集中力と体力の勝負。正確性が問われる世界最古の球技「スポールブール」
日本では、ほぼ馴染みのない球技「スポールブール」。初めて聞いたという人も多いはず。でも実はこの球技は、約5000年前から存在するというから驚き。世界で最古の球技とも言われるスポールブールの魅力について日本スポールブール連盟の兼坂俊之介さんに教えてもらった。
取材・文/菅野茂雄 写真/伊藤大作
兼坂俊之介さん
教えてくれた人
かねさか・しゅんのすけ スポールブール歴7年、日本代表。都内を中心に活動するスポールブールクラブ、ヴィブルス東京代表。
世界最古の球技? スポールブールとは
スポールブールは、重さ約1キロでソフトボール大の真鍮ボールを投げて目標球に当てたり、近づけたりして得点を競う。種目によって微妙に競技方法が異なるものの、やることは至ってシンプル。
スポールブールについて、まず驚かされるのは、その競技の歴史の長さだ。ルーツとなるのは、約5000年前の古代エジプトや古代ギリシャの文献まで遡ると言われていて、当時は、真鍮ではなく石を研磨したボールが用いられていたという。
「ボールを目標物に近づけたり、当てたりする発想は、原始的なものですから、スポールブールは、世界で最古の球技という有力な説があります。スポールブールはフランス語で、“スポーツボール”という意味。
日本ではマイナー競技ですが、世界的には、フランスとイタリアで人気があります。ちなみに、もう少し聞き馴染みのある競技でペタンクがありますが、ペタンクは、スポールブールをベースに1907年に考案されたものなんです」(兼坂さん)
正確性を競う6種目が楽しめる
スポールブールには、基本となるスキルが2つ。
1つ目がボールを転がして目標球に近づける【ポワンテ】と呼ばれるスキル。そしてもう一つがボールを投げてほぼノーバウンドで目標球に当てる【ティール】と呼ばれるスキルだ。
この2つのスキルを駆使して「プログレッシブ」「ラピット」「プレシジョン」「コンビネ」「シングル」「ダブルス」というゲーム形式が異なる6種目が楽しめる。
最も白熱する「プログレッシブ」
特に「プログレッシブ」は、スポールブールのゲーム種目のなかでも一番人気があり白熱するゲームだという。1対1で、縦27.5m×横4m(最大)のコート内の2箇所に用意された目標球に、5分間走り続けながらティールして何球当てられるかを競う。ちなみにこれを2人で4球ずつを交互に行うのが「ラピット」。
「コツは、同じペースでいかに早く、正確にボールを投げられるかですね。反復力と持久力が必要です。僕らがいつも練習しているのも、この種目です」
ちなみに、トラディショナル競技と呼ばれる「シングルス」と「ダブルス」は、目標球に向かってポワンテ(近づけるように投げる)を行い、目標球に近いボールの数で得点が決まる。例えるならば、ウィンタースポーツのカーリングに似ている。
「プレシジョン」は、11種類のターゲットに対してそれぞれ1球ずつティールを行い、難易度に応じて設定された得点の多さを競う。また、ポワンテとティールを組み合わせて行うのが「コンビネ」で、戦略性が必要となる。
日本ではわずか50人!? 世界を見据えて練習に励む
日本におけるスポールブールの競技人口はわずか50人ほど。運動未経験でもすぐに試合に出場できる。競技者は、20〜40代がメインだという。
現在は、東日本エリアのイースタンリーグ6チーム(ブール三郷、ブールさいたま2チーム、ブール御殿場、ヴィブルス東京、ブール東京)と、西日本エリアのウエスタンリーグ6チーム(ブール清洲、ブール岐阜、ブール名古屋、ブール白山、ブール大阪)の12チームでリーグ戦(毎年5月〜2月)を行い、3月に日本シリーズを行なっている。
9〜12月にはジュニア選手権や世界選手権も開催されている。ひたむきに努力すれば、日本代表となって世界大会出場も夢ではない。
「毎週決まった曜日に練習をしています。コートの設置から片付けまで自分たちで行いますが、いい運動にもなりますし、上達していく自分を感じられるのが魅力です。一緒に楽しめる仲間を随時募集しています」
動きがシンプルで運動未経験者でも始めやすいマイナースポーツ、スポーツブール。古代エジプトや古代ギリシャで親しまれていたスポーツを、時を超えて現代でも楽しめるというのは、他のスポーツにはない新鮮な魅力だろう。
INFORMATION
日本スポールブール連盟
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