戦略の“開発”には散歩が必須。プロゲーマー・梅原大吾さんが歩く理由
ウォーキングをする理由は十人十色。ダイエットや運動不足だけが目的じゃない。なぜ歩くのか? 歩くことに何かを見出しているという人たちにその理由や歩き方を聞いてみた。奥深さや楽しみを知れば、もっと長く、もっと頻繁にウォーキングに出かけたくなるはず。今回はプロゲーマー梅原大吾さんの歩く理由。
取材・文/石飛カノ 石原敦志 撮影協力/Red Bull Gaming Sphere Tokyo
初出『Tarzan』No.866・2023年10月5日発売
道なんか見てない。ひたすら歩いて戦術を練る
新作ゲームが出た直後のプロゲーマー・梅原大吾さんの一日は過酷だ。食事を済ませて午後3時頃からモニターに向かう。
ほぼ1時間ごとに入れ替わり立ち替わり現れる対戦相手と10時間連続で戦い続ける。散歩好きと聞いているが、一体いつ歩くのか?
「新作ゲームが出るとあまり散歩できないんです。本当だったら一度に3時間くらいは歩きたい。
以前、講演の前に歩きながら頭の中でシミュレーションをしていて、ふとスマートウォッチを見たら1週間で140km歩いていたこともあります」
1日換算で20km! 筋金入りのウォーキングピープル。
「新しいゲームは、この技にはこの技で返すといったように吸収することがたくさんある。どんどん知識を入れるためにモニターの前で長時間過ごします。
情報を詰め込んだら今度は頭の中で戦略を練ります。プレイ時間が減って考える時間が増える。僕はこの作業を“開発”と呼んでいて、開発には散歩が必須。
コースはとくに決めてません。道も景色も見ずにただぼーっと歩きながら考えてます。靴?〈クロックス〉のサンダルです」
10代で世界を舞台に活躍してきたゲーマーの移動手段はもっぱら徒歩。新宿のゲームセンターでゲームに没頭し、空腹になったら原宿のラーメン店まで歩くという具合。
「歩こうと思って歩いていたわけではないけど、いつの間にか癖になっていました。ゲームセンターに閉店までいると終バスの時間を過ぎるので1時間かけて歩いて家に帰るとか。
その癖が役に立って、歩くという動作が自分の中で大切な習慣になりました。なにしろ、じっとしているといい考えが浮かばないんです」