• ラグビー日本代表は、この選手に刮目せよ! ポジション別に驚異の身体能力を解説
COLUMN
2019.09.20

ラグビー日本代表は、この選手に刮目せよ! ポジション別に驚異の身体能力を解説

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ラグビーのポジションごとに注目の日本代表選手たちをピックアップ。彼らの肉体と身体能力の凄さを、トレーナー菅原順二さんの解説とともにひもとく。

ポジションごとに“体型”や“仕事”が違う。

ラグビーのポジションは大きく2つ、前方8人のフォワードと後方7人のバックスに分けられる。

まずスクラムを組むフォワード8人は、相手と直接組み合うフッカー、両プロップの3人が「フロントロー」、後ろで支える2人のロックが「セカンドロー」、最後列で押し込む両フランカーとナンバーエイトの3人が「バックロー」となる。

ラグビーのポジション

そしてバックスはスクラムハーフとスタンドオフで構成される「ハーフバック」、両ウィング&センターの4人が「スリークォーターバック」、最後尾1人が「フルバック」。フォワードがフィジカルで相手を押し込み、バックスが主に攻撃を組み立てたりフィニッシュに絡む。

ボールを前に投げられないラグビーならではの構造だ。

PR[プロップ]

自己犠牲の精神が強い攻守における土台。

最前列で相手フォワードとスクラムを組む3人のうちの両翼で、体重が重くがっしりとした選手が多い。背番号は1番と3番。

「スクラムで激しく組みながら、ラインアウトではジャンパーを持ち上げる縁の下の力持ち。スクラムでは相手からも味方からも押されるので、圧力に耐えられる体幹や全身の筋肉の強さが求められます。また自己犠牲の精神が強く、土台になって味方を生かすことに譲れないこだわりを持つ選手が多い」(トレーナー菅原順二さん)

稲垣啓太(いながき・けいた)
稲垣啓太(いながき・けいた)/1990年生まれ。186cm、116kg。パナソニック ワイルドナイツ所属。

「怪我をしない限り日本代表のプロップの1番手は間違いなく稲垣選手でしょう。彼の良さはスクラムでの強さだけではくフィールドプレーも巧みなところで、タックルやハンドリングなどのスキルが高くバックス陣と遜色ないプレーができます。186cmと大きく、いわゆる身長が低めでずんぐりむっくり、という昔ながらのプロップではなく完全な次世代スペックですね」

HO[フッカー]

最前列で膨大な仕事をこなすタフガイ。

最前列中央でスクラムをコントロールする司令塔で、スクラムハーフが投げ入れたボールを足でかき出す役割も担う。背番号は2。

「スクラムの最前線で相手とがっつり組み合いながら、ナンバーエイトに近い動きも要求されるところが左右のプロップとの一番の違い。世界的にはフィールドプレーも上手い器用な選手が多い。またラインアウトではスローイングを担当。やるべきことの多い、かなり難しいポジションだと思います」

堀江翔太(ほりえ・しょうた)
堀江翔太(ほりえ・しょうた)/1986年生まれ。180cm、104kg。パナソニック ワイルドナイツ所属。

「もともとナンバーエイトやフランカーもできる選手で、キックの精度が高くハンドリングやパスもかなり上手。野球に喩えるなら内外野すべてをこなせる超オールラウンダーですね。またカラダの柔軟性も相当高く、ともすれば腰高になりがちなスクラムで下からしっかり組むことができるところも強み。堀江選手のようなフッカーがいたら、どこの監督も嬉しいはずです」

LO[ロック]

味方のためにカラダを張れる精神的支柱。

スクラムでプロップとフッカーの後方から押し込む背番号4番と5番。ラインアウト時にはジャンパーを務め、跳躍力、身長の高さ、パワーが求められる。

「世界では2m超えの選手がザラ。ボールを持ったプレーは少ないですが、味方が走るスペースを作るためにカラダを張ったりクサビになるような玄人好みのプレーが見どころで、ラインアウトの仕切り役でもあります。派手さはないですが、ロックがいいチームは間違いなく強い」。

トンプソン・ルーク
トンプソン・ルーク/1981年生まれ。196cm、110kg。近鉄ライナーズ所属。

「ワールドカップ出場3回目の大ベテラン。この年齢でまだやれているのは相当頑丈な証拠。しっかりカラダが張れますし、前に出てほしい時には必ずいてくれて危ない局面でのタックルの入り方も絶妙。まさに精神的支柱で、相手チームにいたら一番嫌なタイプ。フィジカル能力的にこのポジションは日本人選手ではなかなか務まりにくいので、まだまだ彼が必要でしょうね」

FL[フランカー]

ゲームを最も左右するフォワードの大黒柱。

フォワードのバックローを担う6番と7番は、スクラムやラインアウトから誰よりも先に飛び出し、激しいタックルを仕掛ける前線の“飛車角”。

「最もタックル数が多く、前の5人とは明らかにカラダの張り方が違います。遠くまで走ってタックルし、すぐ次の獲物を狙うといったようにボールに近いところでの継続的なハードワークが必要で、選手はパワー、サイズ、スプリント能力、フィットネス能力すべてで高いレベルが求められます」

リーチ・マイケル、姫野和樹(ひめの・かずき)
リーチ・マイケル/1988年生まれ。189cm、105kg。東芝ブレイブルーパス所属。姫野和樹(ひめの・かずき)1994年生まれ。187cm、108kg。トヨタ自動車ヴェルブリッツ所属。

「このポジションは層が厚くて注目選手が多いですが、なかでもリーチ選手ですね。誰がどう見ても超世界レベル。あれだけハードワークができてメンタルも強いですから、まさに日本代表の心臓。

姫野選手も凄い。彼はプレースタイルがどこか“日本人ぽくない”というか、それほど速さを感じないのに推進力があって、腰まわりがズシッと重い。体幹が非常に強いんでしょうね。一度カラダを触らせてもらいたいくらいです(笑)」

No.8[ナンバーエイト]

爆発的なパワーでラインをブチ破る。

フォワードを最後方から統率するナンバーエイト。唯一背番号がそのままポジション名になっているので耳にしたことがある人も多いはず。

「スクラムからの起点になりつつバックスラインに入って攻撃も作ったり、他のフォワードとは使うスキルがかなり違いますね。求められるのは圧倒的なラインブレイク能力で、ボール保持能力が優れていないと務まらない。ここがディフェンシブになってしまうと試合は劣勢に陥りがちです」

アマナキ・レレィ・マフィ
アマナキ・レレィ・マフィ/1990年生まれ。189cm、112kg。NTTコミュニケーションズシャイニングアークス所属。

「爆発的なパワーと推進力を備えた、まさにラインブレイカーの申し子。世界でもトップクラスのクオリティを持っている選手だと思います。いかにしてマフィ選手に気持ちいいポジションでボールを持たせ、フリーで走らせられるか。彼にスピードと爆発力を上手に発揮させることが、他の14人の選手たちの大事な仕事のひとつになってくるのではないでしょうか」

SH[スクラムハーフ]

パスを散らして試合を操る専門職。

フォワードとバックスの繫ぎ役であり、常にボールの近くを機敏に動き回ってゲームにリズムをもたらす9番。

「全ポジションの中で最も専門性が高いのがこのスクラムハーフ。ほぼすべてのポイントでここからのパスが起点になりますので、常に一番素早くボールのあるところにアプローチしなければいけません。またバックスとフォワードの中間に位置し、それぞれに意思疎通をさせるための“通訳”的な役割もこなします」

田中史朗(たなか・ふみあき)
田中史朗(たなか・ふみあき)/1985年生まれ。166cm、72kg。キヤノンイーグルス所属。

「田中選手は世界的に見てもなかなかいない希少なタイプのスクラムハーフ。カラダは小さい方ですが、彼が入ると不思議なほどゲームスピードが上がり、よりボールがスムーズに展開される感じがします。速さを重視した日本のラグビーにおいてはもはや欠かせないゲームメーカーといえます。また圧倒的にメンタルが強く、危機管理能力にも非常に優れています」

SO[スタンドオフ]

昔も今も変わらないラグビーの花形。

創造的なパスやキック、ランで攻撃の形を作り出していく司令塔。他のポジションとは一線を画したエレガントな風情があり、日本では昔からラグビーの花形として人気だ。

「的確な状況判断を必要とする戦術の要。かつては平尾誠二さんのようなスタイリッシュな選手が多く、ジャージがあまり汚れないポジションとしておなじみでしたが、最近のスタンドオフはハードタックラーも増えてきているので、そのあたりも見どころです」

田村優(たむら・ゆう)
田村優(たむら・ゆう)/1989年生まれ。181cm、91kg。キヤノンイーグルス所属。

「スタンドオフというポジションには昔から細身でスタイリッシュな選手が多かったのですが、田村選手もその王道に存在する選手と言いますか、生まれながらの天才肌。イマジネーション豊かなゲームメイクができますし、パスの精度が高く、また多彩なキックを蹴ることもできます。ワールドカップ本大会では、彼がどれだけ意外性のあるプレーで相手を驚かせられるかが勝敗を左右しそう」

CTB[センター]

相手の攻撃の芽を摘むクラッシャー。

バックスラインのちょうど中央に位置取る12番と13番は攻守両面で起点となる。

「オーソドックスなラグビーにおいてはここで相手の攻撃をクラッシュさせる機会が非常に多く、ゆえにバックスとはいえスピードのみならずパワーも必要です。また極端な言い方をするとセンターはウィングと違って長く走れなくてもいいというか、より短い距離を速く走れるアジリティに優れた選手、緩急のつけ方が上手な選手が向いています」。

ラファエレ・ティモシーと中村亮土(なかむら・りょうと)
ラファエレ・ティモシー1991年生まれ。186cm、96kg。神戸製鋼コベルコスティーラーズ所属。中村亮土(なかむら・りょうと)/1991年生まれ。178cm、92kg。サントリーサンゴリアス所属。

「ティモシーは素晴らしいクオリティを持ったオールラウンダーだと思います。タックルもパスも上手で、かつルックスもかっこいい(笑)。またサモアやトンガ出身の選手はフィジカルに長けている一方でやや熱くなりすぎるところがあるのですが、彼は常に冷静ですね。プレーそのものに派手さはないですが安定感は抜群です。片や中村選手は日本人のバックスとは思えないフィジカルの強さが何よりの武器。相手と正面衝突する場面が多いポジションだけに、彼のような、スピードや器用さだけではないフィジカルに優れた選手をセンターに置けるのは大きいですね」

WTB[ウィング]

敵陣を切り裂くスピードスター。

バックスラインの両端に陣取る11番と14番は、自陣深くから相手陣内に切り込むトライゲッター。

「スピードスターでありチームのフィニッシャー。とにかくスピード、加速力、ステップワークに長けていることがウィングの魅力ですが、誰よりも長い距離を縦横無尽に走ることができるスタミナも必要です。加えていいウィングというのは危機管理能力も高く、相手のトライを水際で防ぐディフェンス能力にも優れています」。

福岡堅樹(ふくおか・けんき)とアタアタ・モエアキオラ
福岡堅樹(ふくおか・けんき)1992年生まれ。175cm、83kg。パナソニック ワイルドナイツ所属。アタアタ・モエアキオラ/1996年生まれ。185cm、114kg。神戸製鋼コベルコスティーラーズ所属。

「福岡選手はもう圧倒的。ピッチで対峙すると目の前から一瞬で消えるんじゃないでしょうか。とにかくトップスピードに乗る早さが尋常じゃない。これまで日本にはいなかったタイプのウィングだと思いますし、大畑大介さんを超えうる最強のフィニッシャーだと思います。もう一人ジョーカー的な存在として楽しみなのがアタアタ選手。福岡選手とはまた違い、ズドンと直線的かつパワフルに突破するタイプ。相手が疲れてきた時間帯に彼が投入されれば面白いですね。ウィングがフリーでボールを持った瞬間は一番スタンドが沸きますので、楽しみにしていただければ」

BK・FB[フルバック]

創造性あふれる攻守の最後の砦。

自陣最後尾でゴールラインを守る15番。しかしその役割はディフェンスのみにあらず。敵陣にロングキックを蹴り込み、ウィングとの連携で積極的に突破を図るなどプレーエリアは広い。

「フィールド全体を見渡せる位置から、自分の状況判断によって比較的自由なコース取りで動くところがポイント。ウィング同様に長い距離を走るのでスピードと持久力が必要ですし、ロングキックなど第2のスタンドオフ的な能力も求められます」

松島幸太朗(まつしま・こうたろう)
松島幸太朗(まつしま・こうたろう)/1993年生まれ。178cm、87kg。サントリーサンゴリアス所属。

「フルバックで注目なのはやはり松島選手。彼は全身がバネ。福岡選手とは異なる速さで、松島選手はピョンピョンピョンと小気味よく跳ねていくイメージ。一瞬のひらめきや突破力も目を見張るものがありますね。それでいてフルバックですから、当然ディフェンス能力も高い。相手がトライのチャンスの時に、最後の砦として彼がいかに味方のバッキングアップを待てるかは大きなカギ」

教えてくれた人

菅原順二さん/1978年生まれ。法政大学ラグビー部を経て単身ニュージーランドへ。帰国後、母校ラグビー部のフィジカルコーチやアスリートのパーソナルトレーナーとして活躍。arancia代表。

「ラグビーはあらゆるフィジカル要素が盛り込まれた競技。全員攻撃、全員守備が鉄則ですので基本的には全選手がスピードやパワー、柔軟性などを兼ね備えていますが、もちろんそれらの度合いは選手ごとに異なります。ポジション別にどんな特性を持つ選手がいるのかを知れば、よりラグビーが楽しくなります!」「ラグビーはあらゆるフィジカル要素が盛り込まれた競技。全員攻撃、全員守備が鉄則ですので基本的には全選手がスピードやパワー、柔軟性などを兼ね備えていますが、もちろんそれらの度合いは選手ごとに異なります。ポジション別にどんな特性を持つ選手がいるのかを知れば、よりラグビーが楽しくなります!」

取材・文/徳原海 写真/長岡洋幸 ©JRFU

(初出『Tarzan』No.771・2019年8月29日発売)

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