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タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
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巷に溢れる都市伝説や、知っているようで知らないアルコールとカラダの関係など、酒にまつわるあんな疑問、こんな疑問に答えます。Part3では、酒席の小噺にももってこいのお酒の歴史や雑学、豆知識をご紹介。
目次
水と違いお酒ならば短時間ですいすい飲めてしまう。それは吸収速度と排出速度の違いが大きい。まず吸収、水は胃に入ってもほとんど吸収されないが、対するお酒は吸収率が高い。
また排出が水と比べてお酒は早い。アルコールには利尿作用があるからだ。
つまり、お酒は水より胃で吸収されやすく体外へすぐ排出されるので、どんどん飲めてしまうということ。だからといって調子に乗ってピッチを上げていくと二日酔いのリスクは当然高まるので要注意。
飲めば飲むほど喉が渇いてしまうんじゃないかと心配になるが、古代ローマ時代の人々はワインを海水で割って飲んでいたという。
理由はまた諸説あるが、当時の醸造技術がまだ発達しておらず、甘めのワインが多かったのが一因。海水以外にも水や蜂蜜などで割るのも一般的だった。
このようなスタイルが、海外ではよく見る氷を入れてワインを飲む飲み方のルーツなのかも。
ビール瓶などに使われている王冠栓は19世紀末にアメリカで初めて作られた。日本に初上陸したのは1900年。当時は瓶のサイズが千差万別で蓋が閉まらず炭酸がすぐ抜けたという。
それほど重要な王冠栓はギザギザの数が世界共通で21個(特大瓶を除く)。
3の倍数が力学的に安定し、21個の時の締め付け感と開けやすさの両立が決定打に。ちなみに、このギザギザの名前は“スカート”。
長時間瓶詰めされたワインは熟成する過程でタンニンやポリフェノールが結晶化し、沈殿物として瓶の底に溜まる。よってグラスに注ぐ時やデキャンタに移す時に沈殿物が入らないよう、底が窪んだデザインになっている。
ちなみに瓶底から瓶口にかけて細くなる形だが、そのまま瓶底を平らなところに打ち付けると、「ウォーターハンマー現象」が発生して瓶口部分に圧力がかかってコルクが抜ける。
その時に瓶底の窪みがないとコルクでなく瓶底が抜けてしまうため、やはり瓶底の窪みが必要なのだ。
現在3000~5000種類ほどあるカクテル。なかには“カクテル言葉”があてられたものも。
ジントニック(ジン・トニックウォーター・ライム)は「いつも希望を捨てないあなたへ」「強い意志」、モヒート(ラム・ミント・ライム・炭酸水)は「心の渇きを癒やして」、モスコミュール(ウォッカ・ジンジャーエール・ライム)は「その日のうちに仲直り」、ブラッディメアリー(ウォッカ・トマトジュース・レモンジュース・塩胡椒・タバスコ・ウスターソース)は「断固として勝つ」。
花言葉同様、どれも由来は意味深。
有力な説は2つ。
一つは飛鳥時代の律令制で、資産に応じて階級の上から順に大戸・上戸・中戸・下戸に区分。婚礼時に飲める酒量が階級ごとに決まり、最も制限された下戸が“飲めない人”を指す語に。
もう一つは秦の始皇帝。万里の長城の建造中、標高の高い場所で作業した人は温まるようお酒、逆に標高の低い(下)の人は饅頭が振る舞われたことから派生したとの説も。
「蛇足ですが下戸はアジア人特有の体質で、それ以外の地域に下戸はいない。宗教的・健康的な理由から飲まないだけです」(吉本先生)
“目には目を、歯には歯を”の条文でおなじみ、紀元前1800年代後半に制定されたハムラビ法典には、ビールにまつわる条文も複数記されていた。
当時、お酒としてはもちろん、通貨と同等のもので、俸給外の手当としてビールが払われることも。当初は1日当たり、労働者には約2L、役人には約3L、僧侶には約5Lが与えられたという。それほどビールの価値は高く、規制対象にもなった。
「酒場の女主人がビールの販売価格をごまかしたら溺死刑」「もし反逆者が酒場に集まっていたら、酒場の女主人は彼らを捕らえて王宮に連行しないと死刑」「女性の聖職者が酒場を開いたり、ビールを飲むために酒場に入ったら火あぶり刑」、ハードモードだ。
日本酒の蔵で酒造りを取り仕切る杜氏が恐れるのは納豆菌。日本酒の味は米麴によって決まり、蒸した米に菌を振りかけて繁殖させる米麴は繊細で、どんな菌の侵入も許されない。
よって杜氏は仕込み時期にあたる11月から翌年4月まで納豆を断つほか、漬物や味噌、醬油、チーズなどの発酵食品も控えることもあるという。
取材・文/門上奈央 取材協力/吉本尚(筑波大学准教授)、葉石かおり(酒ジャーナリスト)、横浜君嶋屋銀座店 参考文献/『名医が教える飲酒の科学』
初出『Tarzan』No.847・2022年12月15日発売