ピィ子さん
栄養指導歴18年目。ビジネスパーソンに特定保健指導をするほか、アスリートも指導。今回の登壇者の中では最もベテランで、酸いも甘いも嚙み分けたアネゴ。持ち前の明朗快活で爽やかな人柄で、数々のモンスタークライアントを手懐ける。
エフ美さん
栄養指導歴4年目。某クリニック勤務。過去にプロ・アマチュア不問、ジュニアからシニアまで幅広いアスリートの食事指導、特定保健指導をしていた時期も。真面目でクライアント思いだからこそ、一つひとつの語りに熱がこもる。
シー香さん
栄養指導歴10年目。オンラインで食事指導を行う。自身もイチトレーニーとしてボディコンテストに出場したことがあり、担当するクライアントもカラダづくりや減量に励む人が大半。穏やかな性格だが、さらっと呟く一言のキレ味が鋭い。
※登壇者3名は実在する人物ですが、告白を忠実に伝えるべく匿名表記でお届けします。
痩せたい人、早急に痩せるべき人に食事指導をする管理栄養士が手こずる“モンスタークライアント”たち。彼らと遭遇&格闘した経験を持つ3人が、痩せる奥義を語らう。
健康について詳しい“頭でっかち”は厄介!?
ピィ子さん
モンスター、いますねえ。全体の2割ほどかな。コロナ禍以前は全体の5割くらいいたけど、最近は指導を素直に聞いてくれる人がかなり増えました。肥満や高血圧などの生活習慣病患者や予備軍を相手にする特定保健指導がメインの仕事だからかもしれない。
エフ美さん
私の肌感ではモンスターは全体の5%程度。今はアスリートの指導が多く、食事改善の目的がパフォーマンスアップと明確だから、モンスターは少数派。
シー香さん
私も同じくらいかな。「カラダを変えたい!」と切実な思いで身銭を切って面談を申し込んでくれる人が多いので。
ピィ子さん
「自分にはある程度ダイエットの知識がある」と思い込んでる人。専門家じゃないのに(ボソッ)。
エフ美さん
いますね〜。勤め先のクリニックで時に栄養指導をしますが、意見を請いたいというふうに見せかけて、自分の実践するヘルシーな食事法を認めてもらいたがる(笑)。「コーラ飲みます、でも0キロカロリーのやつですよ(褒めて!!)」みたいな。
シー香さん
そういう方、男性のクライアントに多くないですか?「以前この食事法で成功したし、やっぱり正しいですよね?」と聞いてきたり。
ピィ子さん
持論とメディアの情報は信じるのに我々の提案にはなぜか懐疑的。
エフ美さん
“分かっちゃいるけど変えられない”人が固執しがちな食事法、最たるものが糖質制限絡みだと思いません?
エフ美さん
昔、糖質制限をして体重を落としたという成功体験から“糖質恐怖症”になり、糖質を適正な摂取量までなかなか増やせないケースがとにかく多い!
糖質を抜けば確かに体重はカクンと落ちる。それで“痩せたい時はとりあえず糖質を抜く”という思考になる。
全員“糖質恐怖症”に遭遇済み。「一口でも米を食べたらおいしくてやめられなくなるからと一切食べない方も」(シー香さん)、「0か100か、あまりに極端です!」(エフ美さん)。
糖質制限は極端になるのが問題
シー香さん
結局リバウンドしてるわけで「その糖質制限、本当に“成功体験”と言えますか」と言いたくなるのを堪えて…。
ピィ子さん
糖質制限はまた極端な方向に走る人が多いのがモンダイなのよ。
シー香さん
夕食の主食を抜いたり糖質が少量でも含まれるおかずを敬遠したり。
エフ美さん
極端に糖質の量を減らしたら代謝も下がるのに…。一度減らした糖質をまた増やすのは、管理栄養士の力量が試されるところですね。だいたいは長期戦になるけど。
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改めて知っておきたい「糖質とカラダ」4つの基礎知識
シー香さん
糖質の必要性を話すと「ハイハイ」と相槌を打ってても、後日食事記録を見ると糖質摂取に対する躊躇が見られたり。
だからさりげなく「やっぱり抵抗あります?」と聞くと「やっぱり夜はご飯抜いた方がいいんじゃないかなと思って」と独自の理論を展開される(笑)。
あと、長年避けてきたご飯を久々に食べると反動で食べ過ぎそうだから一切食べないほうが精神的にいいと話す人もいました。
食事で摂れてるのにプロテインを飲みたがる
シー香さん
あと、プロテインを崇拝する“信者”もここ数年で本当に増えたと思う。
巷に溢れるプロテイン信者。「食事で必要量を摂れているので不要ですよと伝えても“でも今までずっと飲んできたので”と。だから痩せないんですよッ!!」(シー香さん)。
シー香さん
タンパク質摂ればとりあえずOKみたいなノリで、そんなに運動してないのに毎日プロテインを3杯飲んだり。その分、肝心な糖質を減らしてて…「食事でタンパク質摂れているので、そんなにプロテイン飲む必要ないですよ」と言っても、なかなかやめられない。
そういう方には必要な摂取量を体重などから算出し、普段の食事から大体の摂取量も割り出し、摂れていることを数値で示して、初めて摂り過ぎを自覚される方も。ともあれ、糖質にせよタンパク質にせよ、本人の思い込みを解くのって時間がかかるのよねえ。
お手上げ寸前。特定保健指導現場の“闇”
ピィ子さん
特定保健指導は40歳以上の方を対象に行うメタボ健診に引っかかった方が対象。つまり会社の指示でいらっしゃる方が大多数なんですよ。
そこで案外いるのが、朝食&昼食を抜いて夕食に大量飲酒(=1日1食)するタイプ。腹囲は大きく肝機能数値も悪いのですが…当人は「自覚症状? ないですよ」「オレがいいんだからいいでしょ?」と。
エフ美さん
特定保健指導は序盤からケンカ腰で来る人がホントに多い(苦笑)。
クライアントは人生経験豊富なオジサマが大半で、提言しても「貴女に何が分かるの」とマウントを取られる。
今まで何千人と指導をしてきたけど、社長はこちらの提言をやんわり受け止めてくれる方がわりと多い。でも中間管理職の方との対話は結構
- 「どんな食べ物がお好きですか?」→「別に」
- 「今日の朝食は何を?」→「忘れた」
- 「普段はどんなものを?」→「そんなの、日によって違うに決まっているだろ!!」
みたいな不毛なことに。まあ、これはあくまで私の偏見かもしれないけど。
エフ美さん
でも分かるかも。私のクライアントもベテランや期待株とされる選手ほど寛容というか、マインドから違う気がします。目標というか、視座の高い人は食事改善にも冷静?
シー香さん
現状を全然変える気がない人はなかなかね。助言に「やってみます」と調子よく応じられても、食事記録を見ると全然変わってない人はそんなに痩せる気ないのかなって。
「この食事記録、本当?」プロの勘が働く瞬間
ピィ子さん
食事記録を見て“これ、虚偽報告では!?”と勘づくことはある?
エフ美さん
クリニックの栄養指導で検査結果と過去の体重推移と当人の行動を参照しても「ど〜考えてもツジツマが合わん!」ってことは稀に…。単純に、食べたものの記録を忘れていたケースもあるとは思うけど。
シー香さん
そういう時、私は本人に直接聞いてみるかも。「“間食なし”とありますけど、この昼食と夕食の合間、お腹空きませんか?」。すると「あっ子供と一緒になんか食べたかも」と結構ポロポロ出てくる…。
エフ美さん
昔クライアントで牛乳を毎日1L飲んでるのが後々発覚した方がいて。“口に入れたもの全て書いてください”と言ったのに。何にせよ残念ですがそれでは痩せませんねと。
食事記録的には優秀なのに全く痩せないクライアント。面談をすると毎日牛乳1Lを飲んでいたことが発覚。「口にしたもの全て書いてと言ったのに(汗)」(エフ美さん)。
ピィ子さん
やる気はあるのに痩せないケースもあるよね? たとえば気合が入りすぎて大風呂敷を広げる人。
初回の食事指導で「これを機に断酒します!!」と自ら言い出し、次の面談で「1日も続きませんでした」と。
「ジムに入会したけど一回も行ってない」「通勤用の自転車を買ったけどまだ乗ってない」、こういう言い訳と同じ。やらなきゃ無意味です。
エフ美さん
できることを一緒に探しましょう! 私たちにイイ格好は必要ナシ。
食事改善のコツは、完璧主義をやめること?
エフ美さん
そもそも皆さん、焦って痩せようとしすぎ。「指導通りやってみましたが体重が変わらずやめちゃいました」と言われ、何日やってみたのか尋ねると「2〜3日」と…。
シー香さん
極端な食事制限により短期間で痩せてもリバウンドしやすい。それは『ターザン』含めいろんな媒体で再三説かれてきたことなのにねぇ。
ピィ子さん
身も蓋もない結論になるけど、結局食事改善が実を結ぶ人は長期的にコツコツ続けられる人だと思う。
エフ美さん
そういう人は意外と完璧主義じゃないの。どんな減量も常に思い通りにいかないことを受け入れてる。
シー香さん
だから限りなく低いハードルを自ら設けて一つずつ越えていける。もしそのハードルを自分で見つけるのが難しければ、そんな時こそ管理栄養士にドーゾ頼ってください!
ピィ子さん
その頼った先が、この3人の誰かになるかもしれないね(笑)。