香りを胸いっぱいに吸い込んで、気を十分巡らせてください。イライラや怒りの原因に気を集中させないことが重要です。

構成・取材・文/太田佑子 イラストレーション/佐々木一澄 撮影/谷尚樹 取材協力/櫻井大典

初出『Tarzan』No.783・2020年3月12日

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