知ってると安心。はじめての「椎間板ヘルニア」
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第31回は、背骨への不均一な負荷が原因で起こる「椎間板ヘルニア」について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.838・2022年7月21日発売
椎間板ヘルニアの原因は?
腰の痛みにかかわる疾患として、よく耳にする「椎間板ヘルニア」。前回のテーマ“ぎっくり腰”同様に激痛を伴うことが多いが、こちらはX線検査の所見により、医学的に診断される正式な病名となる。
背骨は椎骨という個々の骨からなり、それぞれ椎間板で連結されている。椎間板は本来、弾力性のある組織だが、上下の椎骨から均一に負荷がかからずに中心部の“髄核”という組織が外に飛び出すと、隣接した神経を圧迫。その結果として、鋭い痛みを生じるというわけだ。
椎間板ヘルニアを発症しやすいのは、背骨の腰椎下部にあたる4番と5番、および骨盤中央の仙骨との間。普段から姿勢が傾いていると、この周辺を無意識のうちに偏ったまま使いがちだ。
さらに柔軟性に問題があると、こうした姿勢と動きの“クセ”がより顕著となる。男性の発症率が女性の約2倍というデータは、このことからも納得できるだろう。
椎間板ヘルニアの治療法は?
さて、椎間板ヘルニアの治療では症状が深刻な場合は手術となることもあるが、初期では保存療法が基本となる。まずは医療機関の指示に従い、リハビリによる症状の改善、緩和を目指すことが第一歩だ。
そのうえで、背骨を支える骨盤から腰椎のゆがみやねじれを整えれば、椎間板への負担も軽減する。
タイプを知って不良姿勢を改善しよう
原因となる不良姿勢の代表的なものが、「反り腰」および「平背へいはい(別名・フラットバック)」。簡単なチェック法としては、壁から5cmほど離れて立ち、背中と臀部をぴったりくっつけて、壁との間に手のひら1枚分以上が入れば前者、入らなければ後者となる。
不良姿勢の改善法としては、骨盤まわりで偏って使われている筋肉へのアプローチが有効だ。具体的には、硬く緊張した筋肉(=短縮筋)をほぐしてリリースし、これと拮抗する動きで伸び切った筋肉(=弱化筋)を鍛え直すことが必要となる。
ここで図を見てみよう。
原因となる不良姿勢
骨盤が強く前傾した「反り腰」では青い線=短縮筋となり、脊柱起立筋下部や、その対角にある腸腰筋、大腿直筋などの股関節屈筋群がこれにあたる。一方で緑の線=弱化筋は、前側の腹筋群と、対角にある臀筋群やハムストリングスが該当する。
逆に骨盤が後傾した「平背」では、短縮筋・弱化筋が、反り腰とは対照的な位置関係にあることが分かるだろう。
短縮筋のリリースには、筋膜フォームローラーを使うのが手っ取り早い。硬く凝った部分にうつ伏せや仰向けでローラーを当て、コロコロ転がして気持ちよくほぐそう。
一方の弱化筋を鍛えるには、前回のぎっくり腰と同様に《ストレッチポール ®》を用いたエクササイズがおすすめだ。
再発防止エクササイズ
ポイントは、骨盤まわりの筋肉を使いながら、その動きでバランスを崩さないように腹圧をしっかりかけて行うこと。椎間板に最も負担がかからないのは、背骨と骨盤が自然なカーブでニュートラルな状態に保たれているときである。そのためにも、姿勢を支える腹圧を強化できれば一石二鳥、というわけだ。
復習クイズ
答え:ハムストリングス