美人トレーナーとガチ検証! 「尻文字」で下半身トレはできるのか?
楽しみながらも、しっかりと大筋群に効かせられる筋トレはないか? という発想のもと「尻文字」を検証しました。冗談? いえ、本気です。
取材・文/黒田創 撮影/角戸菜摘
目次
楽しめるエクササイズ。尻文字はどうだろう。
もう肌を見せる季節じゃないし、トレーニングのモチベーションが下がり気味という人も多いと思う。しかし、ちょっと待ってほしい。トレーニングは継続してナンボ。
その努力が貴男(アナタ)の、そして貴女(アナタ)のボディを常にいい感じに仕上げる訳で、トレーニングにシーズン・オフはないと『ターザン』は考えるのだ。
「でも、いつも同じようなメニューだとやる気が出ないよ」
それも一理ある。ならば遊び感覚でできて、かつ効果を得られるエクササイズはないものか…。ライター・クロダのない知恵を絞ってふと閃いた。
「尻文字はどうだろう」
自らの尻を動かし、空中で筆跡をなぞる尻文字。
飲み会の一芸としてやった経験を持つ人もいるだろう。しかし視点を変えてみれば、これほど尻を動かせるエクササイズもない。
尻は大きな筋肉だから鍛えれば自然と全身の代謝も上がるし、部屋でも簡単にできる。
ヒップの専門家、宮河マヤさんにお願いしてみた。
“尻”となると実践と指導をお願いするのはこの人しかいない。バックラインスタイリストの肩書を持つフィットネスモデル・プロダイエットアドバイザーの宮河マヤさんだ。過去に『ターザン』でトレーニング監修をお願いしたこともある。
約28万人のフォロワーを持つインスタ(@maya_m0901)で公開されている見事なヒップラインとトレーニング動画をぜひご覧いただきたい。彼女の美尻にかけるパッションをビンビンに感じることができる。
「果たして尻文字の企画を受けてもらえるか…」とダメ元でオファーしたところ、「とりあえず話だけでも聞きましょう」と撮影スタジオにやって来てくれた。
念のために確認しておくが、こちらにやましい気持ちは全くない。いや、ホントに。その点だけ、重々ご承知おき願いたい。
そして尻文字トレの撮影当日。
「こんにちは、宮河マヤです。…今回、本当に『ターザン』からの依頼なのか、何度か確認しました。ちょっと、ふざけましたよね?」
とんでもない! いたって大真面目です。尻で文字をちゃんと書こうとすると、大きく、時には小刻みに尻を動かしますよね? ね? これって立派な尻トレになると思うんですよ。その辺りを検証しながらご指導いただきたくて!
「う~ん…、普通にスクワットとかランジで鍛えるのではダメなんですか?」
いえいえ! “楽しみながらトレーニング”がコンセプトですから!
「まあ、確かにそうかも? “ひらがな”であれば簡単そうだし、何より飽きなさそう」
ですよね! ね! じゃあ早速やってみましょう!!
これが尻文字の基本フォームだ!
「いくら尻文字でも、いや尻文字だからこそ、テキトーにやってはお尻に効きませんよ。トレーニングにする以上はフォームが肝心。文字を書く前にそこから押さえておきましょう」と宮河さん。
尻文字にフォームなんて関係あります?
「お尻に確実に刺激を入れたいなら、ある程度足を広げて腰を落としたスクワット姿勢でやらないと、お尻ではなく太腿に刺激が入ってしまう。あと、基本的につま先は広げるようにしましょう。これだけでも自然とお尻を使うようになります」
詳しくは下の通り。尻で書く文字にもちゃんとお作法があるんです。そう、まるで習字のように。
尻文字の基本フォーム(正面)
背すじを伸ばして手を頭の後ろで組み、足をやや広く開いてつま先を外側へ向ける。そのまま腰を落として膝を曲げ、スクワットポジションに。足の幅は文字によって狭めたり広げてもOK。
とりあえず、つま先は常に外向きにしておくこと。筆順次第では常にこのフォームになるとは限らないが、とりあえずはこれをベースに。
「ひらがなは左から右に向かう動きがほとんどなので、ひと文字書き終わったら、逆さ文字(鏡に映した状態の文字)も書いてみましょう。これで動作も、使う筋肉も左右のバランスが取れるはずです」(宮河さん)
尻文字の基本フォーム(横)
フォームを横から見るとこう。膝と腰の角度は基本90度だが、もう少し緩くしてもOK。必ず尻を突き出すようにし、膝がつま先より前に出ないよう意識すること。このポジショニングが尻文字をより効果的なトレーニングに生まれ変わらせる。
尻文字フォームの要点をまとめると…
- 背筋は常に伸ばして行う。
- つま先は外側に向ける。
- 足幅は文字によって臨機応変に。
- 必ずお尻を突き出すように行う。
- 膝がつま先より前に出ないように。
- ひと文字書いたら逆さ文字も。
イージーな文字から試してみよう。
基本のフォームを押さえたら、いよいよ本番。「まずは簡単そうな文字からやってみましょう」と宮河さん。
「ひらがなの中でもひと筆で書ける文字はきっと簡単なはず。という訳で“ひ”と“く”、あとは“へ”を試してみましょうか?」
「ひ」を尻文字で書く。
「お尻をやや左側に寄せた状態からスタート。少し右側にキュッとはねたら、そのままお尻をゆっくり大きく左下に落とし、滑らかな動きで円を描きながら上へ。最後はもう一度右側にキュッとはねてフィニッシュです。
中臀筋、大臀筋をしっかり使うので尻トレとしてはすごくよく出来ていますね。ついでにハムストリングスにも効きます。1回終わったら逆さ文字を書くのもお忘れなく」(宮河さん)
最初は半信半疑だった宮河さんだが、意外なほどの効果に驚いている様子。こう言ってはなんだが、本当に効果があるとは、発案したこちらもビックリです…。
最初は少し恥ずかしいかもしれないが、思い切って大きな動きでやらないと尻に確実に効かせられない。尻文字トレは開き直りが大事なのだ!
「く」を尻文字で書く。
「本来の字の形は縦方向の動きですが、左右に大きく書くよう意識しましょう。足を開き、ゆっくりと重心を左に移しつつ右膝を伸ばし、左下に尻を下げる。この時左膝は少し曲げる程度。
次に右膝をしっかり曲げながら右側に重心を移し、左脚をしっかりと伸ばしていく。これでお尻とハムストリングス、内転筋、外転筋を刺激できます」(宮河さん)
足幅をしっかり広げてつま先を外側に向けないと、ふくらはぎや足首周りに負荷がかかってしまう。スタンスとつま先の向きに注意しよう!
「へ」を尻文字で書く。
「足を大きく横に広げて立ち、左側にお尻を突き出した姿勢がファーストポジション。次にお尻をキュッと振って正面に移したら、今度は右膝を斜め右に向けて曲げ、腰をしっかり落としつつ左脚を伸ばしていく。
バランスを崩しやすいので、手は頭の後ろじゃなくても構いません。中臀筋、大臀筋ともにしっかり使うことができます。最初にお尻を正面に移す際、お尻を意識的に締めることで、さらに刺激を入れることができますよ」(宮河さん)
文字はシンプルだけど左右に大きく動くし、膝の曲げ伸ばしとカラダの上下運動もあるので意外と高負荷。ハッキリ言って、効きます。
「“ひ”、“く”、“へ”。文字自体は簡単だけど、実際にやってみるとフォームによって効きどころが全く変わりますね。足のスタンスとつま先の向きを意識して、しっかり大きく動くこと。これがお尻に効かせる一番のコツです。
あとは“し”や“つ”、“の”などもやってみると面白いと思いますよ!」(宮河さん)
シンプルなひらがなを試し終わった頃には、宮河さんも俄然ノリノリである。それほど尻文字がトレーニングとして効果的ということ。
この勢いで複雑なひらがなも行ってみよう!
複雑な“ひらがな”にも挑戦!
続いては難しいひらがなの尻文字を。再びじっとひらがな表を眺める宮河さん。やがて「うん、これだ!」と閃いた様子。
「“ぬ”と“ほ”、そして“ん”と“る”。この4文字で行きましょう」
そのココロは?
「“ぬ”と“ほ”、そして“る”は細かい動きが比較的多めで、どれも最後に小さな円を描く。これは普段なかなかやらない動きで難しいと思う」
なるほど、でも“ん”が入っているのはナゼ?
「まず上から下へ大きくしゃがむ動きがあって、そこから小さな波を打つようにフィニッシュまで持っていく。簡単そうに見えて、尻文字でやると実は複雑な作りなんです」
「ぬ」を尻文字で書く。
「足を肩幅よりやや広めに開いた姿勢からスタート。最初の上→右下の斜め線は尻を完全に沈めずにハーフスクワットの要領で書き、そのまま尻を右上に持って行ってから円運動へと移ります。
左側へ大きく弧を描き、そのまま右に横移動して大きな円を書きましょう。最後は小さな円をクルっと書いてフィニッシュ。お尻をしっかり押し出して、大げさなくらい横に大きく動かすと、中臀筋を中心にしっかり効かせられます」(宮河さん)
円運動は特にやる機会がないし、動きが動きだけに恥ずかしさもあると思うけど、これこそ開き直ってガチでやりたい文字。宮河さんの言う通り、大きく動いてこそ効果を感じられるはず。
「ほ」を尻文字で書く。
「まずはお尻を上から下へシュッと下ろす。そのまま“はね”の流れで上に戻り、上側の横線、下の横線を小刻みに尻を動かしながら書く。最後は再び縦線を書いてからのクルっと小さな丸。
スクワットを2回やる形になるから大臀筋とハムストリングスに効くし、2本横線を書く時に、特に中殿筋を使う。最後の丸は後ろにお尻を突き出すようにして描くと、大臀筋と中臀筋を効果的に鍛えられます。
最後は中臀筋でキュッと止めます」(宮河さん)
これは思った以上に複雑で難しい動き! でも中臀筋に大臀筋、ハムストリングスとまんべんなく鍛えられるので効果抜群!
「ん」を尻文字で書く。
「スタンスを広くし、骨盤を前傾気味にした姿勢から始めます。まず左膝を曲げながら尻を左下に落とし、右脚をしっかり伸ばします。そこから中腰姿勢で波線を描きましょう。
このとき尻を後ろに大きく突き出して、ウネウネと滑らかに動かすのがポイント。簡単そうに見えてかなり臀筋を駆使できますよ! これはキツい!」(宮河さん)
サイドランジからの、中腰になって波線を描く時の姿勢が下半身全体にキますね。確かに奥が深いひらがなです。
「る」を尻文字で書く。
「これも広めのスタンスから始めます。重心をやや左よりにした状態から、右側にキュッとキレ良く動かして横線を書き、すかさず左膝を曲げながら左下に移動。
そのままゆっくりと右への円運動、そして最後の小さな丸でトメに入ります。これはサイドランジを2度行う形になるので難易度が高め。やはり円運動は大きく動きましょう。中臀筋、大臀筋ともにしっかり刺激を入れられます。慣れてくるとかなり楽しいですね!」(宮河さん)
サイドへの動きとキュキュッとした鋭角な動き、さらに円運動がミックスされた、ひと筆書きながらこれまた難易度の高い文字!
まずは週2でチャレンジしてみよう!
実践するとわかるが、文字をちゃんと書こうとすると自然とお尻を後ろに突き出す形になるし、円を描く動きは主に大臀筋が、文字のトメや最後の小さな丸など細かい動きは中臀筋が使われるのがよくわかるはず。
具体的にカラダをどう変えてくれそうかを聞いてみると、「お尻の丸みを作るだけではなく、キュッと引き上がり、太ももも引き締まります。大きな筋肉をしっかり使ってあげることで、燃焼しやすいカラダも手に入ります」と宮河さんからお墨付きをもらうこともできた。
ちなみに一番負荷が高いと思ったのは“ん”で、「動きの上下左右が激しく、個人的には難しく感じました(笑)」とのこと。楽しくお尻を鍛えたい人以外でも、普段のトレーニングにマンネリを感じている人にはぜひ試してもらいたい。
最後に、この記事を読んで尻文字をしたくなった人にオススメのプログラムは下記の通り。
「尻文字のトレーニングは、いろんな工夫ができると思います。例えば、
- 週2日で『ん』を1日10回×3セット行う。
- 好きなひらがな3文字を各種類10回ずつ描く。
- その日起きたことを日記のように描く(例・まさか たーざんで しりもじとは)。
などなど。自分が楽しめて、続けられるやり方を見つけてみてほしいです!」(宮河さん)
今回は全部で7文字やってみたけど、50音全部やってみると、それぞれの効きどころが見えてくるはずだ。もちろん同じ文字を繰り返してもOK。ひと文字やったら逆さ文字でもやって左右バランスをとるのをお忘れなく!