気になる部位に徹底アプローチ!フルモーション&レジスタンスで効率よくたるみ撃退。
全身のたるみの原因に直接アプローチするためには、はじめに狭くなった筋肉の可動域を目一杯広げてから(フルモーション)、筋肉に抵抗(レジスタンス)をかけて鍛える方法が効果的。今回はそんな「フルモーション&レジスタンス」に則ったメニューを、胸や腕、背中や足といった部位別に紹介する。筋トレは筋力レベルに応じて3つずつ用意してあるので(上腕だけは1種類のみ)、筋力に合うレベル1から無理なく試そう。
取材・文/井上健二 撮影/幸喜ひかり、園山友基 スタイリスト/佐藤奈津美 ヘア&メイク/村田真弓 イラストレーション/モリタクマ、小林ラン 監修/中野ジェームズ修一(スポーツモチベーション)
初出『Tarzan』No.885・2024年8月1日発売
教えてくれた人
中野ジェームズ修一(なかの・じぇーむず・しゅういち)/スポーツモチベーション最高技術責任者。PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー、アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士。アスリートの信頼も厚いトップトレーナー。
胸のたるみ
胸の大胸筋は腕を押し出す動作で働くが、日常生活でその機会は滅多になく、衰えて胸が垂れやすい。大胸筋の可動域を広げ、腕を押し出す動作を強化しよう。
女性のバストを支えるクーパー靱帯は筋膜で大胸筋とつながり、胸を鍛えると加齢などによるバストの下垂も防げる。
【フルモーション】フロントクロスライン(左右各10〜20回×1セット)
1.左膝を床について片膝立ちになり、右膝を90度曲げる。2.右手に500mlのペットボトルを持ち、右腕を伸ばして右斜め後方へ上げる。左手は腰に添える。3.左脚の股関節(腸腰筋)と脇腹(外・内腹斜筋)、右側の胸(大胸筋)まで斜めに走るクロスラインを目一杯ストレッチ。4.右側の胸、左側の脇腹と股関節を縮めながら、ペットボトルを左膝の外側へできるだけ大きな弧を描くように持っていく。5.骨盤を少し前に押し出して腸腰筋を少し縮め、大胸筋を完全収縮。6.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.1】 シングルアーム・ウォールプッシュアップ(左右各20回×2〜3セット)
1.壁のコーナーの前でまっすぐ立つ。2.胸の延長線上で右手を壁につき、右腕がまっすぐ伸びるまで壁から離れる。3.踵を上げて爪先立ちになる。4.右腕を曲げ、顔がコーナーを通り過ぎるまで右胸を壁に近づける。5.頭から踵まで一直線にキープ。6.右手で壁を押し、全身を床と垂直に起こす。7.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.2】デュアルチェア・プッシュアップ(20回×2〜3セット)
1.椅子2脚を肩幅程度に離して並べ、座面に両手をつく。2.両膝を揃えて床につき、爪先を立てる。3.肘を曲げ、胸を座面よりも低く下げて大胸筋をストレッチする。4.肘と膝を伸ばし、両手で座面を押して大胸筋を収縮させる。5.頭から踵まで一直線にキープしたら、元に戻る。
【レジスタンス Level.3】シングルアーム・プッシュアップ(左右各20回×2〜3セット)
1.床でうつ伏せになり、両膝を床につき、90度曲げる。2.両手を肩の真横につき、右手のひらを「パー」で開いて指先を外に向け、左手は「グー」で拳を握る。3.両肘を曲げ、鼻が床につくくらいまで胸を下げて大胸筋をストレッチ。4.右手のひらで床を押して右腕を伸ばし、大胸筋を収縮させる。5.左腕を前方に伸ばし、手のひらを開いて床に向ける。6.頭から膝まで一直線にしたら、戻る。7.左右を変えて同様に。
腹のたるみ
下腹が気になるが、それ以上にたるみやすいのが脇腹。脇腹の外腹斜筋と内腹斜筋は、体幹を捻ったり真横に倒したりする。日常でそんな動きは滅多にないため、衰えて皮下脂肪が溜まりやすい。脇腹をフルに伸び縮みさせてから腹筋トレを。Vアップで下腹のたるみも取れる。
【フルモーション】Cカーブ(左右各10〜20回×1セット)
1.右手に500mlのペットボトルを持ち、まっすぐ上げる。2.右脚を左脚の後ろにクロスさせて爪先立ちに。3.右腕と右脚を弓形に反らして大きな「C」を作り、右側の体側とお腹をストレッチ。4.できるだけ大きな半円を描くように右腕を下ろし、上体と頭を真横に倒して、右側の体側とお腹を収縮。5.倒し切ったら、ペットボトルの重みでより完全に収縮させる。6.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.1】サイドリフト(左右各20回×2〜3セット)
1.椅子の正面に右側を下にして横になる。2.右手を床につき、左手を椅子の座面に乗せる。3.右腕をまっすぐ伸ばし、上体を起こす。4.両脚を伸ばし、左脚を右脚にクロスさせる。5.両手で床と座面を押しながら、右側の脇腹(内腹斜筋)を収縮させ、腰を斜め上へ高く持ち上げ、戻る。6.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.2】ツイスティング・ジャックナイフ(左右各20回×2〜3セット)
1.両手を床についてうつ伏せになる。2.両腕を肩の真下で伸ばす。3.右脚を左脚の上からクロスさせて伸ばし、下半身を左側へツイスト。4.両手に体重を乗せ、弓形になるように腰を高く持ち上げ、左側の脇腹(外腹斜筋)と腹直筋を収縮させたら、元に戻る。5.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.3】Vアップ(20回×2〜3セット)
1.椅子の座面にバスタオルを置いて仰向けになる。2.へその裏側が座面の真ん中に来るようにする。3.右手で座面、左手で背もたれを持ち、姿勢を安定させる。4.上半身と下半身を下げ、お腹をフルにストレッチ。5.V字を作るように上半身と下半身を同時に持ち上げて腹筋群を強く収縮させたら、元に戻る。
手・腕のたるみ
上腕では前側で力コブを作る上腕二頭筋が目立つが、実は後ろ側の上腕三頭筋の方がサイズは大きい。三頭筋の機能は肘を伸ばすことだが、スマホやPCに夢中だと肘を伸ばすチャンスに乏しく、弱体化してたるみを招く。三頭筋が付く肩の可動域を広げて、しっかり鍛えよう。
【フルモーション】タオルスイング(左右各10〜20回×1セット)
1.左手にフェイスタオルの端を持ち、肘を高く上げて背中に垂らす。2.右手で下から反対の端を摑む。3.右手でタオルを下に引っ張り、左の上腕後ろ側をフルストレッチ。4.右手を離し、左腕を伸ばしてタオルを勢いよく前に振る。5.勢いのまま限界までタオルを後ろに振り、上腕後ろ側を完全収縮させる。元に戻る。6.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス】ナロウ・プッシュアップ(20回×2〜3セット)
1.床でうつ伏せになり、両膝を揃えて90度曲げて床につく。2.胸の真下に畳んだバスタオル2枚を重ねて置き、両サイドから持つ。3.脇を締める。4.肘をまっすぐ伸ばしながら両膝を床から離し、爪先を床につく。5.頭から踵まで一直線にし、戻る。
背中のたるみ
背中の僧帽筋や広背筋は大きく強力。それだけに使わないと衰えて皮下脂肪が溜まり、たるんでくる。背中は自宅では鍛えにくい部位。2Lのペットボトルをダンベルの代わりに、肘を引くロウイングで鍛錬する。レベル3がこなせたら背中は相当引き締まるはず。
【フルモーション】ロングレバー・スキャプラモーション(左右各10〜20回×1セット)
1.床で四つん這いになる。2.左手の下にタオルを置く。3.左手でタオルを右側に滑らせ、右腕の脇の下に差し入れる。4.左肩を床に近づけ、左側の背中(僧帽筋中部、広背筋)をフルストレッチ。5.左手を元に戻し、タオルが左肩の真下まで来たら、胸を開いて左腕を天井へ上げ、左側の肩甲骨を背骨に寄せる。元に戻る。6.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.1】ワンハンドロウイング1(左右各20回×2〜3セット)
1.椅子の座面に右足を乗せ、上体を床と平行に前傾させる。右手で背もたれを持つ。2.左手に2Lのペットボトルを持ち、肩の真下に下げて左側の肩甲骨を背骨から離す。3.上体の前傾を保ち、左肘を天井へ向けて引き、左側の肩甲骨を背骨に近づけ、ボトルを脇腹に引き上げる。元に戻る。4.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.2】ワンハンドロウイング2(左右各20回×2〜3セット)
1.椅子に浅く坐り、左手で2Lのペットボトルを持つ。2.上体を深く前傾させ、左肩の真下でボトルを構える。3.右腕を左膝の外側へ伸ばし、右の肩甲骨を背骨から離す外転を行って固定。4.左肘を天井へ向けて引き、ボトルを脇腹に引き上げる。元に戻る。5.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.3】ダイアゴナル+ワンハンドロウイング(左右各20回×2〜3セット)
1.床で四つん這いになり、左手で2Lのペットボトルを持つ。2.ボトルを床で滑らせて左腕をできるだけ前方へ伸ばす。3.右脚を後ろに伸ばして爪先を立てる。4.左肘を天井へ向けて引き、ボトルを脇腹に引き上げる。5.同時に右脚を床と平行に伸ばす。元に戻る。6.左右を変えて同様に行う。
尻のたるみ
運動不足だと即たるむのが、お尻の大臀筋と中臀筋。ドンキーキックでお尻の筋肉と関節(股関節)の可動域を広げ、筋トレするべし。仰向け種目もポピュラーだが、重力刺激で骨萎縮によるたるみを避けるため、立位で。
下半身の鍛錬は高負荷が必要だから、片脚ずつ行おう。
【フルモーション】ドンキーキック(左右各10~20回×1セット)
1.両手、両膝を床について四つん這いになる。2.左膝をできるだけ胸に近づける。3.頭も膝に近づけ、左側のお尻の大臀筋をフルストレッチする。4.頭を上げ、左足で天井をキックするように、股関節から左膝を後ろへできるだけ高く引き上げ、左側のお尻の大臀筋を最大収縮させ、元に戻る。5.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.1】クロスステップ(左右各20回×2~3セット)
1.エコバッグに2L入りのペットボトルを2本入れて左手で持ち、肩の真下に下げる。2.右脚を左斜め後方へ伸ばす。3.両膝を曲げて沈み込む。4.両膝を伸ばして立ち上がり、左側の大臀筋を刺激。両足を腰幅に揃えたら、元に戻る。5.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.2】ヒップスタンドアップ(左右各20回×2~3セット)
1.椅子の座面に左膝を曲げて横に倒して乗せ、左側の大臀筋をストレッチ。2.右脚を後ろに伸ばす。3.両手で椅子の座面を横から持つ。4.上体を前傾する。5.左側の大臀筋の力でお尻を高く持ち上げ、バンザイをするように両腕を天井へ伸ばす。戻る。6.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.3】シングルレッグ・スタンドアップ(左右各20回×2~3セット)
1.両手に2L入りのペットボトルを1本ずつ持ち、両肩に担ぐ。2.椅子の正面で右膝を床についてしゃがむ。3.上体を前傾させて、左膝を爪先より前に出して鋭角に曲げ、左側の大臀筋をストレッチさせる。4.左膝と股関節を伸ばしながら立ち上がり、椅子の座面に右足を乗せて、上体をまっすぐにする。元に戻る。5.左右を変えて同様に行う。
脚・足のたるみ
太腿前側の大腿四頭筋、後ろ側のハムストリングスをどちらもバランスよく鍛えて、たるみのない美脚へ導く。縦方向への刺激も加え、骨の萎縮によるたるみも防ごう。
レジスタンス(筋トレ)は痛みや違和感のない範囲内で膝の角度を90度より鋭角にするとより効果的だ。
【フルモーション】チェアキック(左右各10~20回×1セット)
1.椅子の座面に右側のお尻だけを乗せて坐る。2.左膝を曲げて後ろに引き、左手で左足の踵を摑む。左の太腿後ろ側のハムストリングスが完全収縮し、太腿前側の大腿四頭筋がフルにストレッチする。3.左の股関節から左脚を前に蹴り出し、膝をできるだけ伸ばし、爪先を膝に向けるように左足首を屈曲させる。これで左の太腿後ろ側のハムストリングスがフルストレッチし、太腿前側の大腿四頭筋が完全収縮。4.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.1】スモウスクワット(20回×2~3セット)
1.両足を肩幅よりも大きく開き、爪先を外側に向ける。2.スモウの蹲踞をするようにそのまましゃがみ、両腕を膝の内側に入れて爪先を摑む。3.爪先を摑んだまま、両膝を伸ばして頭をできるだけ下げる。元に戻る。
【レジスタンス Level.2】シングルレッグ・フルレンジスクワット(左右各20回×2~3セット)
1.椅子の正面に横向きでしゃがみ、左膝を立て、右膝を床につける。2.左手を左膝に添え、3.右手を座面に乗せる。4.深く前傾して左足に体重をかける。5.左足で床を踏み、片脚立ちになる。6.左右を変えて同様に行う。
【レジスタンス Level.3】トウバランスリフト(左右各20回×2~3セット)
1.タオルを厚めに畳み、左足の踵で踏む。2.右脚を後ろに伸ばし、右膝を床につける。3.上体をできるだけ深く前傾させる。4.両手を床につく。5.左脚の太腿前側の大腿四頭筋を意識し、左膝を伸ばして立ち上がる。6.左右を変えて同様に行う。