しぶとい猫背は”筋膜ライン伸ばし”で撃退!

猫背になると外見だけでなく、健康にも悪影響をもたらすのは言うまでもない。日々の負債を“筋膜ライン伸ばし”でリセットしていこう。

取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/坂西 透 イラストレーション/山口正児 監修/高平尚伸(北里大学教授)

初出『Tarzan』No.900・2025年4月3日発売

万病の元の猫背は、筋膜ラインのばしで撃退
教えてくれた人

高平尚伸(たかひら・なおのぶ)/北里大学大学院医療系研究科整形外科学教授。医学博士。猫背や股関節の不調に対するセルフケアの方法と、その重要性を説く。

背骨のカーブが乱れ、全身不調の原因に。

猫背は見た目に老けて見える、カッコ悪いという外見だけでなく、さまざまな健康被害を引き起こす。

「猫背は頸椎のカーブが失われて頭が前に出たり、胸椎の後彎が深すぎたり、骨盤が後ろに倒れて腰が曲がったりした不良姿勢のことです。肩こりや首こりはもちろん、腰痛や自律神経のバランスの乱れ、呼吸が浅くなるといったさまざまな不具合を引き起こします」

と言うのは、整形外科と理学療法で整形外科的疾患の治療に取り組む北里大学教授の高平尚伸さん。

デスクワークで座りすぎ、スマホやPCの使いすぎ、日常生活はとにかく猫背になってくださいと言わんばかりの環境。放っておけば頸椎症や脊柱管狭窄症などの病気に進行することも。自力で改善するなら早く取り組むに越したことはない。

下のチェックで猫背姿勢に当てはまるという人は、高平さん考案の「筋膜ライン伸ばし」で今日から早速リセットを。

猫背姿勢チェック。

OKの姿勢

壁を背にして立ったとき、後頭部、肩、お尻、ふくらはぎ、踵の5点が壁についたら、正しい姿勢が保てている証拠。

NGの姿勢

同じく壁を背にして自然に立ったとき頭や肩が壁から離れたら猫背姿勢。背中と壁のスペースが狭く、膝が曲がるのも特徴だ。

猫背に関わる筋膜を毎日伸ばすべし。

全身の筋肉や内臓はファシアと呼ばれる薄い膜のような結合組織で覆われている。そのファシアの一つが筋膜だ。筋肉がスムーズに動くのは柔らかくて弾力のある筋膜が連携して動いているから。

ところがこの筋膜、運動不足や加齢といった理由で水分が失われ、本来の柔らかさや弾力性が低下してしまう。こうなると筋膜同士の情報伝達が滞り、全身の動きが鈍くなってしまったり姿勢が乱れてしまいがちに。

猫背に深く関わっているのは下の4つの筋膜ライン。毎日満遍なく伸ばして猫背改善を。

4つの筋膜ライン。

フロントライン

フロントライン

耳の後ろの突起から始まり、首すじから胸を通って腹、太腿、脛、足の指先に至るライン。猫背で重心が前に来るとこのラインが固まる。

バックライン

バックライン

眉毛から頭頂を通り、足の裏まで至る背中の筋膜ライン。猫背の人はこのラインが間違いなくこわばって硬くなっている。

ラテラルライン

ラテラルライン

後頭部から始まり、カラダの前と後ろを通って骨盤から脚の側面、足裏に至るライン。頭が前に来る猫背では首周辺のラインが硬くなる。

スパイラルライン

スパイラルライン

後頭部を起点に背中からお腹を斜めに横切って逆側の脚に至り、足の裏からカラダの背面を通って起点に戻る。骨盤後傾姿勢で硬くなる。

筋膜ラインを伸ばそう。

1.フロントライン

フロントライン

  1. 背すじを伸ばして立ち、片足を大きく1歩前に踏み出しながら両手の掌を合わせて頭上に伸ばす。
  2. 前脚の膝と股関節を直角に曲げて腰を落とし20秒キープ。できる人は視線を天井に向ける。脚を入れ替えて同様に。
できる人は!

さらにできる人は

2.バックライン

バックライン

  1. 両足を肩幅に開いて椅子の後ろに立つ。両手を前に伸ばして椅子の背に添え、上体を前傾させる。
  2. 上体を床と平行にし、頭を両腕よりも下に下げて20秒キープ。元の姿勢に戻って3回繰り返し。
3.ラテラルライン

ラテラルライン

  1. 両足を肩幅よりやや広く開いて立つ。片手を腰に当て、反対側の手を頭上に伸ばし、手首を直角に曲げて掌を真上に向ける。
  2. そのまま軽く反動をつけて弾むように10回真横に倒す。逆の手でも同様に。
4.スパイラルライン

スパイラルライン

  1. 両足をできるだけ大きく開いて立つ。腰を落として左右の手を膝の上に置く。
  2. 片方の肩を前に突き出しながら上体をツイストさせる。このとき視線は斜め上に向けて20秒キープ。逆側も同様に。
猫背のイトコ!? 股関節痛改善は3Dジグリングで。

整形外科的トラブルでまず最初に生じるのが猫背。これを放置すると次に引き起こされるのが股関節痛。

「猫背で頭の位置が前にズレるとカラダは無意識に股関節と膝を曲げてバランスをとろうとします。その結果、股関節の負担が増して痛みが出ることも」

対策は股関節を小刻みに動かし、関節の動きを促す滑液を行き渡らせること。おすすめは立って股関節を回す3Dジグリング。

3Dジグリング

  1. 背すじを伸ばして立ち、両足を肩幅に開く。
  2. 両手を股関節の上に添え、膝を曲げて腰を落とす。
  3. 骨盤を右回りに10回、左回りに10回回す。上体はまっすぐ保つこと。