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ストレスがカラダのあちこちに影響する?「自律神経失調症」を知る

どの科を受診しても病名がつかない、よくならないならトラブルの発信源は疲弊した自律神経かもしれない。この病気のケがあるかないか、強いか弱いか。10の質問でセルフチェックしてみよう。

身体感覚増幅尺度でセルフチェック!

あなたは自分のカラダについて普段どのように思っていますか? 各質問に対して1から5のうち最も適切な数字を1つ選ぼう。

身体感覚増幅尺度で自律神経失調症セルフチェック!
合計点が高いほど、身体感覚に対する過敏度は高い。合計点が25点くらいが平均点。30点以上で自律神経失調症の疑いあり。40点以上は精神医学的なトラブルの可能性も。
出典/中尾睦宏、他. 心身医学 41: 539-547, 2001

自律神経失調症の疑いがある症状はあまりにも広いため、単一の質問紙でスクリーニングをするのは難しい。なお、診察の結果、いかなる病変も見つからないにもかかわらず、自分は重篤な疾患を罹患している、または罹患しつつあると思い込む病気に病気不安症というものがある。

チェック表はこの病気のケがあるかないか、強いか弱いかを調べるためのもの。

病気不安症の人は身体各所からのシグナルに過敏になり、たとえば痛みの閾値が下がっているため、ちょっとした刺激も苦痛に感じがちとなる。このチェックであまりに高得点になると、自律神経失調症の疑いが濃厚となる。

1. 自律神経失調症って、そもそもどんな病気?

頭痛に加え腹痛があって受診し、内視鏡検査を受けても異常なし。動悸や胸に痛みがあり検査を受けたのに異常なしなど、さまざまな身体不調にもかかわらず器質的な異常が見つからないと、自律神経失調症と分類されることが多い。

「自律神経失調症の場合、複数の部位に同時に症状が出がちです。女性に多いのですが、原因不明でカラダの節々が痛み、全身がこわばってしまう線維筋痛症という診断がつくこともあります」と語るのは中尾睦宏医師(山王病院心療内科)だ。

出発点は恐らくストレスなのだが、影響の出る部位、症状が多彩であるのは、その人自身が抱え持つ脆弱な部位が、十人十色だからではないかと言う。

「最も脆弱な臓器がストレスに対し真っ先に悲鳴を上げ、アラームを発します。このアラームに背を向け、無理を続けると他の臓器にも悪影響は連鎖し、症状が増えていくわけです」

ストレスが募り、危険なレベルに近づくと、カラダは刺激に対してナーバスに反応するようになるという。上のチェックシートで自分に変化が起きていないかどうかを確認してみよう。

2. まさか内臓にも影響が! 仕組みはどうなっている?

重いストレスがのしかかると食行動に異常を生じることが多い。

「ストレスを感じると視床下部、下垂体、副腎皮質という3つの器官がホルモンを出し合って、カラダは交感神経優位の状態に陥ります。こうした状態を日常的に頻繁に繰り返すと、いわば闘争に向かう筋肉の活動を優先しがちとなり、血行の低下気味になった消化器の症状は悪化します」

しかも悪いことに、脳内でストレスから不安を感じる中枢と、食欲の中枢は接近しているため、不安が食欲に影響し、食行動が乱れやすくなるという。

「食欲がぱたりとなくなり痩せたり、やつれたり。逆に過食を繰り返し、太る人も現れます」

交感神経が優位な状態でいると、インスリンへの感受性が低下するので、糖尿病をはじめ生活習慣病が忍び寄る。コレステロールの代謝にも悪影響は及び、善玉コレステロール(HDL)が減り、悪玉コレステロール(LDL)が増えることはよく知られた話。

「このとき血液検査を受けてC反応性タンパク質(CRP)の数値が高ければ、全身の血管内皮に慢性炎症を起こしている可能性が疑われます。脳は毛細血管の密集地帯ですから、うつ病傾向の人もCRP高値を示すことがあります」

3. 自律神経系と性格ってもしかして関係ある?

せかせかと急ぎ、闘争本能はむき出し。トロい人を見かけると許せず、つい攻撃的になるなど、

「心理学でいうところのタイプAの人は自律神経が乱れがちかというと、そうでもありません。ただし、心筋梗塞や狭心症などの心疾患に見舞われる確率は高いから注意が必要です」

他人の依頼、上司からの命令が本当は嫌なのに、そう言えない。つい引き受けて、嫌々やり続けた結果、自律神経に変調を生じ、カラダがもたなくなるのは過剰適応タイプの性格特性。身に覚えはないだろうか? 泣き事は言うためにある。たまには愚痴ろう。

「心配なのはいわゆる完璧主義者と、他人からの評価を気にしすぎる人です。これはうつ病の病前性格として問題視される性格類型で、ささいな失敗、つまずきから大きく落ち込み、抑うつ状態に陥ることがありえます」

あなたは、どれかに当てはまりませんか?

4. 自律神経が関わるさまざまな疾患とは?

自律神経失調症が惹き起こしている可能性のある疾患
自律神経失調症が惹き起こしている可能性のある疾患
出典/「心身症の概念の変遷:身体表現性障害(身体症状症および関連症群)から機能性身体症候群まで」(臨床精神薬理18(5)、2015/中尾睦宏)

胃もたれや胃痛の続く機能性胃腸症は、採血検査や内視鏡検査で異常を見つけにくい難病。突如として顎の開閉に困難を生じる顎関節症にも、自律神経の影響は大きい。

「発症に先立ち、特に問題行動があるわけでもなく、少ししゃべり過ぎた、少し歌い過ぎただけで発症する人もいます」

足元の地面が波打つように揺れて感じる浮動性めまいの患者は、耳鼻咽喉科でいくら検査を受けても異常箇所は見つからない。

「大地震を経験した人なら、内耳機能の調子が悪い可能性もありますが、心理検査を行うと不安感を強く訴える方が多いですね」

慢性疲労症候群も患者数の多い疾患。どこといわず、全身が疲れてしまい、立つのも辛い。微熱が続き、仕事はおろか日常生活にも困難をきたす。

「高い頻度で発生するものに、緊張型頭痛もあります。これには現代特有の労働環境の影響も考えられます」

長時間パソコンに向かい、微動もしないとやがて首、肩、腕、腰が固まり、痛み始める。それでも画面に向かい続ければ、耳鳴りやひどい頭痛がやってくる。

「一過性で終わればまだいいのですが、これを繰り返して、片頭痛を併発する方も現れます」

これといってどこかに検証可能な異常は発見できないけれど、自律神経に関係の深い疾患は数え切れないほど多い!

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/岡田丈 取材協力・監修/中尾睦宏(国際医療福祉大学医学部心療内科学教授、医療法人財団順和会山王病院心療内科、医学博士)

(初出『Tarzan』No.769・2019年7月25日発売)

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