梅酢の唐揚げをほおばりながら、アオイヤマダさんと「朝のルーティン」の大切さを再確認する。|麻生要一郎のテーブル・トーク

料理家・麻生要一郎さんは、人を招いてテーブルを囲むのが大好き。気心知れた友人から、会ってみたかったあの人まで。「テーブル・トーク」ではさまざまなゲストを招いて手料理を楽しむ時間を音声と写真でドキュメントします。

取材・文/平岩壮悟 撮影/表萌々花 ポッドキャスト録音・編集/浜本壮大 

ここは料理家・麻生要一郎さんの自宅。悩める若者から酸いも甘いも知るアーティストの先輩、旧知の仲から初めましての人まで、夜な夜な一癖も二癖もある人たちが円卓を囲み、麻生さんの手料理をほおばりながら日々のあれこれを語り合います。

この日、麻生さんが自宅に招いたのは、ダンサーで俳優のアオイヤマダさん。親子ほど年齢が離れているふたり。その縁を結んだのは、7年前のお弁当でした。

テーブルゲスト

アオイヤマダ
2000年生まれ、長野県出身。高校進学を機に上京し、表現者として活動を本格化。アーティストのMVへの参加、モデル、ナレーションなどノンジャンルで活動。映画『PERFECT DAYS』やNetflixシリーズ『First Love 初恋』などに俳優として出演している。

アオイさんから麻生さんへ。料理のリクエスト

はじめて麻生さんのお弁当を食べたのは、17歳の時、ミナペルホネンさんの撮影でした。上京して1年半の私はまだ撮影もそんなに慣れていなくて、少し緊張していました。

お腹も空いているはずなのに、心もお腹もキュッと固まっていたとき、「お昼休憩にしましょう」と出してくださったお弁当の手書きメニューをみて、一気に気が緩まってお腹がぐぅって泣きました。麻生さんのお弁当でした。

唐揚げと、卵焼きと、茗荷がぽってりとこちらを見ていました。むぎゅむぎゅなのに、潰れていない。食べた途端に笑顔がこぼれて、心がほっこりして、ちょっと涙がでそうになった。はじめましてのはずなのに、ただいまって言いたくなったあの味を、今でも覚えています。

また、ほっとする、麻生さんのごはんが食べたいです。

アオイヤマダ

アオイさんが食生活を見直す決心をした17歳の出来事から、麻生さんが“お弁当屋”になるまでのプレヒストリー、はたまた“花を選べないと体調が悪い説”まで。思い出の唐揚げを食べながら交わされたふたりの「テーブル・トーク」の模様はこちらから。

初めて麻生さん宅を訪れたアオイヤマダさん。カラカラと小気味よい音を立てるフライ中の唐揚げを覗き込んだり、カウンター越しに麻生さんと近況報告をしたり。

麻生さんへのお土産は柿と手漉きの和紙に綴ったメッセージ。「朝にフルーツを食べると本に書かれていたので」とアオイさん。

思っているより長く揚げるのが麻生式唐揚げの肝。ディープフライにすることで、お弁当に詰めてもサクサク感が保たれる。

アオイさんが熟読した麻生さんの新刊『365 僕のたべもの日記』にはドッグイヤーがたくさん。「調子が悪い日のことも率直に書かれていて、安心感を覚えました。私だけじゃないんだって!」

パートナーのお弁当をつくるのが毎朝の日課だというアオイさん。以外にも唐揚げはまだ揚げたことがないのだそう。

7年前に出会った“思い出の唐揚げ”に舌鼓を打つアオイさん。
「ただいまって言いたくなる味。すごく安心します」
思い出のお弁当に入っていた、ミョウガの甘酢漬け。
たまご焼きも完全再現。

切り干し大根とほうれん草のおひたし、具沢山の豚汁も唐揚げのお供に。

教習所での運命的な出会い。麻生さんの新島時代の話。おすすめのYouTubeヨガ。話題が広がり箸が進むにつれて、ふたりの表情は朗らかに、そしておしゃべりのトーンは高まっていった。

アオイヤマダさんへ

先日はお忙しい中、ありがとうございました。

直接お会いするのは凄く久しぶりなはずが、そんな気がしないのは、お互いにSNSで近況を知っているからと言う事だけでもない感じがして、何故だろうとずっと考えていました。

はじめてお弁当を食べてくれた時の記憶をアオイさんが大切にしてくれているように、僕もその時アオイさんが伝えてくれた言葉をずっと大切に感じています。その事は、お互いの心のどこかに同じような温度感で、ずっと存在していたからではないでしょうか。

年齢は違えど、アオイさんが表現者として歩み始めた頃、僕も同じように食の仕事で歩み始めた頃で、どこか思いが通ずるところがあったのかも知れません。その後も近い距離にいて、交わりそうで交わらない時が過ぎて、またこうして出会えた事がとても嬉しいです。

僕の日記の本も、読み込んで下さっている様子が伝わってきて本当に嬉しかったです。早速、あの夜におすすめをした天ぷら屋さんにも出かけてくれたので、とても嬉しかったです。

僕も久しぶりに松本の珈琲美学アベに行って、珈琲を飲みながらただのんびり過ごしたくなりました(毎回、お土産に翁堂のタヌキケーキを買っています)。冬の松本に流れるキリッとした空気と雪に覆われた山の景色が大好きです。

舞台に立ち続けて表現していく事は嬉しさや喜びもありつつ、僕の想像が及ばないような大変さがあるのだと思いますが、息抜きしたくなったらいつでも家に遊びに来て下さいね。待っています。

追伸:今度、皆でバスケしましょう(僕は下手ですが)。

麻生要一郎

本日の一品:梅酢の唐揚げのつくりかた

―材料(4人前)―

  • 鶏もも肉 2枚(500〜600g)
  • 梅酢と酒 2:1の割合で
  • 卵 1個
  • 片栗粉 大さじ2〜3
  • 油 適宜
  • すだち 適宜

手順

1.鶏肉を下処理し、食べやすい大きさに切る。
2.ボウルに梅酢と酒を合わせて鶏肉を30分浸す。表面が白くなったら頃合い。漬液の分量が少なめの時は、途中で上下を返すか、ポリ袋などを利用してもよい。漬液は捨てて、鶏肉だけを取り出す。

3.ボウルに卵を割り入れよく混ぜ、そこに2の鶏肉を入れて、よく絡ませる。揚げる直前に片栗粉を加え、よくまぶす。ポリ袋を使うと片栗粉を無駄なく使える。

4.油を180度に熱し、3の鶏肉を入れる。表面がカリッと揚がったら、最後に温度を10度ほど上げて、2分ほど揚げたら出来上がり。ディープフライにして鶏肉の水分を飛ばすと、冷めてもカリカリの食感が残る。鶏肉は大きく切るのがポイント。1枚を4〜5等分ほどに。

ポッドキャスト出演
麻生要一郎
アオイヤマダ
井手裕介(Tarzan Webプロデューサー)
平岩壮吾(Tarzan Webライター)

ポッドキャストスタッフ
ジングル・BGM:田中堅大
編集:浜本壮大
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