メンタルを安定! 気を巡らせる肝臓のツボマッサージ
中医学の五臓六腑の“肝”は、現代の解剖学的な肝臓と100%対応しているわけではない。だが、長年の経験に裏打ちされたその養生学は、肝臓をいたわるうえで大いに参考になる。中医学において“肝”の役割は全身に気を巡らせて、メンタルを安定させること。肝臓を間接的に刺激するマッサージやツボマッサージで肝臓もメンタルも整えよう!
取材・文/井上健二 イラストレーション/内山弘隆 取材協力/石垣英俊(ホリスティッククーラ代表)
初出『Tarzan』No.870・2023年12月14日発売
教えてくれた人:石垣英俊さん
いしがき・ひでとし/鍼灸師。あん摩マッサージ指圧師。ホリスティッククーラ代表。手ぬぐいボール健康法提唱者。解剖学と東洋医学の知見を融合した施術がモットー。背骨からのケアを重視し、日本背骨養生協会で指導者の育成にも取り組む。
肝臓のツボマッサージを行う
中医学の五臓六腑の“肝”は、現代の解剖学的な肝臓と100%対応しているわけではない。だが、長年の経験に裏打ちされたその養生学は、肝臓をいたわるうえで大いに参考になる。
五臓六腑をケアするために、中医学では「気・血・水」の巡りを重視する。気は生命エネルギー、血は血液、水は体液に相当する。
「中医学における“肝”の役割は、“疎泄(そせつ)”。全身に気を巡らせて、メンタルを安定させる作用があると考えられています。逆にメンタルが落ち込むと、“肝”の働きも悪くなります」(鍼灸師、あん按摩マッサージ指圧師の石垣英俊さん)
疎泄を促し、肝臓を元気にする中医学からのアドバイスは2つ。
肝臓は横隔膜の真下にある。まずはそこへ指を差し込み、横隔膜を大きく動かせば、肝臓を間接的にマッサージできる。同時に深呼吸を行うとメンタルも安定し、肝臓は整いやすい。加えて、疎泄を促して“肝”を整えてくれるツボを刺激しよう。
ステップ1:季肋部のマッサージ(左右各2〜3回×3セット)
椅子に浅く坐り、肝臓がある右側の肋骨のいちばん下(季肋部)に両手の指を差し入れる。
息を口から深く吐きながら、上体を前屈させて手の指を深く入れて肝臓をマッサージ。息を吐き切ったら、上体を元に戻して息を吸う。これを2〜3回。体側からみぞおちまで、3か所ほど場所を変えながら行う。
肝臓は左側の肋骨の下まで広がっているから、同様に左側の肋骨下でも行う。 
ステップ2:ツボマッサージ(左右各2〜3回×2〜3セット)
手ぬぐいボールの作り方
手ぬぐいを広げ、真ん中にテニスボールを置く。ボールを覆うように手ぬぐいの上下を畳んで帯状にしたら、両端を結んでボールを中央部で固定する。手ぬぐいにより、ボール位置の調整が容易に行える。
肝兪(かんゆ)
ダイレクトに“肝”に効くツボ。眠りを整えて、メンタルと自律神経を安定させる。背骨の胸椎の9~10番の間から2cmほど外側。
まっすぐ立ち、両腕を肩下で下げた際、肘よりも2~3cm上で左右の肩甲骨の下にある。背中を壁につけ、肝兪に手ぬぐいボールを押し当て、深い呼吸を続けよう。
間使(かんし)
気持ちを安定させるのに効果的なツボ。手首の内側のシワの中央から、指4本分離れたところ。反対の親指で上から深く押し込み、パッと放して解放する。
百会(ひゃくえ)
自律神経の乱れを整える。耳たぶを前へ畳み、左右の耳たぶの先端を結んだ中央で頭頂部。両手を重ね、手根部(手のひらの付け根)で深く押し込み、パッと放して解放する。
太衝(たいしょう)
イライラを抑える作用がある。足の甲で、親指と人差し指の間を上へ探り、刺激すると響く窪み。手の指で上から深く押し込み、パッと放して解放する。