

Profile
中井彩乃(なかい・あやの)/東京服飾専門学校スタイリスト科卒。2014年にスタイリスト伊藤信子氏に師事し、2019年に独立。雑誌やブランドのビジュアル制作を中心に、キッズファッションやミュージシャンへの衣装提供なども手掛ける。
「ふだんはヴィンテージカーにも乗っているのですが、頻繁に故障するんです(笑)。もう少しラフに移動したいし、運動不足も気になっていたので、自転車を買いました」
スタイリストの中井彩乃さんはその職業柄、荷物が多いときは車を使う。でも自転車の方が移動しやすいときもあるという。



数々のコーヒーの名店でキャリアを積んだバリスタ、林さんが立ち上げたカフェ〈Autumn〉。〈Raw Sugar Roast〉の豆を〈MAHLKONIG〉のグラインダーで挽き、〈GINA〉で丁寧にドリップする。
「たとえば世田谷界隈は個人商店が多いから、自転車の方が立ち寄りやすいお店ってたくさんありますよね。このカフェ〈Autumn〉は、そんな場所のひとつ。わたしは毎日2回飲むくらいコーヒーが好きで、インスタグラムで知ったのをきっかけにここへ通うようになりました。オーナーである林さんこだわりのコーヒーと、彼のフレンドリーな人柄もあって、いつ来ても賑わっているんです」

運動不足が気になるという中井さんは、世田谷美術館へ訪れる前後に、砧公園近くのプールへ泳ぎにいくこともあるという。
〈Autumn〉から自転車で約10分。世田谷美術館も、中井さんお気に入りのツーリングルートだ。
「用賀駅に貼られる美術館のポスターでいま何が開催されているかをチェックして、“あ、いいかも”と、なんとなく自分の琴線に触れたら観に来ています。最近の企画で印象に残っているのは、『倉俣史朗のデザインー記憶のなかの小宇宙』。館内の内装を活かして、作品の椅子を配置しているのが魅力的でした。制作過程のスケッチが豊富に展示されているのもよかったです」


こうして日常的にアートやファッションを楽しむ中井さんは、フレームを選んで好きなパーツを組み合わせたヴィンテージの自転車に乗っている。そんな一台を買うのって、難しくはないのだろうか。
「仲の良い友だちが乗っていて、教えてくれる人が近くにいたというのもあるんですけど、ヴィンテージには自分の服に馴染みやすいフレームが多いと聞き、すごく腑に落ちて。わたしはもともと古着でしか手に入らないテイストの服を好きになったことから、ファッションの世界に入りました。だから、たまたま自分の好きな色である青のポイントカラーが入った白いフレームを見つけて、それぐらいの理由で選んでもいいのかなと、気負わずに買うことができたんです」


古着好きの中井さんにとって、ヴィンテージバイクには難しさよりも親しみやすさを感られじたという。直感的にフレームを決めたら、ペダルやハンドルグリップの色など、デザインに関わるパーツは自ら選び、そのほかはプロに任せた。
「中井さんが選んだのは、〈KUWAHARA〉のロードバイク《Club Sport》。フレームの持ち味が活きるよう、基本的に同じ時代のパーツを使って組みました。変速はダブルレバーに、前2段、後ろが7段。シンプルでリラックスし過ぎないポジションに仕上げています」
そう話すのは、中井さんが自転車を購入したお店〈WOOD VILLAGE CYCLES〉のオーナーである木村祐太さん。

「とにかく青が好き!」という中井さんは、自転車の随所に青を散りばめた。ブレーキワイヤーの留め具という、細かなパーツまで抜かりないところがニクイ。

カラーバリエーションが豊富な〈MKS〉のペダル《GRAFIGHT-XX》からも青をチョイス。

リアディレイラーには「SHIMANO ULTEGRA」の前身である「SHIMANO 600」を採用。12段変速が主流のいま、時代を感じさせる7段変速。

全体のシンプルさに合わせて、アウターケーブルはグレーを選んで控えめな印象に。
「うちの店に並んでいるのは、主に90年代のフレームです。新しい自転車と比べると、性能面では叶わないですね。重いし、スピードも劣ります。でも、その時代ならではのデザインとか、試行錯誤していた当時の規格とか、そういうポイントを楽しむのがヴィンテージの醍醐味なんです。その年代にしかない形や、好きなブランドのレアモデルなど、希少性を求めてこだわることもできます」
WOOD VILLAGE CYCLES
●東京都渋谷区本町6-41-15(Google Map)TEL 03-6300-4185。12時〜19時。月・火曜休(水曜は作業日)。@woodvillagecycles woodvillagecycles@gmail.com
中井さんはこの一台に出合って、ファッションの幅も広がったと話してくれた。
「きょう着ているゲームシャツのように、カジュアルだけどシンプル過ぎないスタイルにこだわりが強くなりました。これまでナップザックや防水性のあるような機能的アイテムにはあまり興味がなかったけれど、この自転車に乗るようになって、そういうファッションの知識も少しずつ増えてきています」
〈BICYCLE SPECIFICATIONS〉
フレーム: Kuwahara – Club Sport
ホイール: Araya – RT-520 × Shimano – C201
ステム: Nitto – unknown (vintage)
ハンドル: Velo Orange – Granola bar
グリップ: Rindow – Tarugata Grip
クランクセット: Shimano – 600
ペダル: MKS – GRAFIGHT-XX
タイヤ: Panaracer – Pasela 700×28C
バスケット: Wald – 137 basket