通勤・仕事中に「疲れを溜めない」カラダの使い方
満員電車に階段の上り下り、重い荷物、長時間のデスクワークと、地味に溜まっていくビジネスシーンの疲労感。シーン別に疲れを溜めないためにできるちょっとした工夫を紹介していく。
取材・文/黒田創 イラストレーション/あべさん 監修/岡田慎一郎(理学療法士、介護福祉士)
初出『Tarzan』No.831・2022年4月7日発売
岡田慎一郎さん
教えてくれた人
おかだ・しんいちろう 1972年生まれ。理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。古武術の身体運用を元にした「古武術介護」を提唱し、講演や執筆活動などを行う。
目次
仕事以外で疲れを溜めないために
満員電車に階段の上り下り、重い荷物、長時間のデスクワークと、地味に溜まっていくビジネスシーンの疲労感。さらに仕事上のストレスも重なってしまう…。でも、あきらめる必要はない。カラダの使い方ひとつで、そのいくつかは簡単に解消できるのだ。
ヒントになるのは、「古武術」(詳しくはこちらの記事:古武術がヒント! 疲れないカラダの使い方)。古武術には日本人のカラダに合った、古くから伝わる合理的かつ楽なカラダの使い方のエッセンスが詰まっている。
重い鞄持ちは基本の動きの肩甲骨と背中、腕の連動の応用だし、長時間の座り姿勢は股関節から曲げる前傾姿勢ができていればすんなりできるはず。
他の項目も、ちょっとしたポイントを押さえれば全身が連動し、楽で理想的な動きになる。
シーン① 吊り革につかまるとき
中指と薬指の根元を引っかけて持ってみる
吊り革は5本指よりも中指と薬指の根元をかけて持つと疲れにくい。中指と薬指は腕の中心に位置し、カラダの力や動作が伝わりやすいので、無駄な力を使わない。また足元は小指を意識して立つと、かかる負荷が分散されやすい。
シーン② タクシーに乗るとき
頭からではなく尻から、回転動作で乗り込もう
タクシーには頭から突っ込んで乗るのではなく、カラダを回転させつつ尻から座ろう。自然に上体が前傾し、股関節も曲がるため、脚力任せじゃない無駄のない動きになる。ズボンやスカートの尻のシワを伸ばすイメージで行う。
シーン③ 階段を上るとき
同じ側の手足を出して上るとすごく楽になる
階段は手足を違う側に出すのが普通。だがそれだと腰がねじれる分全身が連動しにくく疲れやすい。そこで前に出す手の小指を自分の方に巻き込みながら、同じ側の膝を上げて上ってみよう。脚力頼みにならず楽にカラダが使える。
シーン④ 街中でダッシュするとき
爪先で蹴るのではなく倒れる力を利用する
爪先で地面を蹴って走るとすぐに脚が疲れる。カラダを前に倒しながら同じ側の腕と脚を同時に出して走ってみよう。このとき手は軽く握り、地面をパンチするイメージ。倒れる力が走る力に変換されやすくなるのだ。
シーン⑤ 鞄を持つとき
腕だけで持つのでなく、背中の筋肉を使おう
鞄を長時間持つと手首は疲労困憊。鞄を持つ手を180度返し、小指を前に向けてみよう。肘が外に向いて肩甲骨が開き、背中と腕が連動して背筋を使えるようになる。疲れたら元の持ち方に戻す。持ち方をこまめに変えよう。
シーン⑥ デスクワークで座るとき
椅子の後ろ脚を浮かせ、腰の入った座り方に
長時間座っていると姿勢が崩れ、腰や背中に負担がかかってしまう。そんなときは椅子の後ろ脚を上げてみる。バランスをとるべく自然とカラダの力みが取れ腰椎と骨盤がまっすぐになる。いわゆる腰の入った姿勢にリセットされる。