かまぼこは異次元のタンパク質宝庫。カラダ作りには魚が無敵なワケ
誰しも「魚はカラダにいい」と聞いたことはあるだろうが、具体的な効能や食べるメリットを理解している人は多くない。実は魚は、肉をしのぐ低脂質高タンパク質の優秀食材。おまけに、その豊富なタンパク質が吸収されやすいときたら、食べない訳にはいかない。エリートタンパク質源、魚のスゴさにクローズアップ。
取材・文/石飛カノ 取材協力/西塔正孝(女子栄養大学栄養学部教授)
初出『Tarzan』No.873・2024年2月8日発売
魚肉は低脂質・高タンパク質の代表格
筋肉の材料となるタンパク質源といえばやっぱ肉。でもタンパク質と一緒に漏れなく脂質がくっついてくるのがタマにキズ。牛肉も豚肉もたとえ皮下脂肪なしの条件でも100g中に含まれる脂質はなかなかのもの。で、カラダ作りに余念がない人が安心して手が出せるのは鶏のささみ一択となる。
その点、魚は選択肢の幅が広い低脂質高タンパク質の優秀食材。
「魚の中でもとくに白身の魚は脂質が少なくてタンパク質量が多い。その分、タンパク質源としては有効だと思います」
と言うのは、水産学博士で女子栄養大学教授の西塔正孝さん。
ヒラメやカレイ、タラにタイにスズキにタチウオと、トレーニーもダイエッターも白身魚なら選び放題。こんなエリートタンパク質源、見過ごしている場合じゃない。
タンパク質、脂質の含有量(g/100g)
和牛100g中の脂質は42.5gと4割以上。比較的脂質の多い赤身のブリは豚肉と同等の脂質量だが、白身魚は鶏のささみレベルの低脂質高タンパク食材。
新指標「DIAAS」で見る魚の実力
食材のタンパク質のクオリティはこれまで「アミノ酸スコア」という必須アミノ酸の含有比率で表されてきた。でも、その指標に従うと肉も魚も卵も乳製品も大体の動物性タンパク質食材は100点満点。
これではあまりにも大雑把。もうちょっと精度の高いタンパク質の指標として近年登場したのが「DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)」なるもの。これは従来の必須アミノ酸組成に加え、実際どの程度体内に取り込まれるかといった消化吸収率を考慮した指標だ。
DIAASスコア(%IAA)
白身魚を主なタンパク源とするバングラデシュの研究結果。コイ科のロフ、ナマズの一種のパンガス、ティラピアなどの魚のDIAASはすべて100以上。
たとえば海外の文献によると、小麦や豆類のDIAASが50台なのに対して東南アジアのコイ科の魚のDIAASは103、ナマズの一種の魚のそれは106。数少ないタンパク質源として優秀なことが示されている。もちろん、日本の白身魚にも同様のDIAASが期待できるのだ。
さらにすり身は異次元のタンパク質宝庫
スケトウダラやタイなどの白身魚をすり潰して成形して高温で蒸したら美味しいかまぼこの出来上がり。実はこのかまぼこ、タンパク質の新指標であるDIAASのスコアがかなり高いことが分かっている。
鶏の胸肉が1.08(前項の値で表すと108)とすると、かまぼこは1.28(128)。鶏肉や乳製品などと比べても体内に吸収されて有効利用される可能性が高いというデータがあるのだ。
DIAASのスコア
そもそも、元となる原料が低脂質高タンパクの白身魚。そこからさらに脂質が取り除かれたかまぼこは、言ってみればタンパク質の凝縮物。このかまぼこパワーに注目するアスリートも多く、2021年にプロサッカーの長友佑都選手が老舗かまぼこメーカーの「かまぼこ大使」に就任したことが話題となった。かまぼこはカラダ作りにおいても贅沢品だ。
加熱調理でタンパク質吸収率がよりアップ
魚の一般的なDIAASはあくまで生の状態で食品を食べたときの消化吸収率を加味したスコア。
「消化吸収能力がある人にとっては生で魚を食べるのが理想的。でも、タンパク質は加熱した方が消化吸収率は上がると考えられます。調理済みの魚のDIAASスコアはまだ出てきていませんが、胃腸の弱い人にとっては生より加熱した魚の方がそうした値が高いかもしれません」
ちなみに、魚は肉に比べて食感が柔らかい。その理由はタンパク質の組成の違いだという。
魚肉中のタンパク質組成
魚肉に含まれる筋基質タンパク質は10%以下。肉はこれより多く筋基質タンパク質を含み、スジがあって嚙み切れない畜肉ほど含有量は多いと考えられる。
「肉に比べると魚にはコラーゲンなどの結合組織を作る筋基質というタンパク質が少ない。だから生の刺し身でも食べられるんです。白身魚の場合、加熱すればさらに柔らかくほぐれやすくなります」
バテ気味のときは白身魚の鍋などでタンパク質補給を。