タンパク質・脂質の働き:コンディショニングのための「食と栄養」基礎知識
連載「コンディショニングのひみつ」。長期的なコンディショニング戦略に不可欠な「食と栄養」を、その基礎知識とともに複数回にわたって解説していく。今回は「タンパク質と脂質」について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.869・2023年11月22日発売
本連載ではここまで、カラダに必要な「エネルギー産生栄養素」(3大栄養素)のうち「炭水化物(=糖質)」の摂取法、またこれらの理想的なバランスについて解説してきた。
続く今回は、ほか2つの栄養素「タンパク質」「脂質」の働きとともに日々のコンディショニングに役立つ食材選びについて考えていこう。
タンパク質は“質”にも注目しよう
まず、カラダの最小単位=細胞の主成分となるのがタンパク質。消化によってアミノ酸に分解され、血流に乗って筋肉や内臓、皮膚や髪など全身のすみずみまでを構成する、まさに“血となり肉となる”栄養素だ。
昨今の筋トレブームでも注目を集めるタンパク質だが、その摂取量とともに意識したいのは“質”の部分。
タンパク質を構成するアミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンを含む9種の「必須アミノ酸」は食物からのみ補給できるが、うち一つでも必要量に満たないと体内ではその分しか活用されない。
これを数値化したのが「アミノ酸スコア」で、100が満点となり、肉や魚、卵といった動物性食品のほか、植物性食品では唯一、大豆が該当する。
ただしアミノ酸スコアが100に満たなくても、ほかの食材と一緒に摂取することで不足分をカバーできるケースも多い。要は“バランスよく食べる”のが大切、ということ。
脂質もカラダに欠かせない。問題は選び方
また“太りそう”なイメージが先行して敬遠されがちな脂質だが、細胞膜やホルモンの材料として必須の栄養素。免疫細胞を働かせるエネルギー源にもなるほか、脳は水分を除いた実に約60%が脂質で構成され、カラダはもちろん、健康なココロを育むためにも欠かせないのだ。
問題はその選び方。
食事からの摂取が必要なのが体内で合成できない必須脂肪酸で、なかでも意識したいのがn―3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)だ。
血液をサラサラにして生活習慣病を予防したり、アレルギー性疾患やメンタル系の不調にも改善効果が期待されている。アマニ油、エゴマ油などのほか、魚に含まれるDHA、EPAなどが該当する。
タンパク質・脂質を体内で効率よく利用するために「まごわやさい」
さらにこれらを体内で効率よく利用するには、さまざまな栄養素をバランスよく摂取することも大切。そこで推奨したいのが、以下に挙げる「まごわやさしい」食材の数々だ。
まごわやさしい
「まごわやさしい」は、和食に多く使われる食材の頭文字からなる言葉。日々の食生活に取り入れることで、自然と栄養バランスが整えられる。運動量の多い人は、ここに肉を追加するのもいいだろう。
まめ(豆類):「畑の肉」とも呼ばれる大豆はタンパク質のほか、ミネラル類もバランスよく含まれる。
ごま(種実類):細胞の老化を防ぐ抗酸化成分のほか、ナッツ類は血行を促すビタミンEを多く含む。
わかめ(海藻類):ミネラル豊富で低カロリー。水溶性食物繊維がコレステロールを吸着・排出する。
やさい(野菜類):緑黄色・淡色野菜合わせて1日350gでビタミン類をバランスよく摂取したい。
さかな(魚介類):良質なタンパク質と脂質を同時に摂取。アジやイワシなどの青魚は特におすすめ。
しいたけ(きのこ):低カロリーで食物繊維やミネラルのほか、丈夫な骨を作るビタミンDが特に多い。
いも(いも類):糖質のなかでも食物繊維を多く含む。特にジャガイモは熱に強いビタミンCが豊富だ。
復習クイズ
答え:オメガ3脂肪酸