酒飲みたちを悩ませる「脂肪肝」。有効なのは有酸素運動です

取材・文/鈴木一朗 監修/高山忠利(日本大学医学部消化器外科教授)

(初出『Tarzan』No.599・2012年3月22日発売)

酒飲みが恐れる「脂肪肝」。どんな状態を指すの?

脂肪肝では肝細胞に脂肪が沈着している。肝臓のまわりにべったりと脂肪が乗っかるのは内臓脂肪で、脂肪肝ではない。本来、機能すべき細胞のスペースを脂肪が占めてしまうのだ。

細胞の30%以上がこの状態になったときに脂肪肝と呼ぶ。肝細胞は70%に減少するわけだから、当然機能は低下する。

脂肪肝になるのにはアルコールにも原因がある。脂肪は肝臓で分解されリポ蛋白という乗り物で全身に運ばれる。ところが、肝臓がアルコールの処理にかかりっきりになると、リポ蛋白が作られなくなるのだ。また、脂肪自体も分解することができなくなるから、どんどん脂肪が集まってしまう。すると、少しずつ細胞の中へと沈着していってしまうのだ。

自分が脂肪肝か否かは、腹部超音波(エコー)検査で簡単に知ることができる。一度、検査をしてほしい。

そして、もし20%ぐらいの部分が脂肪に変わっていたなら、すぐに運動を始めよう。これぐらいなら、有酸素運動で3〜5kg痩せれば、1か月程度でキレイに消えてしまうことが多い。30分ほどのウォーキングでOK。もちろんその間は酒を控えること。脂肪がなくなったら、また飲めばよい。

脂肪肝、つまり30%以上の人はかなりがんばらないといけない。が、これまで酒を飲んで楽しい思いをしてきたのだから、我慢して運動をしよう。その際は、脂肪を控え、タンパク質を摂ることを忘れずに。

怖いのはアルコールより、肝炎の有無を知らないこと

日本人はアルコールが原因では肝がんになりにくいことは、以前も紹介している。しかし、実際には肝がんで亡くなる人は多い。

それは肝炎のせい。肝炎のキャリアの人がアルコールを摂取することで肝がんになるケースが多いのだ。日本人は肝炎のウイルスを持っている人が多い。それを知らずに飲んでしまっているのだ。

「ウイルスなしに肝がんなし」という言葉もある。だから、安全に酒を飲むために、一度は肝炎の検査を行ってほしい。無料で受けられる場合もあるので、調べてみるのがよい。肝炎がなければ、よほど飲まない限り、肝がんになることはないだろう。

それさえわかれば年に1回の健康診断でOK。肝臓に対する指標は7つ。

〈GOT〉と〈GPT〉は肝細胞の状態を調べる。〈γ-GTP〉は酒の飲みっぷりを映す鏡といわれるほどで、アルコール摂取量が反映される。

〈ALP〉は胆汁が鬱滞したときに上昇する数値で、肝機能の指標のひとつとされている。

〈ビリルビン〉は古くなった赤血球が破壊されるときに生成される黄色い色素で、目や皮膚がこの色素で染まることで黄疸が起こる。肝炎ウイルスなどの感染などで肝脂肪が障害を受けると高くなる。

〈総蛋白〉は血中に含まれる蛋白の総称。こちらは、肝臓が悪いと数値が下がっていく。最後が〈血小板〉。肝臓が線維化しているかを知ることができる。

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