咀嚼は脳にいい。では、硬いガムと柔らかいガム、より活性化するのは?
食べ物をしっかり嚙むと脳が活性化する、とはよくいわれるけど、なら硬いガムと柔らかいガムで脳の活性に差はあるの? そもそもこれってどんなメカニズムなの? 咀嚼と脳の関係を専門家に聞いた。
取材・文/黒田創 撮影/小川朋央 イラストレーション/村上テツヤ 編集/堀越和幸
初出『Tarzan』No.850・2023年2月9日発売
久保金弥先生
教えてくれた人
くぼ・きんや/岐阜大学大学院医学研究科修了。名古屋女子大学大学院生活学研究科長、同大学健康科学部長・教授。専門は神経科学で、咀嚼と脳機能との関連を研究している。
脳が活性化するのは硬いガム?柔らかいガム?
食べ物をしっかり嚙むと脳が活性化する、とはよくいわれるけど、これってどんなメカニズムなの?
「咀嚼すると、歯の根っこの周りにある歯根膜にある神経のセンサーが、嚙むことで生じた刺激や食感などの情報を脳へ伝えます。
具体的には、大脳皮質の運動野と感覚野、小脳、視床などで活性化が起こります。また咀嚼で、食べ物の匂いや色など脳に伝わる五感の入力量が増えることもわかっています」(久保金弥先生)
歯根膜が刺激を脳に伝える
歯にかかる力を吸収する歯根膜。0.3mmほどの薄い膜だが、食べ物を嚙んだときの刺激や情報を脳に伝えるセンサーの役割も担っている。
ならば、硬い食べ物を嚙みまくれば脳はより活性化するってこと?
「以前菓子メーカーから硬いガムと柔らかいガムを取り寄せて咀嚼の実験を行いました。味による影響がないよう無味無臭のガムだったのですが、硬いガムを嚙んだときは小脳の活性化のみ高まり、他の部位はむしろ弱まる傾向が見られました」
つまり硬い物も柔らかい物も、よく嚙み、よく味わって食べることが大切なのだ。飲み込むような食べ方が一番いけない、今日から直そう。