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連載「View of PICSPORT -フォトグラファーが見たアスリートの肖像-」。長年、さまざまな競技で取材を続けるスポーツフォトグラファー、岸本勉さん、中村博之さんが写真を通じて、“アスリートの素顔”に迫る。第二回は岸本勉さんが捉えた【やり投げ・北口榛花選手】。
やり投げ女子日本記録保持者の北口榛花(きたぐち・はるか)選手(JAL)は本当によく笑う。そして感情を全身で表現する。179センチの彼女が飛んで跳ねて喜ぶ姿はとても可愛らしい。
練習の時、選手紹介の時、競技中、コーチと話す時。ファインダー越しに彼女を覗いているとついついこちらもシャッターを押してしまう。競技にもよるが、こんなに笑うスポーツ選手はなかなかいない。特に今までの日本の陸上選手において記憶がない。
北口は笑うだけでなく、困った顔もする。緊張をほぐす時、集中する時などは口を突き出して、まるでドナルドダックのようにブルブルと震わせるのだ。
そして、泣く。
2022年にオレゴンで開催された世界陸上で、銅メダル獲得が決定した瞬間にコーチと力強く抱き合い、そして号泣した。今年6月の日本選手権では3連覇を逃し2位に終わり、不甲斐なさに北口はまた泣いた。
僕にとっては、何をしても絵になる選手のうちの一人だ。そう、とにかくフォトジェニックなのだ。
もうひとつ、彼女について特筆すべきはチェコ人のセケラックコーチとの師弟関係である。投擲や跳躍の選手は、ひとつの試技が終わるとスタンドにいるコーチの元に行って修正点などを話したりする。ある時、北口がコーチとの会話が英語ではなくチェコ語(チェコ出身コーチだからそう思った)を話していたのでびっくりしたことがある。
陸上関係者によるとコーチが英語が話せないから、北口本人がチェコ語を勉強したとのこと。
サッカーや野球を始め、様々なスポーツ選手が海外で活躍することはもう当たり前のようになってしまっている。それはそれで喜ばしく凄いことだ。ただ彼女のようにセケラックコーチに指導してもらいたく自ら赴くそのスタイルもなんとも健気で、何よりも彼女の強さではないだろうか。
今夏の世界陸上(ブダペスト)、2024年のパリオリンピックにおいて「一番輝い
ているメダル」を目指して欲しい。またその笑いも涙も撮影できたら、と思う。
岸本勉(きしもと・つとむ)/1969年生まれ、東京都出身。10年余りスタッフフォトグラファーとして国内外の様々なスポーツイベントを撮影。2003年に独立、「PICSPORT(ピクスポルト)」を設立。オリンピックは夏季冬季合わせて14大会、FIFAワールドカップは8大会、ほか国内外問わず様々なスポーツイベントを取材。2015年FINA世界水泳選手権カザン大会より、オフィシャルFINAフォトグラファーを担当。国際スポーツプレス協会会員(A.I.P.S.)/日本スポーツプレス協会会員(A.J.P.S.)
Instagram:@picsport_japan
撮影・文/岸本勉