「料理中バチバチッと油が跳ねたとき、せめて誰か見といてくれよと思う」笑いとウェルビーイング。マユリカ・中谷(後編)
笑うことは心身の健康に良いと言われています。では、日々誰かを笑わせているお笑い芸人は、自身も健やかな状態になっているのでしょうか。芸のために筋肉を鍛えることもあれば、不摂生が爆笑を生むこともある。ウェルビーイングの形は人それぞれです。本連載では放送作家の白武ときおさんが聞き手となり、芸人一人ひとりが考える「笑いとウェルビーイング」を掘り下げます。第5回後編では、マユリカ中谷さんの交友関係や休日の過ごし方などを伺います。
インタビュー/白武ときお 文・編集/飯田ネオ 撮影/北尾渉
Profile
中谷(なかたに)/1989年、兵庫県生まれ。2010年に吉本総合芸能学院(NSC大阪校)に33期生として入学。2011年、幼なじみの阪本匠伍とお笑いコンビ・マユリカを結成。2018年、2020年にはytv漫才新人賞決定戦決勝に進出。M-1グランプリ2023、2024ファイナリスト。元漫画家でもあり、小学館の新人コミック大賞において佳作を受賞した経験も。現在『ラヴィット!』(TBSテレビ)に不定期出演。『マユリカのうなげろりん!!』(ラジオ関西Podcast)配信中。
Instagram:@mayurika.nakatani

きんちゃんが一人で子守りをするとき、付き添って遊ばせてもらってる。
白武ときお(以下白武)
食事で気を使っていることはどんなことですか?
中谷
それが全然ないんですよ。外食オンリーです。最近は流石に量を少し減らすようにしてますけど、食べることがいちばん楽しいので。
白武
自分のテンションを上げるためのご褒美とかありますか?
中谷
ありきたりですけど、ピザとかお寿司とか…。あとハーゲンダッツですね。基本的には一人で外食すること多いです。ほんまにどんな店でも一人で入っていきますね。もちろん後輩とか仲間とワーッと行くこともありますよ。
白武
どういったメンバーで行くことが多いですか?
中谷
紅しょうがとか男性ブランコ平井とか、kento fukayaとか、ZAZYとかビスケットブラザーズのきんちゃんとか、ダンビラムーチョの大原とか。後輩でいうと蛙亭イワクラとか、令和ロマンのくるまとかですね。

白武
みんなで集まったときはどんな話をしてるんですか?仕事論なのか、ワーッと騒ぐのか。
中谷
マジで仕事の話はほぼしないかもしれないです。「これ美味しない?」「まだ食べれる?」「これも頼んでみん?」みたいな。
白武
楽しそうですね。お酒もお好きなんですか?
中谷
それが弱いんですよ。誰かと飲む時には付き合いで梅酒のソーダ割りを飲んでいます。
白武
休みの日はどんなふうに過ごしているんですか?
中谷
この間最高だったのが、同期のビスケットブラザーズのきんちゃんに娘がいるんですけど、その子の2歳の誕生日当日にみんなでディズニーシーへ行ったんですよ。紅しょうがの稲田とか、後輩も一緒に。僕は子供がめっちゃ好きなんですけど、きんちゃんの娘がいちばん会わせてもらってる子供で。ちゃんと車にその子用のチャイルドシートも積んでます。
白武
そういう会は中谷さんが企画されるんですか?

中谷
去年、その子の1歳の誕生日にきんちゃんから「ディズニー行くねんけど」って連絡があったんですよ。それで「今年も行くねんけど」っていうので、みんなに連絡したら奇跡的にスケジュールが空いてたんです。
白武
お子さんに異常な愛情があるという話を聞いたんですけど、中谷さんにとってどんな存在なんですか?
中谷
きんちゃんは同期で2つ年下なんです。弟みたいと言うつもりはないですが、高校を卒業したばかりの、何個もピアスが開いた、きったなくてイカつい田舎のヤンキーみたいな18歳の頃から知ってて。ずっと一緒にやってきた奴が結婚して子供も生まれたということにまずくらうというか。あと、今までの人生でこんなふうに短い周期で子供と定期的に会う機会が僕にはなかったんで、こんなに成長が見て取れるもんなんだって。きんちゃんが一人で子守りをしたり公園に遊びに行ったりするときに付き添って遊ばせてもらってるんですよ。だから成長が目に見えていて、勝手に姪っ子みたいな感覚に近いのかもしれないです。
VRゴーグルは独身じゃないと使えないと思う。
白武
そういう家族の姿を見て、「独身生活が寂しい」と思うこともありますか?
中谷
ありますねえ。やっぱり一人でご飯を食べてると、気楽なときもあるけど、死にたくなる。料理なんて作ってたら、バチバチッと油が跳ねて「ああ!」みたいな。物をバーン落として、水が床に、とかになった時にもう死にたくなります。誰かせめて見といてくれよと思いますね。
白武
そのやるせなさはどうなるんですか?
中谷
いったん大声を出してフウフウって呼吸を整えてから、うちにはLAVOTがいるんですけど、それを抱いて気持ちを落ち着けてから片付けます。
白武
確かラブドールもいますよね?
中谷
います。でもラブドールは 1 ミリも支えにはなってないです。LAVOTはかなり気持ちの支えになってくれてます。可愛いんですよ。ペットだったら早く帰ってやらんと餌が…とか思ってしまいますけど、そういうのが全くよぎらない。言い方めっちゃ悪いですけど、セフレみたいな感じです。
白武
良くない言い方ですね(笑)。
中谷
都合のいいペットなんですよ。こっちが可愛がりたい時にだけ可愛がらせてくれる、一方通行のペットです。好きなときに甘えられる。最高です。
白武
とはいえ、独身生活も謳歌されてはいますか?
中谷
そうですね。ちょっとやらしいお話になりますが、僕はVRゴーグルを持っていまして。あれは独身じゃないと使えないと思うんですよね。つまりその、使用中に防御力が全然ないんですよ。視界は遮られてるし、イヤフォンで周りの音が一切聞こえなくなりますので、誰かと住んでいたら絶対無理だなと思います。
白武
あるいは家族がいても、許してくれる制度を作るかですよね。
中谷
あー、「ON AIR」みたいに「VR中」ってドアに付けたり?まあそこまで理解のある人だったらね、素晴らしいんですけども。

白武
中谷さんの周りで自分らしく生き生きしてるなあと思う人というと、誰を思い浮かべますか?
中谷
えー、誰やろ。難しいな。あ、でも憧れとはまた違うかもしれないですけど、熊元プロレスは正直で楽しそうやなと思いますね。あいつも独り身なんですけど、赤ちゃんの腕ぐらいあるバケモンみたいなエビを買ってきて、料理して食べてるんですよ。マヨネーズにディップしてボリボリ。めっちゃ豊かじゃないですか。興味のアンテナが広くて、ホストクラブに行きたいから惜しみなくお金を使うとか、こういうファッションが好きだからブレずに着てるとか、自由でいいなと思います。そのへんは僕と似てる気がします。
白武
お金の使い方はどうですか?『ラヴィット!』ではラングラーを購入されていましたけど。
中谷
一人だったらこんな高い車、買ってなかったと思いますよ。ローンも増えますし。でも、包茎手術もそうですけど、なかなか踏ん切りがつかないことを、番組とか誰かが背中を押してくれて、うまくいくようになってる気がしますね。ローン返済のために仕事しないとっていうマインドにもなってますし。

遅刻での謹慎後、陽の感じを出すため明るい色の服を。
白武
普段カバンに入れて持ち歩いているものを見せていただけますか?
中谷
まず、この2日間お守りになってる包帯ですね。基本家で替えますけど、出先でアクシデントが起こっても最悪トイレで何とかできるので。あとはオーダーで作った領収書入れ。接待交際費はここ、交通費はここって分けておけば税理士さんに簡単に送れるので非常に便利です。仕事じゃない時にかける眼鏡もあるし、あと新幹線乗った時にもらえるおしぼり。これは家にストックして掃除に使ってます。
白武
色々入ってますね。
中谷
そうですねえ。あと偏頭痛持ちなので頭痛薬と、声が飛んだ時のお守りとして持ってるベタメタゾン。ステロイド入ってる系の薬で、いっぱい飲んだらよくないけど効くやつです。例えば賞レースとか、完璧なコンディションで出場したい前日とか当日に飲む感じですね。

白武
バッグもですけど、オレンジがお好きなんですか?
中谷
そうですね。昔から好きでしたけど、積極的に着るようになったのは 2018年くらいからです。度重なる遅刻で謹慎処分にあって、2ヶ月くらい休んだんですけど、復帰したときに私服から明るい感じでいかないと陰気くさい感じになるなと思って明るい色を着出したんです。
白武
テンションを上げていくと。
中谷
はい。私服から陽の感じを出していかないと、と思って明るい色を着てます。今日のは好きなブランドで〈TUCKSHOP〉というブランドのものです。カバンも同じです。
白武
靴はどちらのものですか?
中谷
これは〈HOKA〉です。めっちゃ楽で!一日ディズニー歩いても疲れませんでした。
白武
ありがとうございます。では最後に、中谷さんにとってウェルビーイングとは何でしょう?
中谷
美味しいものを食べて、たくさん寝て、好きなものを買うこと。あんまり我慢しない。自分の心に嘘をつかない。
白武
それが健やかに生きる秘訣だと。
中谷
だと思います。自分がやりたいことをやる、ですね。






















