ただの肩こりと思ったら…ほんとは怖い「症候性肩こり」

「肩こり」だと思っているその不調。実は深刻な病気が隠れているかもしれません。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/安ヶ平正哉 取材協力・監修/平尾雄二郎(都立広尾病院整形外科医長) 参考資料/『図解 専門医が教えてくれる! 腰痛を自分で治す! 最新治療と予防法』

初出『Tarzan』No.780・2020年1月23日発売

肩こりなんかで病院に行くのは気が引ける。どんなに肩がズーンと痛んでも、多少ビリビリ痺れても所詮は肩こり、病気じゃあるまいし。

では、肩こりという状態が医学的にグルーピングされていることをご存じだろうか。その内訳は本態性、心因性、症候性という3つの括りに分類される。

1. 本態性肩こり

とくに病気の背景がない、一般的な肩こりがこれに当たる。考えられる原因は、不良姿勢、長時間のデスクワーク、運動不足による筋力低下、過労、寒い環境、加齢、睡眠不足などなど。

症候性肩こり

肩周辺の血流が滞り、発痛物質が蓄積して痛みが生じる。あるいは筋肉が過度のストレスを受けて興奮し、筋膜上の神経を介して交感神経が刺激され、さらなる緊張や凝りが生じると考えられている。

肩こりの症状が出やすい部位は、重い頭を支えたり肩関節や肩甲骨の運動に関わる僧帽筋。正しい姿勢をとる、マッサージの施術を受ける、運動を取り入れる、といった対策によって多くは症状が改善する。

2. 心因性肩こり

プレゼンの前、取引先との会食、仕事の締め切り、上司からのしっ責。これらの状況下では、無意識に肩に力が入ってしまうもの。

一時的なものであれば問題ないが、過剰なストレスがかかり続けることで交感神経が優位な状態が定常化する。すると、末梢の血管が収縮して血流が滞りがちに。これを解消しないまま常に肩に力みがあると、より筋肉がガチガチに固まり、発痛物質の温床になってしまう。これがストレスによる心因性肩こり。

症候性肩こり

几帳面な人、責任感の強い人、ストレスをうまく発散できない人、悩みや不安を常に抱えている人などが陥りやすい。ストレスリリースが最大の対策。

3. 症候性肩こり

背景に病気が潜んでいる肩こりがこのグループ。狭心症や肺の腫瘍、消化器疾患といった内科的な病気や整形外科的な病気、または眼精疲労や頭痛などが原因で、凝りや痛みの症状が起こる。

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頸椎椎間板ヘルニア
24個の椎体で組み上げられている脊椎のうち、7つの頸椎で起こる。椎体の間でクッション役を果たす椎間板の髄核が後方に飛び出し、神経や脊髄を圧迫。頸椎を後方に反らせると首、肩、腕に痺れが生じる。
肩腱板損傷
肩を覆う三角筋の深部にある腱の複合体、腱板が加齢やケガによって切れてしまう疾患。強い痛みが特徴で自力で腕を上げることができなくなる。四十肩と見分けるのが難しい場合もある。
四十肩
正式名称は肩関節周囲炎。詳しい原因は不明だが、肩関節を構成する骨、靱帯、腱などが老化によって劣化、周辺に炎症が起こって痛みが生じると考えられている。夜間にズキズキと激しい痛みを感じることも。
頸椎症性神経根症
加齢による椎間板の変形によって背骨が棘のように尖り、脊髄から分岐する神経根が圧迫されてしまう病気。手の指や腕に痺れを感じたり、肩甲骨周囲に耐えられないような痛みが生じるなど症状はさまざま。
胸郭出口症候群
首の斜角筋の間、鎖骨と肋骨の間、小胸筋と肋骨の間で腕の神経の束が圧迫される病気。電車の吊り革に摑まるときなど、腕を上げる動作をしたときに上肢の痺れ、肩、腕に痛みが生じる。

正しい姿勢に矯正したり、運動しても凝りや痛みが改善しない。あるいは首をちょっと動かしただけで肩周辺が痛む。肩や腕がビリビリ痺れる。肩全体が凝るのではなく、特定の部位だけに違和感がある。1か月以上痛みが続き、だんだん痛みが強くなる。こうした症状が見られたときは症候性肩こりが疑われる。

上記イラストのような整形外科的な病気は、セルフケアやマッサージではもちろん治らない。医師の元へ。