• 食生活裁判・傍聴記:白飯がどうしてもやめられない件について
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2020.01.14

食生活裁判・傍聴記:白飯がどうしてもやめられない件について

内臓脂肪

今から裁かれる被告は、ひょっとしてあなたの分身かもしれない。

ここは、内臓脂肪管轄・食生活支部「やめられない裁判」専門の裁判所法廷。早速、傍聴してみることにしよう。今から裁かれる被告は、ひょっとしてあなたの分身かもしれない。胸に手を当てて読まれたし。

被告A. 白飯がやめられない

裁判長 白飯がやめられないという検察官の起訴状の内容に間違いありませんか?

被告A はい…。子どもの頃から白飯が好きで好きで、おにぎりをおかずにごはんを食べるくらいの人生を送ってきました。

内臓脂肪

裁判長 それは、なかなかの傍若無人ぶりですね。

被告A でも、米は日本人の魂ですよね? それに、パンみたいに油も使われていないからヘルシーだと思うんです。

裁判長 あなたは、白飯を食べ過ぎて血糖値が急激に上がると、中性脂肪が合成されてしまうことを知っていますか?

検事 裁判長、被告人はランチを食べるとき、いきなり白飯に食らいついていたという定食屋のおかみさんからの証言を得ています。見てください。これがそのときの血糖値の上昇を示したグラフです! これではインスリンが大量に分泌され、内臓脂肪として合成されてしまうのは一目瞭然です!

弁護士 異議あり! それは半年前の情報です。最近では被告人は野菜から口にしていると、2か月前から頻繁に通っている別の定食屋の店主から証言を得ています!

裁判長 被告人、それは本当のことですか?

被告A はい。もう、ひと口目は千切りキャベツをワシワシと。

検事 それは分かっています。しかし問題は食べるスピードです。現場検証で被告人が山盛りキャベツを食べる時間を計測してみました。その結果は、秒数にしてなんと9.5秒です!

弁護士 なんですって!? ボルトより速いなんて…。

被告A すみません。検事さんに2か月前のキャベツスピードを再現してみろと言われて、つい。

ベジファースト
キャベツのサラダを食べてからごはんを食べたグループは、ごはん→サラダの順番で食べたグループより血糖値が上がりにくい。つまりインスリンの分泌も緩やか。これがベジファーストが太りにくいとされる理由。
糖尿病:53, 2, 96-101, 2010

検事 ベジファーストで食べると糖質の吸収スピードが遅くなるというのは事実です。とはいえ、こんな調子でやっつけで食べていては意味がありません。

裁判長 検察官、詳しく説明してください。

検事 はい。ベジファーストのメリットは野菜に含まれる食物繊維が糖質の吸収スピードを遅くすることがひとつ。もうひとつは繊維質をしっかり嚙むことで脳から分泌されるヒスタミンにあります。ヒスタミンは脳の満腹中枢を刺激するので、食べ過ぎを防ぐことができます。

被告A ええっ、私、キャベツを食べるだけでは全然満腹感が得られませんでしたけど…。

検事 被告人は“やっつけ食べ”だからです。満腹中枢が刺激される前にキャベツを食べ切ってしまい、結局普通に食事をするときと同じように白飯が進んでしまいます。ヒスタミンにはもうひとつの作用があり、満腹中枢を介して交感神経を活性化し内臓脂肪を分解することが分かっています。

裁判長 なるほど、被告人はベジファーストを実践しながら、みすみすヒスタミンの効果を逃していたわけですね。

弁護士 異議あり! 被告人に問います! あなたは1か月前、某有名会席料理店で会席料理デビューをしていますね?

検事 裁判長、本件とは関わりのない質問です!

裁判長 弁護人は質問の趣旨を説明するように。

弁護士 はい。ご存じのように会席料理は“先付”、少量の炭水化物の“お凌ぎ”、“お椀”、魚料理の“向付”、肴の盛り合わせの“八寸”、“焼き物”、“炊き合わせ”、“ごはん”、“水菓子”という順番で食します。つまり、被告人が大好きな白飯が食事をスタートさせてからかなり後で出てくることになります。

被告A はぁ、長い道のりでした。ごはんが出てくる頃にはおなかいっぱいになって、ちょっとの量しか食べられませんでした。

弁護士 そうです。被告人はこの経験で生まれて初めて150〜200gというごはんの適量を理解したのです! 今では徐々にですが、ゆっくり嚙んで食べる習慣も身につきつつあります!

被告A てへへ。ちょっとずつですけど。

咀嚼によって脳の咀嚼中枢が活性化
咀嚼によって脳の咀嚼中枢が活性化。これによってヒスタミンが分泌され、満腹中枢が刺激される。さらに、交感神経中枢が刺激されて内臓脂肪が分解されるという仕組み。

弁護士 最近では白飯にちょっとだけ玄米を混入することもあり、平均咀嚼回数は21回にも増えたのです。ここに証拠を提出します!

検事 うぬ。回数をいちいち数えたのか…。

裁判長 被告人、それは間違いありませんか?

被告A はい、この間は嚙みすぎて顎が筋肉痛になりました。

裁判長 では、判決を申し渡します。被告人は無罪!

被告A うわぁ、ありがとうございます〜!

裁判長 ただし、今後は最初に食べる野菜は2〜3分かけてゆっくりと。玄米や雑穀米も積極的に取り入れるようにしてください。以上、閉廷とします!

総括:食べる量とスピード、咀嚼の重要性が焦点に。

白飯を食べることは罪ではない。多すぎる白飯をよく嚙まずにかき込むことが、内臓脂肪を増やす大因となる。さらに、誤ったベジファーストを行っても意味がないことを証明した事件であった。

取材・文/石飛カノ 撮影/小川朋央 イラストレーション/森拓馬 取材協力/石川三知 (管理栄養士、Office LAC-U) 料理・スタイリング/近藤幸子(料理研究家、管理栄養士)

初出『Tarzan』No.779・2020年1月4日発売

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