ぎっくり腰の対処法「3日後からは動いたほうがいい」
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第30回は急性の腰痛、いわゆる「ぎっくり腰」について。
取材・文/オカモトノブコ 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.837・2022年7月7日発売
背骨への力学的な負担がリスク要因
重い荷物を持ち上げた瞬間、グキッと激痛が…。その強烈な痛みから、欧米では「魔女の一撃」とも呼ばれるぎっくり腰。実はこれ、正式な病名や診断名ではなく、急性の腰痛を指す通称である。
腰に急激な力が加わって筋肉の炎症が起きたり、腱や靱帯が損傷したり、また背骨の椎間板が神経を圧迫したりなど、痛みの原因となる炎症がどこに生じているかは、さまざまに異なるのだ。
ぎっくり腰を引き起こす要因としては、前にかがむ、後ろを振り返るといった動作が多いが、朝起きた直後など、ふとした瞬間に起きるケースもあって一様ではない。ただし共通するのは、体幹を支える腹圧の力が抜けて、背骨に力学的な負担がかかった状態であること。
背骨に屈曲(=前にかがむ動き)と回旋(=横にねじる動き)などの動作が組み合わさり、背骨を構造的に守れない状態が瞬間的に起きると、ぎっくり腰のリスクが生じやすい。
そのため、例えば荷物を運ぶときは「背中をまっすぐ」にして持ち上げ、その背中をキープしたまま一歩踏み出して「股関節からねじる」、といった注意が必要となる。
さて、ぎっくり腰の予後は“絶対安静”と考えられがちだが、それもひと昔前の話。最近では、安静にしていいのは炎症が落ち着く48~72時間後までといわれる。医療機関への受診は行ったうえで、その後はむしろ、少しずつでも動いた方がいい。
ぎっくり腰を起こしやすい人、腰痛持ちの人は、股関節や、肺を取り囲む肋骨まわりの胸郭が硬くなっているケースがほとんど。そこで回復期は、これらの周辺で固まった部分の可動域を少しずつ取り戻すエクササイズを段階的に取り入れていこう。
回復初期は呼吸筋の動きを確認
回復初期の基本となるのが、体幹部を支える呼吸筋を動かすエクササイズ。膝を曲げて仰向けになることで、背骨と骨盤に負担のかからない、ニュートラルなポジションが維持できる。
ここでは、手を当てた胸と腹に息がしっかり入ってふくらみ、吐く際は縮まることを確認したい。うまくできないときは、胸郭の下部にある横隔膜が弱っている可能性大。
この場合、同じ神経支配にある首・肩が強く緊張していることが多いので、首のストレッチをプラスしよう。筋膜フォームローラーなどで周辺をほぐすのもいい。これによって横隔膜へ神経が行きわたり、呼吸筋の動きもスムーズになる。
動けるようになったらストレッチポールを活用
ある程度まで動けるようになった次の段階では、円柱形のツールを背中に当てる《ストレッチポール ®》を用いたエクササイズがおすすめだ。とはいえ、縦に置いたポールに寝転び、脱力して呼吸するだけでいい。
これによって過緊張の状態にあるアウターマッスルがゆるみ、体幹を支えるインナーマッスルが働きやすくなる。ストレッチポールでは「ベーシックセブン」という7種の基本エクササイズも公開されているため、再発予防に行うのもいいだろう。
復習クイズ
答え:横隔膜