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タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
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腸内環境が良くなれば太りにくいカラダになる! その秘密が腸活におけるホットワードの「タンサ(短鎖)脂肪酸」。自然に太りにくい体質になる仕組みとは?
馬場悠平さん
江崎グリコ・商品技術開発研究所 乳業・洋生菓子グループ。菌類を使用した基礎研究をもとに、現在はタンサ(短鎖)脂肪酸と抗肥満についての研究活動とヨーグルトが健康に及ぼす作用の研究に取り組み、商品開発にも従事。
脂質や糖質の多い食事に、座っている時間が長い仕事形態など、現代のライフスタイルから肥満になる人が増え続けている。肥満とは体重が重いだけではなく体脂肪が過剰に蓄積した状態を指し、男女とも体格指数BMI(※1)で30以上が基準。
2016年時点で世界の成人6億7100万人(※2)が肥満状態にあり、1975年から約3倍に増えていることになる。世界保健機関(WHO)は有効な対策をとらずにいると2025年には世界の成人の5人に1人が肥満になり、それが原因による疾病で健康に過ごせなくなると推定。
日本もBMIが25以上の過体重を含め、成人男性の30%以上、40~50歳代にいたっては約40%が肥満状態にあり、女性も50歳代以降肥満が多い(※3)。肥満自体は病気でないものの、糖尿病をはじめ高血圧、脂質異常症など多くの生活習慣病を引き起こす。
しかし、食習慣の改善や手軽な運動で体重を少し減らすだけでも血圧や血糖、中性脂肪の数値は改善し生活習慣病のリスクは低減。まずは「太らない」ことが健康の第一歩だ。
太らないためには食べたいものをガマンしたり、ワークアウトをノルマにしがちだが、実はそんなに頑張らなくても大丈夫。私たちのカラダは本来太りにくくなるメカニズムをちゃんと備えているので、それが自然に機能するようにしてあげればいいのだ。
最近の研究で腸に良いとされる食事や生活習慣を取り入れ、腸の状態を良くする「腸活」で太りにくくなることがわかってきている。腸内には100兆個以上もの細菌が棲んでいて、それぞれが得意な働きをする。
腸内細菌の種類が多いほど消化できる物質の種類も増えて消化吸収能力が高まり、食べ物から得たエネルギーを効率的に使えるようになる。タンパク質の合成にも当然関わるので、同じように筋トレをしても筋肉のつき方にも差が出る可能性があると考えられている。
このように健康に大きなインパクトを与える腸の活動で、鍵となるのが「タンサ(短鎖)脂肪酸」。大腸内のビフィズス菌をはじめとする腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖をエサにして作り出す代謝物のことで、これが腸内で多く作られることで太りにくくなるのだ。
タンサ(短鎖)脂肪酸には代表的なものとして「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」の3つがあり、これらが血液に取り込まれ、全身に吸収されることで健康効果を与える。
食品成分の健康効果を研究している江崎グリコ・商品技術開発研究所の馬場悠平さんによると、タンサ(短鎖)脂肪酸、特に酢酸の働きにより太りにくい体質になるという。
「タンサ(短鎖)脂肪酸とは複数の酸の総称。なかでもビフィズス菌が産生する酢酸は、脂肪に栄養が取り込まれ、蓄積するのを防ぐことで体脂肪を減らします。さらに交感神経を優位にし、心拍数を増やしたり体温を上げエネルギーを消費しやすくしてくれるので、体脂肪がつきにくくなります」(馬場さん)
タンサ(短鎖)脂肪酸は腸から吸収され、糖質や脂質の代謝を活性化し、筋肉のエネルギーにもなることで持久力が高まるとされている。健康なカラダに必要なこの機能は、腸内環境を整えると、激しい運動や食事制限をせずともおなかの中で働いてくれるのだ。この素晴らしいシステムを使わない手はない。
腸の働きは自律神経によって調節される。軽度の有酸素運動により自律神経のバランスが整い、腸内環境が良くなる。ウォーキングはタンサ(短鎖)脂肪酸の下地作りにうってつけだ。
胃酸に対する耐性が強く、生きて腸まで届くグリコ独⾃のビフィズス菌(Bifidobacterium animalis ssp. lactis GCL2505株)と⾷物繊維イヌリンを含むヨーグルトは、乳酸菌だけが使われているヨーグルトに比べ、48時間培養後のタンサ(短鎖)脂肪酸量が有意に多い結果が認められている。
編集・文/本田賢一朗 撮影/小川朋央、北尾渉(馬場さんプロフィール) スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 イラストレーション/内山弘隆
初出『Tarzan』No.840・2022年8月25日発売