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タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
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ランニングにある程度慣れてきたら、さらに脂肪を燃焼しやすい走り方を取り入れたい。ホルモンを味方につけたり、EPOCを利用したり、ランで痩せるためのメソッドはまだまだある! ここでは実践的な4つのアイディアを紹介。
痩せランの基本は息が切れないニコニコペースだが、たまにはそれを超える速度で走るのも悪くない。EPOCの恩恵が期待できるからだ。
EPOC(Excess Post-exercise Oxygen Consumption)とは、運動中に不足した酸素供給の〝赤字〟を返すため、運動後に酸素消費が増える現象を指す。この間、傷ついた筋肉の修復や失ったグリコーゲンの補塡などが行われる。酸素が過剰に消費されるのは、エネルギー代謝が高まっている証拠。運動のダイエット効果は最中にカロリーが消費されるうえに、終了後もEPOCで代謝亢進がしばらく続くことで得られる。
EPOCは長く続くほどありがたいが、継続時間は運動強度に影響される。有酸素のように低強度だと短く、筋トレのように高強度だと長い。強度が低めだと酸素の〝赤字〟が生じにくく、血液循環も盛んで筋肉のリカバリーもサクサク進むからだろう。だが同じ有酸素でもペースが上がるほどEPOCは延長する。毎度同じペースで走っていると心理的にも飽きる。走るのに慣れて体重も落ち、ペースが上げられるようになったら、終了間際に1〜2度息が切れるまでペースアップしてみよう。前半に攻めすぎると、辛くなってそこで足が止まりかねないからNG。
上手に体脂肪を減らすためには、ちょっとしたコツがある。ホルモンを味方につけるのだ。
第一に味方につけたいのは、アドレナリン。アドレナリンは体脂肪を分解してその利用を促すホルモン。アドレナリンはじゃんじゃん出したいものだが、そのために有効なのは、トレーニングを分割する方法。1時間走る際、20分の休憩を挟んで30分×2回に分けてやると、休憩中に一旦落ちたアドレナリンの分泌は後半のセッションで増える傾向がある(下グラフ参照)。アドレナリンと逆に体脂肪の分解にブレーキをかけるインスリンというホルモンの分泌は、休みを挟んだ後半では少なく抑えられるので有利。長く走るときは、休み休みがいいのだ。
次に味方につけたいのは成長ホルモン。成長ホルモンは、筋トレ後に分泌されて筋肉の成長を助ける。でも、最近では体脂肪の分解を促す作用の方が注目されている。ランでも成長ホルモンは多少分泌されるが、より痩せランの効果を引き上げるのは、走る前にスクワットなどの筋トレをしておく方法。筋トレで分泌された成長ホルモンが体脂肪を分解してお膳立てを整えてくれているので、走り始めると早期から体脂肪燃焼が促進される。
ダイエットでは「2か月で5kg痩せる」と体重目線で計画を立てるが、痩せランの計画は「何km走れるようになるか」で立てるべき。走る習慣がついたら、遅かれ早かれ痩せるのだから、気長に構えて段階的に距離を延ばそう。体重は食生活などにも影響されるので、無理な減量計画を立てた挙げ句、未遂に終わると失敗体験として胸に刻まれて意欲が落ちる。今回はLSD(LSDの説明は後述)で10km走ることをゴールに設定。ビギナーでも3か月あれば、達成可能だ。
1か月目はウォーキングを交ぜながら30〜40分間動き続ける。ニコニコペースで30分間ジョグできるようになったら晴れて卒業。むくみが取れて体重も減り始めているだろう。
2か月目は目安を時間から距離へスイッチ。1回4kmから試してみる。時速8kmなら30分だ(5分ほどのウォーミングアップを除く。以下同)。6km走れるようになったら合格である。この頃には体重と体脂肪の減少傾向が明確になり、カラダが引き締まった感覚が得られる。
3か月目は調子を見ながら1kmずつ距離を延ばす。途中で中休みを入れてもいい。無茶な減量プランでない限り、10km走れた暁には、減量目標に肉薄できているに違いない。
時間がある週末などに試したいのがLSD(ロング・スロー・ディスタンス)。LSDは長い時間をかけて長い距離を走る方法。1km7〜8分前後(時速7.5〜8.5km)のスローペースで行うのが普通だ。これは初心者のニコニコペースに近い。
LSDの狙いは、40km以上を走るフルマラソンに備え、時間と距離への耐性を養うこと。接地時間が長くなるため、持久的な筋力も養われる。接地時間が長いといっても100分の1秒レベルだが、それを延々と繰り返すと塵も積もれば山となる。少しずつ持久力な筋力がついてきて、痩せランもラクに続けやすくなる。
マラソンをターゲットに定めたLSDは2時間以上行われることもしばしばだが、痩せランでは1時間ほどに留めておこう。レースに出るわけではないし、あまり長い距離を走りすぎると代謝が落ちて逆に痩せにくくなる恐れもある。理由はこうだ。
筋肉のミトコンドリアにはUCP-3というタンパク質があり、安静時に体脂肪を空焚きして熱を作り体温を保つ。LSDのような有酸素運動を長時間やりすぎると、UCP-3の活性が落ちて安静時代謝が下がるのだ。長時間の運動に備えて省エネ体質になるわけだが、省エネで余ったエネルギーがダブつくと太りやすい。1時間程度ならその心配もなく、体脂肪がまとめて燃やしやすい。
取材・文/井上健二 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 取材協力/吉岡利貢(環太平洋大学体育学部体育学科/陸上競技部コーチ)
(初出『Tarzan』No.751・2018年10月11日発売)