【棚橋弘至・連載】第20回:他の選手と差をつけるには? プロレス界の“隙間筋肉”
新日本プロレス「100年に一人の逸材」棚橋弘至が綴る、大胸筋のように厚く、起立筋の溝のように深い筋肉コラム。第20回のテーマは「プロレス界で他の選手と差をつけるために、棚橋選手が鍛えたい部位」について。
なぜレスラーは胸が発達しやすいのか?
どこの筋肉を一番発達させたいか? これは、人それぞれあると思います。腕が強いと、胸や背中が発達しにくかったり、同じく肩が強いと胸が弱かったり。こうして、ひとりひとりトレーニングをしても発達速度や形に違いが出てくるのもボディメイクの面白いところです。
それは競技によっても特徴が現れますね。サッカー選手は足の筋肉が発達している。マラソン選手はしなやかなカラダが求められるし、短距離選手は瞬発力の塊のような体つきの選手が多いです。
では、プロレスラーはどうでしょうか? まず言えるのは、胸。大胸筋が大きい選手が多いように思います。Tシャツやスーツを着ていても、その厚みのあるシルエットはレスラーならではと言えるかもしれません。
僕は細身のスーツをアパレルのショップ店員さんのように着こなしたい願望があるので「オレだけは違う!」と思っている節があります。ええ、無理ゲーです。
では、なぜレスラーは胸が発達しやすいのか? これは、単純に胸トレの頻度が多いということですね。入門してデビューするまでも、かなりキツい腕立てをする期間があります。
それとデビューして巡業に出ても、皆で揃って腕立てをやるときもあります。ええ。発達しやすい、というよりは、否が応でも発達せざるを得ない練習メニューということですね。
他の選手に差を付けるにはどこを鍛える?
競輪選手の脚がすごいのも、「やらなければ、勝てない」という、競技だからだということです。こうして考えると、競技上発達しやすい部位と、あまりやっていない部位があると言えます。
ということは、他の選手と差をつけるためには「プロレスという競技では、発達しにくいけれども、ここが大きかったらカッコいい!」という部位に気付けるかどうかがポイントになります。
そして、それに僕はもう気付いているというね…。それは、すばり肩! 今、競技人口が急速に増えている「フィジーク」。このフィジーカーの皆さんの特徴として、逆三角形の上半身があります。
ボディビルよりもさらに、その傾向が強いですし、逆三角形を、さらによく見せるためには、外に張り出した大きな肩が必要となるわけです。というわけで、今回は「肩」をテーマに書いていきます。
メロン肩で、プロレス界の隙間産業を狙う!?
一度、フィジークの選手の肩を見ていただきたいのですが、本当にデカいです。尊敬してしまいます。というのも、肩トレの難しさをずっと感じているからです。
それは、一生懸命にやってはいるのですが、他の部位と比べて発達速度が遅いと言いますか…。だからこそ、肩がしっかり発達している選手を見ると、無条件でリスペクトが生まれます。
「すげーしっかり、ネチネチと肩トレやったんやろーなー。すげーなー」と思ってしまうのです。肩は、筋肉としては小さい? 部類に分けられるのですが「肩前・肩横・肩後ろ」と細かく分けてトレーニングをする必要がありますし、プレス系などで、全体的なデカさや迫力を付ける事も大事。
しかしながら、肩は怪我をしやすい部位でもあるので、丁寧に行う必要もあると。プロレスラーで、そこまでしっかり肩が発達している選手は、石森、SHO…、ヘビー級では、パッと思い浮かびませんね。
となると、そこが…隙間! 隙間産業のパイオニアとしては、まずそこに新店舗を構えたい。「棚橋の大きい肩!安いよー!いや、高いよー!」と、これは、商売繁盛の匂いがするよね♪
見えましたね。未来が! というわけで、これから肩トレに力を入れていきます。近い将来、メロン肩作ります!! ただ、肩が発達しすぎると、反比例して可動域が狭くなります。
可動域が狭くなると、関節を決められやすくなったり、ケガの原因にもなるので、そこは気をつけないといけませんね。まぁ、闘えるカラダを作り上げる事が大事だということですね。
しっかり目標を持った上で、結果的にメロン肩が出来上がってしまった! というのが、理想ということです。
はい。え? 何? その前に、お腹の肉なんとかしろって? う、確かに…。肩大きくなってもウエストが太かったら、逆三角形が出来上がらない(泣)。もはやそれは…大きな長方形の棚橋が完成するということですね(笑)
棚橋弘至
たなはし・ひろし/1976年生まれ。新日本プロレス所属。立命館大学法学部卒業後、1999年デビュー。低迷期にあった同団体をV字回復に導き、昨今のプロレスブームをリング内外の活動で支える。