高杉保美さん
教えてくれた人
たかすぎ・ほみ/管理栄養士。酒を楽しみつつ、運動と食事改善により半年で15kg減を達成した過去を持つ。今も毎日晩酌。著書に『ずぼら管理栄養士が教える ずるやせダイエット』(WAVE出版)。
目次
アルコールが減量と筋肥大を邪魔するワケ
痩せるにせよ筋肉をつけるにせよ、意識すべきはカロリーコントロール。
「アルコールは1g7キロカロリーです。よく聞く“お酒はエンプティカロリー”説は正確にはカラダに有益な成分を含まないとの意味。またアルコールは筋分解を促す作用もあり代謝にも影響が」(高杉保美さん)
これを踏まえたうえでもQOLのために飲みたい人が心得るべきは。
「飲酒で不足しがちなビタミン・ミネラルと筋分解対策になるタンパク質を摂れるおつまみを選ぶこと」
何も食べないのは逆効果なのだ。大会前以外は毎日晩酌を楽しむという澤木一貴トレーナーも力強く一言。
「日中の食事を配慮し運動も頑張ればカラダはきちんと変わります!」
案外盲点? お酒のカロリー一覧
栄養成分表示の規定上、記載されないお酒のカロリー。だが“ちょっと一杯”の量(酒飲み基準)のわりになかなかでは? ちなみにご飯茶碗1杯(150g)は約250kcal。お酒をおかわりすればすぐ超えうる。
ケース① ビール腹に悩んでいる
30代なのにビール腹。日々の晩酌でも、せめてもとつまみは肉のおかず1品と野菜系のおかず1品に抑え、主食は抜いているのに…。
高杉さんの回答
ビール腹は内臓脂肪が多い表れ。胃から出ている場合は糖質の代謝が悪い可能性が高い。夕食の主食を抜く分、昼食でドカ食いしてませんか? 大量の糖質を一気に摂ると血糖値が急上昇して脂肪がつきやすいです。
肉のおかずはアリですが、脂の多い部位を使ったり砂糖で甘辛く味付けするのはNG。野菜系のおかずも、糖質が多めな根菜や芋でなく緑黄色野菜や海藻類を使った一品にしましょう。ビールを飲むなら糖質0ビールを選ぶのも一案です。
おすすめのおつまみ:鶏ささみ梅肉乗せ
糖質量が少ないおかずが最適。お肉系なら、耐熱容器に料理酒(大さじ1)とスジを取った鶏ささみ(200g)を入れて2分ほどレンチンしてお皿に盛り、梅肉ペーストと千切りした大葉を乗せた一品なら食べ応えも◎。
ケース② 毎晩の飲酒で体重増
妻に付き合い毎晩飲むうちに自分だけ丸くなってきた。でもコミュニケーションのため飲むのは続けたい。これ以上の体重増加を防ぐには?
高杉さんの回答
今まで体重が増えたのは代謝低下が一因かもしれません。お酒を飲むとアルコールの代謝のために肝臓がビタミン・ミネラルを消費するので代謝が滞る。またお酒を飲んだ翌日は代謝が下がりやすく、食事内容に配慮しないと太りやすくなります。
その悪循環を断つには肝臓のために水を多く飲むこと。あとはアルコール度数を下げては? 微アルにすれば今より長く飲み続けられるはずですし、ビールやハイボール、日本酒を思わせるノンアルもいいと思います。
おすすめのおつまみ:サバの缶詰
ビタミン・ミネラルを効率よく摂るには青魚もおすすめ。おつまみにサバの水煮缶を常備しては。
“痩せホルモン”ことGLP-1を増やす水煮の汁も残さずどうぞ。もし夕食に主食を摂っているなら抜くとなおよしです。
ケース③ 暴飲暴食をしてしまう
痩せたいので飲酒は週1回にセーブしているが、その反動で、飲む日は毎回暴飲暴食。つい、〆ラーメンも…。
高杉さんの回答
現状維持ではなく痩せるには日々の糖質と脂質を減らす必要があります。さて普段我慢している反動で飲んだ後の〆ラーメン、これ、クセになりやすく要注意。
そもそも〆を欲するということはアルコールの血中濃度が高い状態が考えられるので、飲みながら水も飲んで血中濃度を極力一定に保つと暴飲暴食を防ぎやすい。
また、飲み始めの時に喉が渇いているとアルコールの吸収速度が上がるので、事前に水や飲むヨーグルトなどで水分補給をしておきましょう。
おすすめのおつまみ:スタミナ低糖質ヌードル
どうしても〆が欲しいなら家で自作を。切った豚ロース(200g)と白だし(大さじ2)を耐熱皿に入れ1分半レンチンし、皿に盛った低糖質麺にON。糖質代謝を促すアリシン豊富な長ネギの千切りも乗せれば完成です。
ケース④ 腹を割りたい
いつか腹を割りたいので週1〜2日はジム通い。でも2日に1回、外飲みするのがやめられない。だから腹が凹まないのか?
高杉さんの回答
腹筋を割るにはお腹の脂肪を落とす必要があります。ウェストまわりの脂肪量は糖質の摂取量に比例しやすい。とはいえ筋肉のためには糖質ももちろん必要なので、筋トレ前後に必要な糖質を摂るようにしましょう。摂りすぎにはくれぐれも注意!
また、アルコールの分解能力は個人差があるので週5〜6回飲むのが平気なら問題ないですが、おつまみでタンパク質を摂るようにして、なるべく筋肉を分解しないような食事の摂り方を心がけるようにしましょう。
おすすめのおつまみ:ネギ盛り豚しゃぶ
脂肪燃焼を促すL-カルニチンを含む豚ロースと、糖質や脂質の代謝を促す長ネギで一品。豚ロース(200g)を約1分茹でて冷水で冷やす。お皿に盛り、斜め切りした長ネギ、白炒りゴマ、麺つゆをかければ出来上がり。
ケース⑤ カラダをデカくしたい
大会に出る気はないけど、デカいカラダに憧れてウェイトトレ。ビール党なので、糖質過多にならないよう主食は抜き!
高杉さんの回答
そもそもお酒に含まれる糖質はアルコールですぐ代謝されてしまうので、筋肥大したいなら糖質はご飯や麺類から摂るのが一番です。
あと重要なのはタンパク質。肝臓や腎臓が弱い人の場合、タンパク質は消化にも時間がかかるし内臓にも負担がかかりますが、健康体であれば積極的に摂るべき。お肉では牛赤身肉のほか、ビタミンB群やL-カルニチン、吸収されにくい脂を含むラム肉も推します。
また魚油は筋肉の成長を促す作用もあるので青魚もおすすめです。
おすすめのおつまみ:ローストビーフ
牛赤身肉でローストビーフ。牛もも肉の塊(200g)の水分を拭き取り塩胡椒を全体にすり込み、フライパンで各面1分半ずつ焼き、蓋をして1分加熱したらアルミホイルで巻き1時間放置。切り分けて塩胡椒で味付け
ケース⑥ 筋肉を付けたい
細身体型なので筋肉をつけたいが、晩酌がクセ。炭酸系はすぐ腹が膨れるので蒸留酒のロックが好み。やめるべき?
高杉さんの回答
細身で筋肉がつきにくい人は栄養の吸収が苦手で、お腹を下しやすい傾向が。量をたくさん食べられない人も多いはず。
血糖値のためには野菜を最初に食べる“ベジファースト”がヨシとされますが、必要な栄養を優先的に摂るためにも肉や魚から食べ始める“プロテインファースト”にしてみては。
お酒は無理にやめなくていいですが、飲みすぎるとストレスホルモンことコルチゾールが分泌されて筋分解が促進されやすくなるので、少量をゆっくり嗜みましょう。
おすすめのおつまみ:アーモンドorクルミ
オメガ3系脂肪酸や腸の動きを整えるオレイン酸を含むアーモンドやクルミをおつまみに。1日10〜15粒なら体脂肪になりにくいです。筋肉をつけるにはある程度エネルギーも必要なので素焼きにこだわる必要はなし。
ケース⑦ パフォーマンスを上げたい
趣味はトライアスロン。パフォーマンスを上げたいので筋トレもするが、仲間との飲み会や職場の付き合いはやめたくない!
高杉さんの回答
運動量が多い人はビタミン・ミネラルを多く使いますし、筋肉を正常に動かすのにも不可欠。魚介系や海藻類はミネラルが豊富なのでおつまみでも積極的に摂るようにしましょう。
またパフォーマンスのためには休養も重要です。アルコールの摂りすぎは睡眠の質を下げかねないので、飲みすぎには注意しつつ、飲み始めから後半に進むにつれてチェイサーの水の量を増やすなどして、入眠や翌日の快調を妨げないような飲み方の工夫ができるようになると理想的。
おすすめのおつまみ:刺し身
お肉に比べると魚は消化がスムーズですし、マグネシウムや鉄などが豊富。手軽に食べられる刺し身は手堅いです。マグネシウムが豊富なのはサバやサーモン、鉄が豊富なのはイワシやカツオ、マグロなどです