快楽のためだけではない。正しく学ぶ40歳からの性学。

年を重ねるごとに性生活においてもスタミナの衰えを実感するのは然り。個人差はあろうが、最大の原因は年齢であろう。ここでは40代から直面しがちな性の問題について、男女それぞれの立場から真面目に考える。

取材・文/井上健二 イラストレーション/Hi there 取材協力/小堀善友(医学博士)、宋 美玄(医学博士)

初出『Tarzan』No.884・2024年7月18日発売

教えてくれた人

宋 美玄先生/そん・みひょん 産婦人科医。医学博士。丸の内の森レディースクリニック院長。妊娠出産問題、女性の性について女性の立場から積極的に啓蒙する第一人者。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)、『大人のセックス』(講談社)など。

小堀善友先生/こぼり・よしとも プライベートケアクリニック東京 東京院院長。泌尿器科医、医学博士。獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授などを経て現職。専門は男性性機能障害、男性不妊症、性感染症。日本泌尿器科学会専門医・指導医などを務めている。

 

セックスには3つの要素がある。年代に応じてその比重は変わるのだ。

若い頃は、まさに若気の至りでセックス=快楽のためと安直に考えがち。でも、さすがに40代ともなると、遅まきながらセックスの意義は決して快楽だけにあるわけではないと気づけるようになる。

40歳からの性学

「セックスには大きく分けて、快楽、生殖、協調という3つの要素がある。3つとも等しく重要ですが、どこにより重きを置くかは、ライフステージによって変わってきます」(プライベートケアクリニック東京 東京院の小堀善友院長)

一般的には、20代まではやはり快楽としての要素が大きく、子どもが欲しいカップルにとっては20代以降になると生殖としての意味合いが強まってくる。

対照的に、快楽や生殖としての意義が薄れる40代以降も、セックスには大切な役割がある。スキンシップなどでパートナーとの絆を強め、二人の協調性を深めるためのセックスが重視されるようになるのだ。

セックスは健康のバロメーターでもある。頻繁に勤しむほど、寿命が長いという説も。

20〜30代は若さに任せて健康を顧みずに突っ走ってきたタイプも、40代に入ると糖尿病などの生活習慣病に悩む人がボチボチ増える。そこで改めて注意を向けたいのが、セックスがきちんとできているか。

「週2回以上セックスする男性と比べると、月1回以下しかしない男性は、死亡率が2倍になるという研究があります。またセックスの回数が多ければ多いほど、心臓病や精神的な疾患を発症するリスクが低くなるという報告もあります」

セックスと健康にはどうやら相関関係がありそうだが、「セックスをするから健康になる」という因果関係があるかどうかは不明。病を得るとセックスはおそらく後回しになる。ならば、セックスするから健康なのではなく、健康だからセックスが楽しめているだけなのかもしれない。

セックスが満足に享受できなくなったら、カラダからの警告と捉えて生活習慣を再点検するきっかけに。

心身の変化が顕著に表れる更年期こそ、プレイを変えるチャンスだ。

日本女性は平均すると45歳から55歳の間に閉経を迎える。閉経とは月経が完全に停止すること。それまで盛んだった女性ホルモンの分泌がストップするからだ。

閉経前後の5年間、合計10年間を「更年期」と呼ぶ。この間、病気を伴わないにもかかわらず、日常生活に何らかの支障が出るものを「更年期障害」という。

更年期は女性だけのものとまだまだ誤解されがちだが、男性でも40代前後から男性ホルモンの分泌量が減り始めると、更年期が起こり得る。これを女性のものと区別するために「男性更年期」と称する。

「男女ともに体調が変化する更年期はパートナーとのセックスの中身を見直すチャンス。女性にとっては、これまで男性に“それはイヤ!”と素直に伝えられなかった行為も、“もう更年期だからダメ”とわかりやすく伝えられるでしょう」(産婦人科医の宋美玄先生)

40代が直面する性の問題とは?

40代男女に待ち受ける性の危機や課題を5つのキーワードから考察する。表面化する問題、そして原因と対策は?

1.性欲

ホルモンバランスの乱れが“その気”を左右。

女性の性欲にも実は男性ホルモンのテストステロンが作用する。40代からはその力が強くなり、性欲が高まるという都市伝説を聞くが。

「間違いです。テストステロンが増えることはありません。女性ホルモンの分泌低下に伴い、存在が目立ってくるだけで、パワーアップはしない。

“欲求を持て余す熟女”というのは、男性が作り上げた幻想です。そもそも性欲は10代後半〜20代で絶頂に達し、それからはゆるやかに下がっていきます。そして、女性は元から性欲が弱い人も多い。若い頃から“協調”に重きを置いて肌を合わせる部分も大きい」(宋先生)

鍵を握るホルモンは、脳にある視床下部が下垂体に働きかけ、性腺刺激ホルモンを出し、卵巣から分泌される。ちなみにストレスや加齢で女性ホルモンのバランスは乱れやすい。すると、疲れは抜けず、メンタルもグラつく。さらにタスクを分担したパートナーも手一杯だと、自ずとセックスへの関心が薄れていく。

また、授乳期間中も然り。この時期は膣の潤いを保つエストロゲンの分泌はほぼゼロになり、母乳を作るホルモンのプロラクチンの影響で妊娠しづらいカラダに。好き嫌いの次元ではなく本能でダメなのだ。

「この間に夫からのオファーがあったら“赤ちゃんが小さくて心身の準備が整わない。永遠に続くわけではないし、あなたのことは変わらず愛している”と説明しましょう」

たった一言が明るい未来を作る。

ストレスが男性の性欲を萎えさせる。

70歳でも性欲が旺盛なタイプもいれば、30〜40代から性欲が落ちる人もいる。その違いには「生殖腺(性腺)」のパワーが関わる。

生殖腺とは、男性の精巣と女性の卵巣のこと。いずれも性ホルモンを作るほか、精巣は精子を作って送り出し、卵巣は卵子を含む卵胞の保存・成熟・排卵を担っている。

「男女ともに、生殖腺が人体でいちばん早く老化が始まる。精巣が衰えると、男性ホルモンのテストステロンの分泌が減り、精子の数や運動性なども低下します」(小堀先生)

テストステロンは、脳に働いて快楽物質ドーパミンを増やし、性欲や性衝動を高める。20代をピークにテストステロンが減ると、それにつれて性欲も徐々に落ち始める。

40代以降では公私ともに責任ある立場に立つ機会が多くなり、それにつれてストレスも増える。このストレスも性欲の減衰に関わる。

ストレスが招く不安や緊張が募ると、脳の視床下部でCRF(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌される。

精巣に「テストステロンを作れ」というサインを出すのは、視床下部の下にある下垂体。CRFが分泌されると下垂体から出るサイン(性腺刺激ホルモン)が減り、テストステロンも減少するのだ。

加齢は止められないが、ストレスはマネジメントできる。40代以降もセックスを積極的に楽しむため、ストレスはスポーツや趣味などで適度に発散して溜めない心がけを。

2.性機能トラブル

エストロゲンが減ると濡れずに痛む。

ハグしてキスをするうちにカラダの底から幸せがこみ上げてくる。同時に性器は湿り気を帯び、クリトリスも膨張。このままオーガズムへと達したら至福の極み♡なのだが、年齢とともにそう簡単にいかなくなる。

「内性器(卵管・子宮・膣)と外性器(陰核・陰唇)にある毛細血管は、興奮すると拡張します。それにより血管壁が開き、潤湿液が溢れる。一連の動きを支えるエストロゲンの分泌は、40代半ば頃から減ります。そうすると血流が滞る。結果、性器の興奮は控えめになります」(宋先生)

感度の低下も伴い、濡れづらい。そんな状態でパートナーを受け入れると、今度は性交痛が襲う。挿入時に手前がヒリヒリ痛んだら、まさにそれ。解決策として潤滑剤の導入を。

またもし、膣の奥が痛んだら子宮内膜症などの疾患が潜む可能性も。体位を工夫しつつ、婦人科の受診も視野に入れる。さらに閉経後にはヴァギナの乾燥が深刻化。膣内に棲む乳酸菌も減り萎縮性膣炎を招く。それらを救う手立てはあるのか。

「エストロゲンを薬で補うホルモン補充療法(HRT)があります。他には膣壁のコラーゲンの増生を促すインティマレーザー(下写真)も。ふわふわに戻った膣はフィット感も復活すると注目を集めています」

ちなみに卵巣機能の低下は、不正出血を引き起こすことも。さらには月経周期の変化や経血量の増減にも関わる。これまでとは違った兆候を見逃さないようにしておこう。

40歳からの性学

レーザーを当て膣粘膜の血流を促進し、組織を若返らせる。処置から約1か月後に変化を感じるそう。Fotona Japan

勃起障害、射精障害とは?

セックスを行うのが困難な状況を「性機能障害」と呼ぶ。男性には勃起障害(ED)と射精障害がある。

EDとは、性交時に十分な勃起が得られない、または十分な勃起が維持できないもの。「器質性」と「心因性」に分類できる。

器質性でもっとも多いのは、動脈が狭く詰まりやすくなる動脈硬化などにより、勃起に必要な血流が確保できないもの。40代以降に増えてくる。

他に、糖尿病などで勃起に関わる神経がダメージを受けることでも発症する。心因性は、勃起を司る脳のトラブルによるもの。ストレスやプレッシャーなどが引き金だ。

器質性にも心因性にも《バイアグラ》などのED治療薬が効く。

「EDは中高年の病気というイメージもありますが、若い人が不妊治療中にEDになる場合もある。自律神経のうち、勃起を促すのは血管を広げる副交感神経。ところが“妻の排卵日だから今夜は頑張らないと!”などと緊張すると、血管を縮める交感神経が優位になり、勃起が起こりにくくなるのです」(小堀先生)

射精障害には、射精のタイミングが上手くいかない早漏と遅漏、マスターベーションでは射精できるのに女性の膣内だと射精できない膣内射精障害がある。

「早漏には、自由診療でよく効く薬があります。遅漏に関しては最終的には射精を諦めるという選択肢もある。射精以外で心身が満たされるようなセックスを追求するのも一考」

日本におけるED有病率(全国推計)

40歳からの性学

40代で中等度EDに悩む人が増えて、50〜60代前半では中等度と完全を合わせたEDの有病率は40%を超えるようになる。

出典/丸井英二「わが国におけるEDの疫学とリスクファクター」

医学のあゆみ2002; 201: 397-400(ED診療ガイドライン[第3版])

3.不妊と生殖

40代でも諦めるのはまだ早い。

胎児の頃に母親のお腹の中で蓄える卵子の元になる卵母細胞は約700万個。この世に生を授かった時点で200万個まで減少する。

月経が始まる思春期にはおよそ30万個となり、そのうち閉経まで排卵に至るのは400〜500個といわれる。

そして37歳頃を境に急速にストックがなくなっていく。どんなに医療が発達しても補充できない。さらに卵子の質にも異変が起こる。23本の染色体が1本増える染色体異常が見受けられるように。

妊娠率は右肩下がり、受精できたとしても流産のリスクも高まる。ただし、希望の光はある。

「40歳から妊活に取り組んだ人の半数は、体外受精による出産が見込めます。世間で思われているより成功しやすい。ただそれは複数回試みた結果で、1回当たりの着床率となるとわずかなのは事実。ですが、可能性はゼロではありません」(宋先生)

2022年より不妊治療が保険の対象となった。開始時に女性が40歳以上43歳未満の場合は1人の子どもにつき最大3回まで適用される。この措置によって不妊治療へと踏み込む年齢が前倒しにもなっているそうだ。話題の卵子凍結も気になるが。

「残念ながら40歳以上には推奨できません。また仮に31歳で凍結し、40歳で妊活を始めたとします。その場合は保管した卵子ではなく、卵巣にあるものを活かした方がいい」

凍結のダメージで質が低下するケースもあるそう。妊娠は関門の連続だ。でも道はまだ閉じていない。

40歳からの性学

狭き門でも1985年と比べると2023年に40代で母になった人の数は約5.6倍に増加。晩婚化、体外受精技術の進歩などさまざまな要因が反映。

出典/厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計の概要」

出生数の年次推移,母の年齢(5歳階級)別

増える男性不妊3つの理由

前述のように、精巣と卵巣という生殖腺は老化が始まるのが早い。

「このため男女ともに35歳を境として生殖機能が落ち、体外受精の成功率も下がります」(小堀先生)

不妊症の半数(約48%)には男性が関わっている。加齢とともに増える男性不妊の原因には、❶造精機能障害、❷性機能障害、❸精路通過障害という3つがある。

造精機能障害とは、射精された精液中の精子の数が少なすぎたり、運動性が低下したりしているもの。

性機能障害には、前述した勃起障害と射精障害がある。

精路通過障害とは、精巣で作られた精子が体外に出るまでのルート上に何らかの障害があるため、精液中に精子が出ないものをいう。

なかでも造精機能障害は、過半数が原因不明。このため、偏りのない食事や適度な運動を意識する、十分な睡眠、ストレスマネジメントなど、いわゆる健康的な生活習慣を心がけるくらいしか対策はない。

「最終的には、パートナーとともに不妊治療が必要になります。また精子は定期的に射精していた方が、老化ストレスが下がり、運動率は上がることが知られています。最低週1回は、マスターベーションでもいいので射精することをお勧めします」

性機能障害や精路通過障害があったとしても、子作りを諦める必要はない。健全な精子さえ取り出すことができたら、体外受精などで妊娠に結びつけることは可能なのだ。

高齢化精子から生まれる子供は長生き?

細胞は分裂して新陳代謝するが、無限に分裂できるわけではない。DNAを収める染色体を保護するテロメアという先端部分が分裂のたびに短くなり、長さが半分ほどになるとそれ以上分裂できなくなる。

「だが男性は高齢になるほど精子の染色体のテロメアが長いという研究報告も。その精子から生まれた子どもは細胞分裂が長続きするので、長生きできる可能性も」(小堀先生)。

4.更年期と性

ゆらぐカラダの状態をきちんと伝える。

前述した通り、50歳の足音が聞こえ始めた頃に生理と別れを告げる。その前後10年間の女性の心身の変化は劇的なものがある。

根本にあるのはエストロゲンの減少および分泌の停止だ。視床下部からの指令に応えて規則正しく出せていたものが、卵巣機能の衰えとともに規定値に達しなくなってくる。

追加要請があっても無い袖は振れない。そうすると、脳がパニックを起こしてホルモンバランスが乱れるのだ。これまでに挙げたセックスへの関心の薄れ、性交痛、萎縮性膣炎といった生殖機能の低下だけでなく、ほてり&のぼせ、寝汗といった血管運動神経系の症状や、手指の痛み、しびれ、変形、関節痛となって表れることも。さらに、不眠、めまい、抑うつなどメンタルにも不調をきたす。

もちろん全員が「更年期障害」になるというわけではなく、個人差はある。そしていつどんな形で表れるかも予想できない。ただ、これらの症状がいくつか見受けられたら、パートナーにはそのつど知らせておいた方が、いらぬすれ違いや衝突を避けられそうだ。そして、日常生活で緩やかにする方法も知っておきたい。

「エストロゲンと似た働きをしてくれるエクオールのサプリメントを摂取するのは有効です。大豆イソフラボンを摂取すると腸内細菌の力でエクオールに変化しますが、体内で産生できるのは2人に1人といわれているので、サプリが頼りになりそうです」(宋先生)

男性更年期と適切に向き合う

近年、男性更年期とそれによる更年期障害の存在が明らかになった。

女性更年期障害は女性ホルモンの分泌が止まって起こるが、前述のように男性更年期障害も加齢で生殖腺(精巣)が衰え、男性ホルモンのテストステロンが減少するのが原因。

このため「LOH症候群(加齢性腺機能低下症)」ともいう。すでに触れた性欲の減退、生殖機能の低下以外にも、疲れやすさや関節痛・筋肉痛といったフィジカル面の症状、イライラや不安、不眠、抑うつ、記憶力や集中力の低下といったメンタル面の症状もある。

「ただし男性更年期障害の治療効果は、本人の満足度という主観的な物差しでしか評価できない。血中テストステロン濃度を調べてみて減少していた患者さんに、テストステロンを補充して不快な症状が緩和できたら、“あなたは男性更年期障害でした”と診断します。こうした手法を“診断的治療”と呼んでいます」(小堀先生)

テストステロンを補充しても症状が軽快しなかったからといって、「よかったですね。あなたはどうやら男性更年期障害ではありませんでした!」と一件落着にはならない。

「不快な症状に動脈硬化や本物のうつ病などが隠れていることもあり、それらはテストステロンでは改善しない。何でも更年期障害によるものと安易に片付けず、より詳しい診察で深刻な病気の有無を確認し、適切に治療することが求められます」

5.マスターベーション

メリットだらけ。セルフプレジャーの効能

愛する人とめくるめく夜を過ごしたのも今は昔。ご無沙汰の間にも性機能は衰えていく。セックスの再開時に膣のトラブルがないか不安だ。

「長いセックスレスで萎縮性膣炎を危惧して婦人科を受診される方もいて、膣鏡を用いて柔らかく開くかどうかをチェックします。ただ、それはあくまで平常時のこと。性的興奮状態にあるときにどうなるかは予測がつきません。

それを知るためにもマスターベーションがオススメ。ちゃんと濡れてセックストイが挿入できたら問題ありません」(宋先生)

思わぬ視点からの提案だが、マスターベーションによって得られるものは大きい。まず、自身の性器のコンディションを把握できる点。普段は気付きづらい、フェムゾーンのニオイの変化にも敏感になれる。

「加齢から病まで理由はさまざま。単にアンダーヘアに汗やおりものが付着してニオイを発することも。その場合は脱毛やカットで防げます」

次にマイ性感帯が分かるように。

「オーガズムは学習です。一人でもしていれば感度は上がってきます」

絶頂に達すると、愛情ホルモンのオキシトシンや幸せホルモンのセロトニンを分泌。幸福感を生み出し、ストレスを吹き飛ばしてくれる。

「頻度は月に数度程度で充分。むしろ“したい”という欲求が起こるかどうかを性の健康バロメーターにしてもいいかもしれません。メンタルやカラダのゆらぎがあると、そんな気持ちにならないですから」

40歳からの性学

グッズも一考。クリトリスを優しく吸う《ウーマナイザー リバティ2》(ウーマナイザー)15,540円、ラブピースクラブ

間違ったオナニーは射精障害を招く

前述した通り、セックスの回数が多いほど元気に長生きできると考えられるが、マスターベーションもやればやるほど健康と長寿を約束してくれるのだろうか。

「世界には教義でマスターベーションを禁止している宗教もあります。ですが、そうした宗教を信じる人たちが不健康で短命という事実はありませんから、マスターベーションと健康や寿命の間に明確な関連性はなさそうです」(小堀先生)

前述のように、妊活のためには週1回程度のマスターベーションで精子をリフレッシュした方がいいが、マスターベーションでより大事なのは回数よりもやり方。間違った方法だと正常なセックスを妨げる性機能障害を誘発する場合もある。

その悪しき典型が、硬い床や畳、シーツなどにペニスを直接強く押し付けたり、擦ったりして行うもの。通称「床オナ」だ。

「床オナに限らず、強すぎる刺激で射精する癖がつくと、柔らかく湿った女性の膣内では物足りなくなる。十分な刺激と快感が得られないため、射精できなくなる膣内射精障害を起こす恐れがあります」

床オナにハマりすぎて強烈な力を加えると、勃起したペニスを覆う白膜という膜が破けて折れる「陰茎折症」を発症することも。マスターベーションは自らの手を使い、強すぎない刺激でソフトに行おう。