睡眠不足に悩む人は試す価値あり。ポケモンスリープで睡眠はどう変わる?

睡眠の状態を計測し、計測データと紐づいて現れるポケモンたちの寝顔をリサーチしてポケモン寝顔図鑑に登録する睡眠ゲームアプリ『ポケモンスリープ』。ゲームだと侮ることなかれ。世界的な睡眠学者が監修した、信頼を置ける睡眠測定アプリでもあるのだ!その魅力と実力を監修者、開発者に聞いた。

取材・文/神津文人 撮影/小川朋央

初出『Tarzan』No.876・2024年3月21日発売

ポケモンスリープ

日本人の睡眠時間が1時間以上延びました

睡眠ゲームアプリ『ポケモンスリープ』をご存じだろうか。簡単に説明すると、枕元にスマートフォンを置いて眠り、睡眠の状態を計測し、朝起きた際に計測データと紐づいて現れるポケモンたちの寝顔をリサーチしてポケモン寝顔図鑑に登録するというゲームだ。

『Pokémon Sleep』

2023年7月20日に配信開始されたスマートフォン向けアプリ。スマートフォンを枕元に置いて眠ると睡眠が記録され、睡眠パターンが「うとうと」「すやすや」「ぐっすり」の3パターンに分類される。朝起きたら、集まってきたポケモンの寝顔を調査し、寝顔図鑑の完成を目指す。集まってきたポケモンたちは仲間にすることもできる。

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睡眠に関する監修をしているのは、世界的な睡眠学者である筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長の柳沢正史先生。ゲームだと侮ることなかれ。睡眠測定アプリとしても信頼を置けるのだ。

眠りのプロフェッショナルが監修

眠りのプロフェッショナルが監修 Pokémon Sleep

『ポケモンスリープ』の睡眠に関する監修をしているのは、世界的な睡眠学者の柳沢正史先生。24年間にわたりテキサス大学とハワードヒューズ医学研究所で研究室を主宰し、1998年には睡眠・覚醒を制御するオレキシンを発見した。2012年、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム国際統合睡眠医科学研究機構を設立。ノーベル賞候補とも目されている。

『ポケモンスリープ』の凄さは、ゲームの面白さや斬新さにとどまらない。なんと、ユーザーの睡眠時間を延ばすことに成功している。プレイ初期の日本のユーザーの平均睡眠時間は5時間52分だったのだが、3か月以上継続プレイしたユーザーデータを算出すると約1時間10分も長くなっていたのだ。この結果には監修の柳沢先生も驚きを隠せなかったよう。

「多忙で睡眠を軽視しがちな若者や現役世代が、ゲームをより楽しむために積極的に睡眠をとるようになったという事実は、従来のゲームは睡眠を妨げるという社会認識を覆すもの。また、ゲームのようなその人に合った動機付けによって、睡眠ウェルネスを大きく向上させる行動変容が生じる可能性を示すものです。今回の結果に、睡眠研究者としての驚きや興奮と、このゲームの監修者としての大きな喜びを感じています」

ポケモンたちがあなたの睡眠不足も解消してくれるかもしれない。

『ポケモンスリープ』をプレイするほど眠りたくなる!?

世界7カ国の平均睡眠時間ランキング

Pokémon Sleep アンケート

※7か国の初日から7日間の平均睡眠時間

プレイ初期7日間の日本ユーザーの平均睡眠時間は5時間52分で計測を行った7か国の中で最下位。世界平均と比べて30分以上短かった。それが1か月後には6時間27分、3か月後には7時間3分と平均睡眠時間がグッと長くなった。

日本のユーザーの平均睡眠時間の変化

Pokémon Sleep アンケート

日本のユーザーに対して行ったアンケートでは、3か月以上プレイしているユーザーの約83%が「朝起きるのが楽しみになった」と回答し、約88%が「睡眠習慣の改善を実感した」と答えている。日本人の睡眠時間の短さを憂いていた柳沢先生も「やればできるんだ」と感じたそう。『ポケモンスリープ』が日本人の睡眠を大きく変えるかもしれない。

『ポケモンスリープ』のプロデューサーに聞く

寝不足がちな人々の睡眠時間アップに大きく貢献してくれそうな『ポケモンスリープ』。構想から実に5年半の歳月を費やして開発されたアプリは、何を目指しどのようにして生まれたのだろうか。

「今から6年ほど前に、スマートフォンを使った睡眠測定の技術を知る機会がありました。自分で睡眠測定をやってみると、面白いなと思う一方で1週間ぐらいするとこんなものかと飽きてしまう部分もあって、これをゲームと組み合わせたら面白いものが作れるのではないかと思ったのがきっかけです」と、『ポケモンスリープ』プロデューサーの小杉要さん。

Pokémon Sleep 株式会社 ポケモン 小杉 要さん

〈株式会社 ポケモン〉小杉要さん

ユーザーの睡眠時間を1時間以上も長くすることに成功した『ポケモンスリープ』だが、それを目指して作ったわけではなかったという。

「睡眠をエンターテインメント化することで、睡眠に対する意識がポジティブになってくれたらいいなという想いはありましたが、社会が抱える課題を解決するぞという意気込みはなかったですね。蓋を開けてみると、予想以上に課題解決に繫がっていて不思議な感じです」

睡眠スコアは8時間半以上(16歳未満は11時間以上)で100点満点となり、1週間規則正しく就寝・起床すると報酬がもらえる仕組みになっている。

「監修の柳沢正史先生から、睡眠時間の短さとともに、週末の就寝・起床時間が遅くなることで起こる社会的時差ボケが課題になっているという話を聞き、起きる時間を一定に保つと得をするデザインにしました。本来、必要な睡眠時間は人それぞれだと思いますが、複雑にするとポイントが分かりにくくなるので、目標はシンプルなものにしました」

Pokémon Sleep

アプリを立ち上げ、スマートフォンを枕元に置いて眠るだけで、自動で睡眠が計測、記録、分析される。目指すのはポケモン寝顔図鑑のコンプリート。100種類以上のポケモンが登場し、1種類のポケモンに対して複数の寝顔が用意されている。さあ、しっかり眠ろう!

苦労したのは、ゲーム性をどこまで盛り込むかのバランスだったそう。

「ゲーム要素を増やすと、睡眠以外の要素が勝ってしまうし、睡眠計測ツールの部分を追求しすぎるとつまらなくなってしまいます。

また、ゲームで遊ぶ時間が長くなりすぎると、本来の目的である睡眠のための時間が削られることにもなります。寝る前と起きた直後のちょっと眠いときに遊んでもらう必要があるので、あまり手数は増やせません。

意図的にやめどきを作り、滞在時間も長くならないようにしている珍しいゲームだと思います。継続率が高く、毎日のように遊んでくれるユーザーが多いので、うまいバランスにできたのではないかと思います」

ゲーム内で必要な食材集めを手伝ってくれる「おてつだいポケモン」のげんきを回復するために、睡眠時間が増えたというユーザーの声も多く、子どもの寝かせ付けツールにもなっているという『ポケモンスリープ』。睡眠不足に悩んでいるなら、一度試してみてはどうだろうか。