ヨガと気づき|vol.42

メルボルン出身・東京在住の人気イラストレーター、エイドリアン・ホーガンさんは、数年前にヨガを始めて以来、ライフスタイルが少しずつ変わってきたそう。ヨガが与えてくれるささやかな日々の気づきを、毎週コミックエッセイ形式で紹介します。

イラスト・文/エイドリアン・ホーガン

僕は時々、通りに面した窓のあるヨガスタジオに練習しに行きます。

本来、ヨガとは内側に意識を向けるものですが、窓際で練習をしていると、ふと外の様子が気になってしまうこともあります。たとえば、通行人と目が合って気まずそうにそらされたり、近くでお酒を飲んだりタバコを吸っている人と目が合って、思わず笑ってしまうような瞬間があったり。

どちらが良いとか悪いとかではなく、まったく違う世界がふと交差するような、不思議な感覚になります。ヨガにしても喫煙にしても、みんなそれぞれ、自分を整えるための習慣やルーティンを持っていますね!

先生のコメント

そうですね、みんなそれぞれに自分を整える習慣がありますよね。その中で、ヨガというのは、自分の心身の状態に気づき、変化を認めていくものだと私は考えています。

ヨガの概念のひとつである「脱浴」は知っていますか? これは、強い欲求から解脱した状態を意味するもの。この欲求の詳細は、食欲・意欲・性欲・依存欲・歓楽欲・承認欲などなど、実にさまざま。どれも、自分に合わせてコントロールすることで、心が安定し穏やかに過ごすことができます。

人それぞれのヨガレベルや目的でも違ってきますが、大半の現代人にとっては、自分の生活スタイルに合わせて、欲望を完全に無くすことはせず、自分を苦しめない程度での脱浴で十分なもの。

けれど、そもそもモチベーションがないのなら、欲を軽減する行為としてのヨガや、仏教の修行など、心身と向き合う行為自体にストレスを感じてしまい、むしろ不健全な状態になってしまうことも。

私自身は、元々欲求が強い方ではなかったのですが、かつて楽しさの後に、生と死の狭間に直面する辛い経験をした時、この波をできるだけ平穏にしなければならないと思い、脱浴を目指し始めました。それからはヨガの修行に向き合い、やがて最高の恩師にも出会えたことで、ヨガを通して言葉では表せない体験ができ、今があります。

どちらにせよ、自分からやろうと決意して習慣化しない限り、変化は訪れません。心から変化したい、と思った時が、好機かもしれませんね。