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タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
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身ぶり手ぶりをしながら話すと相手に話が伝わりやすいらしい。その理由は我々は言葉を脳内処理する際、身体動作も含めて認識しているから。ジェスチャーを交えて話す時、脳内ではどんな反応が起きているのだろうか。
牧岡省吾先生
大阪公立大学大学院現代システム科学研究科
まきおか・しょうご 京都大学卒業後、大阪女子大学助手などを経て現職。日本心理学会および日本認知科学会会員。研究分野は共感覚とその神経回路モデル、日本語のコーパス分析など。
会話の最中、話が盛り上がってくるといつの間にか身ぶりや手ぶりが大きくなるのは誰しも経験があるはず。実はこれ、脳の活動と大きく関係しているのだという。
「いくつか単語を画面に表示し、記憶する実験を行ったところ、手で扱えるものの単語の記憶力は、被験者の手を拘束すると、非拘束の場合に比べて落ちることがわかりました」(牧岡省吾先生)
物体を表す単語を画面に表示して記憶する実験。一方はこのように手を拘束。片方は非拘束。
鉛筆や電池など手で扱えるものの単語(上段)は、手を拘束されると覚えづらくなった。
「つまり我々は言葉を脳内処理する際に身体動作も含めて認識している。これを身体化認知と呼びますが、この理屈からすると、会話に関連する動きがあった方が言葉も出やすくなると考えられます」
手が拘束されると左脳の頭頂間溝や下頭頂小葉の活動が弱まり、言葉の意味処理が阻害される。
また、脳には相手の動作を自分の中で再現するミラーシステムが備わっていて、動作を交えることで相手の理解度が深まるという。
「言語は空間的イメージと結びつくと理解が早まるので、身ぶり手ぶりがそれを後押しする側面もありそうです。身体化認知、ミラーシステム、そして空間的認知。以上3つの理由で相手に伝わりやすくなるのです」
取材・文/黒田創 撮影/小川朋央 イラストレーション/村上テツヤ 編集/堀越和幸
初出『Tarzan』No.850・2023年2月9日発売