尿漏れ、頻尿、便秘…。人に言いにくい悩みに「骨盤底筋トレーニング」

尿漏れ、頻尿、便秘、下腹ぽっこり…。大きな声では言いにくい不具合は、実は骨盤内で働く筋肉・骨盤底筋が弱っているからかも? しかし心配ご無用。トレーニングで鍛えれば、その悩みはスッキリ解消するはずだ。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/沼田光太郞

初出『Tarzan』No.826・2022年1月27日発売

骨盤底筋

骨盤底筋

武部紘一郎先生

教えてくれた人

クライアントの悩みを改善に導くパーソナルトレーニングジム〈リテラミリタ〉代表。骨盤底筋コアトレーニングも指導。literamilita.com

その悩み、骨盤底筋の機能低下が原因かも

ここに人には言えない悩みを抱える男女がふたり。そこそこ運動しているのにお腹がちっとも凹まないぽっこりくんに、便秘気味なうえ、ときどき尿漏れするというちびりちゃん。

骨盤底筋

ぽっこりくん

相談した人

40代のウェブデザイナー。健康のため週1回のランニングと週2回の自宅筋トレに励んでいるが、下っ腹がいっこうに凹まない。

骨盤底筋

ちびりちゃん

相談した人

30代のアパレル店員。もともとの便秘体質は半分諦めているが、接客中に思わずちょぴ漏れしてしまうことが目下の悩み。

どうすりゃいいの?と途方に暮れるふたりの前に現れたのは、パーソナルトレーナーの武部紘一郎さん。ふたりの悩みに耳を傾けた武部さんはズバリひと言。

「その原因は、もしかすると骨盤底筋の機能が落ちているせいかもしれません。トレーニング次第で悩みは解決できますよ」

ぽっこりお腹もちょぴ漏れも、原因は同じ? いやそもそも骨盤底筋って一体なに?? あっさり原因を見破られ、びっくり仰天のぽっこりくんとちびりちゃんに希望の光が見えてきた?

骨盤底筋ってどこにあるんですか?

→座ったときに座面にくっつく部分にあります

骨盤底筋

ちびりちゃん
先生! そもそも骨盤底筋の場所が分かりません。
武部先生
椅子に座ってみてください。後ろにある尾骨と前にある恥骨、お尻の両側にある坐骨。その4つの骨に囲まれている部分が骨盤底筋です。
骨盤底筋 骨盤底筋とは?/文字通り、骨盤の底を覆っている薄い筋肉の層。正確には骨盤底筋群という。男性は肛門、尿道の2つ、女性はそれに加えて膣口の3つの穴がある。

ぽっこりくん
座面にぺったりくっつくこの部分のことかなあ? いつも半分仰向け姿勢で椅子に座っているから意識したことなかった。
武部先生
イメージとしては骨盤の底で臓器を支えるハンモックのような筋肉。ナプキンを広げたくらいのサイズで女性の方が面積が大きいんです。
ちびりちゃん
妊娠や出産をするから女性の方が骨盤が幅広いって聞いたことがあります。だから骨盤底筋も大きいんですね。
ぽっこりくん
じゃあ男より女の人の方が骨盤底筋が丈夫ってこと?
武部先生
その逆で、女性は男性より骨盤底筋に開いている穴がひとつ多く、出産もあることからダメージを受けやすいといえます。
ぽっこりくん・ちびりちゃん
そんな男女差があったとは…。

どんな役割があるんですか?

→尿道口や肛門を引き締めたり、腹圧を保ちます

骨盤底筋

ちびりちゃん
骨盤底筋の在り処は分かったけど、どんな役割があるんですか?
武部先生
骨盤の底で腸や子宮などの臓器を支えることがひとつ。その他に排尿や排便を制御する役割もあります。
ぽっこりくん
えっ、それってカツヤク筋とかいう筋肉の役目じゃないんですか?
武部先生
骨盤底筋には尿道括約筋や肛門括約筋という輪っか状の筋肉も含まれています。いろんな筋肉の総称なので、正しくは「骨盤底筋群」というんです。
ぽっこりくん
意外と大事な役割があるんですね〜。
武部先生
他にもまだありますよ。骨盤底筋はインナーユニットの底に当たる部分で、腹圧を高める役割があるんです。
ちびりちゃん
インナーユニット? 新開発の下着か何かですか?
武部先生
体幹にあるインナーマッスル、深層の筋肉のことです。上が横隔膜、前が腹横筋、後ろが多裂筋、そして下が骨盤底筋。この4つで腹圧を維持しています。インナーユニットで腹圧をかけているから、内臓の位置や正しい姿勢が保てるんです。
ぽっこりくん・ちびりちゃん
へえ〜、お腹の中にそんな仕組みがあったとは…。

弱るとどんなことが起こるんですか?

→排泄障害や内臓下垂、ぽっこりお腹の原因になります

骨盤底筋

ぽっこりくん
あっ、じゃあ骨盤底筋が弱くなると、今聞いた役割が果たせなくなるってことですか!?
武部先生
その通りです。尿道括約筋が緩むと締めたいのに締められないから尿漏れが起こります。
ちびりちゃん
ああ〜、私のちょぴ漏れはまさにそれです〜。
ぽっこりくん
僕もたまに用を足した後、パンツに染みが。それが原因か…。
武部先生
臓器の下垂も起こります。腸が下がることで機能が衰えて便秘の症状が出ることも。
ちびりちゃん
便秘の原因も骨盤底筋のせいだなんて〜。
武部先生
腸の位置が数ミリ上がるだけで便秘が改善することも。
ぽっこりくん
先生、僕のぽっこりお腹も骨盤底筋が弱いせいで?
武部先生
インナーユニットの4方向から圧をかけて初めて体幹は強くなります。他の部分を鍛えても骨盤底筋はほったらかしでは腹圧が抜けて、お腹が出ます。
ぽっこりくん・ちびりちゃん
うわ〜! 骨盤底筋、鍛えなきゃ!!

骨盤底筋が弱っているかどうか、知る方法はありますか?

→セルフチェックしてみましょう

骨盤底筋

ちびりちゃん
でも本当に骨盤底筋が弱っているかどうか、判断する方法はあるんですか?
武部先生
セルフチェックをしてみましょう。下の項目に5つ以上当てはまったら要注意と考えてください。
セルフチェック項目
  • 便秘がちだ
  • 猫背で姿勢が悪い
  • 運動習慣がない
  • 尿漏れの経験がある
  • トイレに行く回数が多い
  • どちらかというと太っている
  • 太ってはいないが下腹部がぽっこり出ている
  • 咳が出やすい
  • 呼吸が浅いと思う
当てはまった項目は?

0個…素晴らしいですね! 今のところ骨盤底筋が健全な状態のようです。ただし、他の筋肉同様、骨盤底筋は加齢とともに機能が低下していきます。予防のためにも運動と健康的な生活を心がけましょう。

1~4個…黄色信号です! まだ大丈夫ですが、一度でも尿漏れの経験があるという人はそろそろ予防対策をしましょう。日常生活でも骨盤底筋を意識し、次ページのトレーニングをひとつでもいいので取り入れましょう。

5個以上…骨盤底筋が弱っている可能性が高いです! 毎日の骨盤底筋トレーニングを習慣にしましょう。今からでも鍛えれば強くなります。チェック項目をひとつでも減らせるよう、すぐ行動に移しましょう!

ぽっこりくん
僕は6個でした…間違いなく弱ってます。
ちびりちゃん
がーん、私は8個…もうダメ。
武部先生
大丈夫! エクササイズで改善を目指しましょう!

骨盤底筋トレーニングを始めてみよう

肘を曲げると勝手に動く上腕の筋肉とは違い、骨盤底筋は関節を伴う筋肉ではない。また、内臓の筋肉のように自動的に動く不随意筋でもない。ゆえに鍛えようと思ったら自分で意識して動かすのみ。

骨盤底筋は横隔膜と一緒に動く。深く息を吸うときに弛み、深く息を吐くときに収縮する。よって、呼吸をしながらゆっくり行うことがポイントだ。紹介するトレーニングでは、すべて4秒で息を吸いながら弛緩させ、8秒で吐きながら収縮させる。

基本は2種目1セット。骨盤底筋のみを収縮弛緩させる直接のアプローチと、体幹の筋肉を動員させて収縮弛緩させる間接アプローチのコンビで鍛える。

5回からスタートして10回くらいしっかり骨盤底筋を動かせたらクリア。次のレベルへと進もう。

では、ちびり・ぽっこりとご一緒にレッツ・スタート!

トレーニングのやり方

骨盤底筋

共通メソッドは4カウントで鼻から息を吸い、8カウントで口から息を吐きつつ骨盤底筋を収縮させること。各種目5~10回ずつ行おう。

骨盤底筋トレ|レベル1

ベーシック①

骨盤底筋

仰向けに寝て両膝を立ててリラックスします。8秒で息を吐きながら骨盤底筋を意識します。肛門を引き締めておならを我慢するイメージです。4秒で息を吸ってリラックスします。

コアトレA(ヒップリフト)

骨盤底筋

仰向けに寝て両膝にクッションなどを挟んで立て、両足をできるだけお尻に近づけます。4秒で息を吸い、8秒で息を吐きながらお尻を床から引き上げ、骨盤底筋も引き上げます。

骨盤底筋トレ|レベル2

ベーシック②

骨盤底筋

仰向け姿勢で両膝を両手で抱え込み、股間を天井に向けます。4カウントで息を吸い、8カウントで骨盤底筋を引き上げます。重力が味方になるので骨盤底筋を意識しやすいです。

コアトレB(ダイアゴナル)

骨盤底筋

四つん這いの姿勢から片手と対角線上の足を床から上げます。最初は息を吸って手と足を床につけたポジション。息を吐きながら手と足を床から上げましょう。逆も同様に。

骨盤底筋トレ|レベル3

ベーシック③

骨盤底筋

肩幅より大きく両足を開いて立ちます。爪先は斜め外側に向けます。背すじをまっすぐ伸ばして腰を深く落とします。そのまま4カウントで息を吸い、8カウントで吐きます。

コアトレC(Z のポーズ)

骨盤底筋

膝立ちになって両足の親指同士をくっつけます。腕は肩の高さでまっすぐ前に伸ばし、まず息を吸います。息を吐きながら上体を後傾させ、吸いながら元の姿勢に。

おまけ

骨盤底筋

左右の踵をつけ爪先を斜め45度開いて両手を上に伸ばします。4カウントで息を吸い、8カウントで息を吐きながら背伸びをします。背伸びすると同時に骨盤底筋を引き上げます。