• 迷走してきた「コレステロール論争」を、そろそろ整理しておこう
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2019.08.04

迷走してきた「コレステロール論争」を、そろそろ整理しておこう

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1. コレステロール、基本の「き」

コレステロールは毒などではなく、カラダに必要なものです。細胞膜の材料になるし、男性ホルモンであるテストステロンや胆汁酸の材料にも欠かせません」と語るのは岡部正博士(岡部クリニック院長)だ。

にもかかわらず、健診の結果で悪玉コレステロールが多いやら、善玉が少ないやら。悪玉とされるのはLDL(低比重リポタンパク)で、善玉とされるのがHDL(高比重リポタンパク)だが、この耳慣れない名前、リポタンパクって何だ?

コレステロールは脂だから、そのままでは血中を移動しにくい。そこで以下の血清脂質(血液中に含まれる脂質)たちがタンパク質にくるまれて移動。そして、コレステロールを必要とする部位まで運ぶのがLDLで、余ったら回収するのがHDLの役目。

  • コレステロール…細胞膜を作る構成成分。ホルモンや胆汁酸の材料にもなる。
  • リン脂質…細胞膜を構成する成分。脂質が血液中を移動する際、タンパク質と結び付ける役割も。
  • 中性脂肪…分解されてエネルギーとして利用される。余剰分は皮下脂肪や内臓脂肪として貯蔵される。
  • 遊離脂肪酸…皮下脂肪や内臓脂肪から放出された中性脂肪が分解されたもの。エネルギーとして消費される。

2つのリポタンパクの構造は基本的に同じなのに、溜まりすぎがよくないばかりに、配達係がつい攻撃される。HDLが回収してくれれば、悪口も言われないのに。コレステロールに善玉も悪玉もないのだ。

「ただし、過剰になったLDLが血管内膜に溜まって、何らかの原因で酸化されると、白血球の一種であるマクロファージの働きも加わり、血管内膜が膨れ上がって動脈硬化が進行します」

確かにもともとのLDLが多ければ、酸化LDLも多くなる可能性は高い。

「中性脂肪が多いとLDLが小型化して血管内膜に入りやすくなり、酸化もされやすくなり、血中に糖が多いとさらに酸化されやすくなります」

成人男性体内のコレステロールは普通は100~150g
成人男性体内のコレステロールは普通は100~150g
コレステロールはカラダのさまざまな部位にあり、その割合は右の通り。細胞膜やホルモン、胆汁酸などの材料として使われている。

2. 自分の数値をどう見る?

いままで悪玉のように見られがちだったコレステロール(LDL)だが、2013年アメリカ心臓病学会は医学的根拠がないことから、コレステロールの摂取制限を撤廃した。

これを追う形で15年、日本でも「日本人の食事摂取基準」にコレステロールの目標量の算定を控える旨が記載された。これを履き違えたメディアの一部は、いくらでもコレステロールを摂ってよいという短絡的な報道を行った。

「そんなわけはないんです。制限を撤廃したアメリカ自体、糖尿病の患者さんにはコレステロールの数値に関係なく、予防的にコレステロール低下薬を処方していますから」

もともとコレステロール値が高くなりがちな人が、高コレステロール食を続けると、3割の人は数値を悪化させるという。

「日本では基準値の指標は学会ごとに違いますが、その適正値に収まるのは50~60%の人にすぎません」

この10年間、男女とも血清総コレステロール値には大きな変動は見られない。
日本人はあまり変化していない。
この10年間、男女とも血清総コレステロール値には大きな変動は見られない。
「国民健康・栄養調査」(厚生労働省、2015年)より

基準値より低いのに生活習慣病を発症する人もいれば、高めの数値でも元気な人は実際にいるのだ。

「皆さん基準値に縛られすぎです。基準値より自分の目標値を持つべきだと思います。それを考えるうえで最も参考にすべきは遺伝です」

親や祖父母までさかのぼってみて、心筋梗塞や脳梗塞など心血管系疾患を持つ人がいたら、基準値の上限に“引っかかっている”ことに安心せず、もっと下げる努力が必要だ。

「基準値に関して、日本動脈硬化学会と日本人間ドック学会はそれほどかけ離れてはいません。日本脂質栄養学会に関しては、どうかな?という感じです。高い数値の放置が危険であることは間違いありません」

3. それでも下げたいコレステロール

コレステロールはカラダにとって非常に大切なものだから、万が一にも切らさないよう70~80%は体内で合成される。だから、実をいうと食事の影響は決定的、ではない。

が、摂取制限がなくなったからと、脂っこいものをドカ食いすれば、コレステロール(LDL)値も中性脂肪値も跳ね上がる人は確実にいる。

コレステロール摂取目標量(「日本人の食事摂取基準」厚生労働省)
コレステロール摂取目標量(「日本人の食事摂取基準」厚生労働省)
依然としてコレステロールの摂取量は低めに抑えるのが望ましいと厚生労働省は言うが、現在、目標値は設定されていない。

「LDL値に最も影響するのは食事です。中でも飽和脂肪酸の多い動物性タンパク質の食べ過ぎは問題。焼き肉のカルビ、ハム、ソーセージなどの加工肉やハンバーガー、フライドチキン。女性ならデニッシュをはじめとする洋菓子類は要注意です」

揚げた菓子類にはトランス脂肪酸という、新手の悪玉が潜んでいる。

「飽和脂肪酸と同様に、トランス脂肪酸もLDLを増やすということがはっきりしています」

名前を挙げた食品を見ると、カタカナばかり並んでいる。そうなのだ。日本動脈硬化学会も食事の基本は伝統的日本食を推している。ただし、食塩は1日に6g未満! 厳しいね。

コレステロールの量は体内で一定に保たれる
コレステロールの量は体内で一定に保たれる。
必要量がそもそも少ないうえ、その大半は体内で合成できる。食べ過ぎれば肝臓は合成を減らし、一定レベルに常に保たれている。

LDLの害から身を守る食事の仕方は?

LDL値に最も影響するのが食事なら、何を食べれば改善できるか?

「これを食べればLDL値が下がるという食材は、ほとんどない。タウリンがLDL値を下げたという報告もありますが、すべての研究者に認められたデータではありません」

希望がないかと思いきや、大豆タンパクは数値を少し下げるという。小腸内に大豆タンパクがあると、胆汁がそちらに多く結び付き、脂質の吸収が抑制されるからのようだ。

「よくオメガ3系の脂肪酸を推奨する医師、研究者がいますが、LDL値はほとんど下がりません。しかし、最大の問題はLDLの酸化であり、亜麻仁油などオメガ3は酸化対策にはいい油脂です。他にも抗酸化力を期待できるのはアスタキサンチン豊富な鮭です」

料理が面倒ならサプリを利用するのも手。

長時間労働に関する議論が盛んだが、長時間のパソコン業務やスマホ漬けからのストレスもLDLを増やす。また、喫煙は確実に数値を悪化させ、酸化を招く。生活習慣の改善も必要なのだ。

避けたいもの

  • トランス脂肪酸
    マーガリン、ショートニング(菓子パン、ケーキ、スナック菓子、ファストフードなど)
  • 飽和脂肪酸
    バター、ラード、肉の脂身

摂りたいもの

  • 大豆製品、緑黄色野菜、きのこ、海藻、鮭など

運動前にメディカルチェックを。

この運動をしたら、見る見るコレステロールが下がります。そんな運動、あるわけない。だが、

「一般論としては、肥満解消のために有酸素運動を習慣化すること。筋トレをして基礎代謝を高いレベルに保つことはいいことです」

LDL値が上がってきたのなら、その背景に肥満と長年にわたる悪しき生活習慣が見え隠れする。そういう年代の人に問題が起きやすいから。ならば、運動で肥満解消をといきたくなるところだが、

「しばらく運動から遠ざかっていた人は、運動を始める前に必ずメディカルチェックを受けてください。特に危険なのは学生の頃の部活経験者です。自分ではできるだろうと思っていても、当時より体重が10kgも重くなっていたら、動脈硬化だって進んでいるでしょう。急な運動で血圧が急上昇すれば、心血管系の事故につながる可能性も考えられます」

医師のお墨付きをもらったら、いまの筋肉量を維持する程度のマシントレから始めてみよう。

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/佐々木一澄 取材協力/岡部正(岡部クリニック院長、医学博士)参考資料/『本気で治したい人のコレステロール対策』(学研)、『コレステロール値が高いと言われたら読む本』(小学館)

(初出『Tarzan』No.713・2017年2月23日発売)

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