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“スリップインするだけ™”じゃない!《スケッチャーズ スリップ・インズ》快適学。
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ランニングを始めたいと思った人なら、どこかで耳にしたことがあるかもしれない。ロング・スロー・ディスタンス、通称LSD(エル・エス・ディー)。ダイエット目的のビギナーから、レースで好記録を狙うシリアスランナーまで、こぞって取り入れている走り方だ。なぜこんなに幅広いランナーに支持されるのか。6つのQ&Aでその正体とやり方を探ってみよう。
目次
ロングでスローでディスタンス。直訳すると長くゆっくりかなりの距離を移動すること。それがLSD。
もともとはドイツのスポーツドクター、エルンスト・アーケン博士が提唱したトレーニング方法で、これをアメリカのランニングコーチ、ジョー・ヘンダーソンが『Long Slow Distance』という書籍として1969年に出版。以来、マラソンのトレーニングとして世に知られるようになった。
日本でLSDが注目されたのは1988年。ソウル・オリンピックでマラソンに出場した浅井えり子選手が練習に取り入れたのがきっかけ。浅井選手のコーチを務めた佐々木功監督が『ゆっくり走れば速くなる』という本を出版し、マラソントレーニングとして普及したという流れ。
オリンピアンがトレーニングとして取り入れているLSD。その目的の第一は、なんといっても持久力の向上。いわゆる“期分け”と呼ばれるトレーニング計画の中では、基礎体力を養う最初の鍛錬期の段階で取り入れられることが多い。
長距離走で主に稼働する遅筋を鍛錬し、同時に毛細血管に酸素を効率的に行き渡らせ、カラダの隅々の筋肉にデリバリーする有酸素能力を開発するのだ。また、高強度のスピードトレーニングの合間の疲労抜きとして取り入れられることもある。血液循環による疲労物質の排出がその狙い。
はたまた、敢えてゆっくり走ることで、フォームの細かい見直しも図れる。多くのランナーが取り組む理由がLSDにはいくつもあるのだ。
抜くほど疲労は溜まってないし、フォームを見直すもなにも走るの初めてだし。LSDってやっぱり本気度バリバリの上級者向けのトレーニングなのでは?
いや、そんなことはない。そもそも筋肉の量が少なく毛細血管の機能も十分ではない初心者の場合、むやみやたらに走り出すと、10分も走り続けられないはず。ゆっくりペースのLSDならカラダへの負担が少ないため、普通に体力のある人なら30分は走り続けられる。続けていけば1時間、それ以上と長時間走り続けることができるようになる。
つまり、それだけ多くのエネルギー消費が見込める。同じスピードで歩くのに対してLSDのエネルギー消費量は約1.6倍。痩せます!
運動強度の最も厳密な尺度に最大酸素摂取量というものがある。もう無理、これ以上ダメという限界レベル時に体重1㎏当たり1分間に摂取する酸素摂取量のことだ。これを100%として、その何割程度になるかで運動強度を割り出す。
今回のLSDの指標は最大酸素摂取量の50〜60%。これはランニングペースでいうと、キロ7〜12分。学生時代にそこそこ運動経験がある人ならキロ7分、ほとんど運動経験がないという人ならキロ12分と体力に合わせて行うのがポイントだ。
そうはいっても最大酸素摂取量も何分で1㎞を走るかというペースも初心者には知りようもない。最も分かりやすいのは会話しながら走れるスピード。それがあなたにとっての最適ペースだ。
今このときLSDに興味を抱いているあなたは、ひょっとして「そろそろ何かやらなきゃマズいかも?」というちょいポチャ体型かもしれない。体重(kg)÷身長(m)の2乗で表されるBMIなら23、24。これは身長170㎝にして体重67〜68㎏程度。
会話できるくらいのスピードで30分走る。なんだったら最初の10分くらいは速歩きしてもいい。これを週に3回行うと、1週間で200gくらい体重が減る。1か月に換算すると約1kgだ。BMIはひとまずの理想値、22台にもっていける。
1か月走ればカラダはLSDに順応し、もっと長い時間、長い距離を走れるようになる。すると体重も右肩下がりになる一方。とりあえず目指す頻度は週3回ということで。
キロ7分ペースで2時間LSDが無理なく行えるようになった。もちろん痩せた。走ることが楽しくなった。でも、ただひたすら長時間走るというのも、ちょっと変化に乏しい。そのくらいのレベルまで達したら、たまにはいつものコースから飛び出して、レースに出場したり山にステージを移したりという手もある。
まずはハーフマラソンで腕試し。次に制限時間7時間以上のフルマラソンにトライ。合間にちょいちょい不整地LSDを取り入れて、ウルトラマラソンに挑戦してもよし。50㎞で10時間の制限時間ならLSD+歩きで十分走破は可能。最後はトレランデビューなんて選択肢も。LSDという扉を開ければ、かように走る楽しみがどんどん増えていく。
取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子/ヘア&メイク/天野誠吾 監修/牧野 仁(「マラソン完走請負人」スポーツネットワークサービス代表)
(初出『Tarzan』No.705・2016年10月6日発売)