理想の自分を手に入れる「タスクメソッド」とは?:楽しくてやめられないクセ化への道①
筋トレやダイエットなど、続けたくても続かないことに悩んでいるひとは多い。しかし、サウナブームの仕掛け人であり、〈コップのフチ子さん〉など数々のヒットコンテンツを手掛けてきたタナカカツキさんに言わせれば、「クセ化さえできれば、むしろ楽しくてやめられなくなる」のだと言う。
やりたいことをクセ化させる「タスクメソッド」の実践者である『トトノイ人』編集発行人・広岡ジョーキさんとともに、成功するクセ化の法則を見つめ直す。短期連載 全4回/1回目は、理想と現実の把握からスタート!
取材・文/山本加奈 撮影/幸喜ひかり マンガ/タナカカツキ 編集/金井タオル
タナカカツキさん
教えてくれた人
1966年、⼤阪府⽣まれ。1985年マンガ家デビュー。⽇本サウナ・スパ協会公認サウナ⼤使。サウナ愛好者のバイブル『サ道』の原作者。
広岡ジョーキさん
教えてくれた人
リトルプレスの企画編集、執筆、デザイン、翻訳、クリエイティブコーディングなど、領域を横断しながらタスクメソッドで活動中。
クセ化は、ものぐさな人にほど向いていた
――「今年こそカラダを鍛えて脱げるカラダを手に入れる」という目標も、結局は挫折して今に至ります…。「継続は力なり」なんて耳にタコができるほど聞きますが、そもそも「クセ化」するまでが難しいんです。ちなみに、私の座右の銘は「明日は明日の風が吹く」。遺伝子レベルでものぐさ体質です。
タナカカツキさん(以下、カツキ):安心してください。クセ化は、ものぐさな人ほど向いていると思います。
広岡ジョーキさん(以下、広岡):私も根が快楽主義者なので、むしろ“続かない”という諦めからクセ化をスタートした口です。
――にわかには信じがたいのですが、おふたりとも毎朝4時起床だそうですね。それは、意識高い系だからこそ、できるんじゃないかと思うのですが…。
カツキ:いえ、意識低い系だからこそです。自分の継続力を信じられないから、クセ化するための「タスクメソッド」に頼るんです。
広岡:朝4時に起きることもそうですが、お膳立てしてあげないと何もできないものぐさな人や、好きなことしかやりたくない快楽主義者が、頑張らなくてもクセ化できる方法。それが「タスクメソッド」なんです。
――「タスクメソッド」は、『今日はそんな日』として描き下ろしコミックにもなっていますね。
カツキ:私は、タスクメソッドのおかげで『今日はそんな日』を2年掛けて書き上げることが出来ました。ちなみに、あとがきはジョーキさんです。
『今日はそんな日』
朝4時起床、昼までのタスクは静かに淡々と。自分に甘く、どこまでも快適を求めた著者が辿り着いたスーパールーティンの生活。時間に支配されることで成果をもたらした創作メソッド。
広岡:作中でカツキさんも使っているクセ化に最適化した記録ノート『TASK NOTE』も、私が「タスクメソッド」で作ったものです。
意識高い系じゃなくて、無意識系でいこう
――カツキさんの経歴を振り返ってみると、あらためて驚きます。これらすべて、「タスクメソッド」によるクセ化の成果なんですよね。でも、おふたりが意識低い系ならば、自分は意識どん底系です。それでもクセ化できるものでしょうか?
「タスクメソッド」がもたらした成果の数々
- 2011年…『サ道』発売
- 2011年…世界水草レイアウトコンテスト出品開始。世界ランキング105位
- 2012年…「コップのフチ子」考案
- 2013年…サウナの日(3月7日)にサウナ大使に任命される
- 2016年…『マンガ サ道』発売
- 2016年…世界水草レイアウトコンテスト銀賞。世界ランキング4位
- 2019年…『マンガ サ道』 ドラマ化
- 2021年…「コップのフチ子」累計2000万個を達成。異例の大ヒットを記録する
- 2023年…サウナ大使就任10周年
様々なコンテンツが、構想段階から数年で国民的レベルで実っていることに気づく。「成果は、あくまでタスクによる副産物です。毎日ご機嫌にタスクライフを過ごしているだけです」(タナカカツキさん)
広岡:“意識高い系”って、右肩上りでキラキラした人生をイメージしますよね。それって、どんどんハードルが上がっていきませんか? ものぐさな僕からすると、考えただけでしんどい。
クセ化のためのハードルは下げながら、淡々と理想に近づく方法論が「タスクメソッド」なんです。簡単に言えば、“のらりくらりと楽しく続けられることをしていたら、変化が現れて面白くなってきたぞ作戦”ですね。
カツキ:最初に「意識低い系」といいましたが、もはや意識なんてものはないほうがいいかもしれません。むしろ、“無意識系でいきましょうよ”というのが「タスクメソッド」の真髄です。
――毎日の歯磨きレベルで筋トレが続くようになるということですか?
カツキ:そうです。無意識で、オートメーションで、自分が目指す境地にいきたい。“気づいたら勝手にタスクをやっちゃっている状態”にもっていきたいんです。
「クセ化できない」と思い込んでいる人は、なんだかんだで自分を信じているのかもしれません。心の底で「やればできる」と意識高く思った結果、クセ化のスキルを学ばずに、いきなりジムに行って挫折しちゃう人も出てくるのです。
「センス」や「才能」は幻想だった
――メソッドやスキルと言うからには、センスや才能がなくても、クセ化の挫折を繰り返している私にもできるということでしょうか?
カツキ:そもそもセンスは幻想だ、と言ったら驚くでしょうか。
センスの正体とは、情報量とワクワクの総量なんです。マシュー・サイドの『才能の科学』や、ダニエル・コイルの『カルチャーコード』では、才能という社会通念を科学的な視点から再評価しています。そして、科学的に大きな勘違いだと言っているんです。
実際に「センスあるよね」って人を調べてみたら、誰よりもそのことを知っていて、楽しんでいるということに行き着くんです。つまり、センスとは情報量だったのです。
――でも、スポーツの得意な人は運動神経がいいなって思うし、持って生まれたものってあると思うんですよね。
カツキ:残念ながら「速く走る」「音感がいい」など、DNA によって先天的に決まっているものはあります。
しかし、「絵を上手く描く」ことにDNAは全く関係ありません。才能やセンスと言われている物事のほとんどは、実は誰でも上手くなることが出来るんです。
上手くならないのは、自分は下手だと勝手に思い込んでいるだけか、楽しく続けるためのスキルを知らないだけなんじゃないかと思います。
最高に楽しいリアル人生ゲーム
――センスや才能もいらない「タスクメソッド」、詳しく教えてください!
カツキ:その前に、知っておいてもらいたいことがあります。それは、現代社会が最高に面白い「リアル人生ゲームの時代」であるということです。
――リアル人生ゲーム、ですか?
カツキ:現代は人生の目的が多様化して、自分の生き方を自分で管理をしないと何も楽しくならない時代になりました。
かつては、人生の目的を誰かが用意してくれていたわけです。「所得倍増」というスローガンのもと、みんな同じ方向を目指せばよかった。それが、人生に充実感をもたらしてくれていたわけです。
しかし、そういう時代は一段落しました。自分の人生を自由に計画ができる時代になったとも言えます。
――なんだか、壮大な話になってきたような…。
カツキ:難しく考える必要はありません。私たちも、いまだに試行錯誤を繰り返していますから。むしろ、うまく行かないことをゲーム的に楽しんでもいる。「タスクメソッド」とは、自分というアバターを操作する最高に面白いライフゲームなのです。
広岡:「タスクメソッド」によるクセ化には、そもそも自分はどこに向かおうとしているのか、どんなステージやミニゲームをクリアしていきたいのか。自分の未来を描くスキルを身に着ける必要がありますからね。
カツキ:逆にそこさえちゃんとすれば、筋トレが続かないどころか、やりたくてしょうがなくなっちゃう。
――すでにワクワクしています! 今すぐにでもスクワットをやりたい気分です。
カツキ:それこそが失敗する発想です。なぜなら、我々はこれまでの人生でそのゲームの攻略法を学んでこなかったのですから。
――そうか、攻略法を知らないからすぐにゲームオーバーになっちゃって、筋トレも三日坊主になっていたんですね。
カツキ:そういうことです。「タスクメソッド」は、何よりも事前準備が肝心です。順を追って説明していきますので、少し長丁場になりますが、無意識系で楽しく実践していきましょう。
広岡:この連載を無意識系で読み進めていくことが「クセ化」のお試し版になったらいいですね。次回から具体的に「タスクメソッド」について紹介していきます。準備編のキーワードは「イメージング」そして「無謀なくらいがちょうどいい」です。
――次回も宜しくお願いします!
(第2回:2023年11月10日公開予定 へ続く)
『TASK NOTE』
固定タスクを時系列で並べ、次に何をやるか悩まず「時間が来たらやる」ためのノート。2週間、1か月単位のタスク設計を想定し、どちらの場合もしっかり1年間記録が可能。巻末には実例サンプル、タスク生活の助けになるリファレンス集を収録。1,100円。販売ページ