代表ジャージでピッチに立った瞬間、驚くほどの力が湧いてくるんです(ラグビー選手・松島幸太朗)
アスリートの“相棒”としてのギア。ラグビーW杯日本大会での活躍が期待される松島幸太朗選手の“バディ”は、日本代表の象徴であるあのジャージでした。
text:Kai Tokuhara photo: Yuichi Sugita illustration: Shinji Abe
(初出『Tarzan』No.759・2019年2月21日発売)
日本ラグビー界のスピードスター・松島幸太朗選手。ジンバブエ人の父と日本人の母を持つ彼の出身は南アフリカ。その圧倒的なスプリント力で桐蔭学園時代に花園を沸かせた後、故郷の名門アカデミーに3年在籍。その際に同国U-20代表候補に選ばれたが迷わず辞退。日本代表の象徴でもある“赤と白のジャージ”をバディに、プレーすることを望んだからだ。
「2013年に(当時の日本代表監督)エディ・ジョーンズから声をかけられて、自分の中では即決でした。家族も友人もほとんど日本人ですし、何より日本代表として強豪国を倒したいという思いが強くて」
目標通り、22歳で出場した2015年のW杯では“世紀の番狂わせ”の中心に。相手は奇しくも南アフリカ代表。しかし日本中が歴史的な勝利の歓喜に沸くなか、松島選手は密かにこんな思いを抱いたという。
「勝てたことは嬉しかったのですが、それ以上に悔しさを強烈に滲ませた相手選手たちの表情があまりに印象的で。強豪ゆえのW杯に懸ける思いの強さを感じましたし、あの緑のジャージを着るプライドやプレッシャーは凄まじいものがあるんだなと。僕らも、より強くなるためにはこの日本のジャージを着てピッチで戦う重みや使命感をもっと持たなくてはと思いました」
あれから4年。今年秋にはそのラグビーW杯がいよいよ日本で開催される。
「このジャージでピッチに立った瞬間、自分でもびっくりするくらい力が湧きます。大舞台を楽しみつつ、前回大会の経験を生かしながら貪欲に勝ちにいきたいですね」。